先日(26.4.13)の京都新聞にこんな記事が載っていました。
市役所近くで94年営業してきた文祥堂書店が5月中にも閉店することになった。創業は1932年(昭和7年)で現社長の藤野隆一(92)さんの父、彌一さんが河原町三条下ルに店を構えた。同店の特徴は市役所をはじめとした近くの事務所や店への配達で市役所の議員団室、市会図書・情報室、記者クラブに本や雑誌を届け鉄道の時刻表は多い時で100冊を納めたという。繁華街に多い美容室には美容雑誌、弁護士事務所には司法関連の本も届けた。自転車のかごに最大30キロ荷を積んで運んだ。配達料は取らず「お客様第一」を貫いた。相棒の息子・祥一(67)さんは配達の傍ら「地域の相談役」として商店街の行事で来賓の橋渡しをしたり地元のトラブルを解決するために市役所の関係者を紹介するなどの労をとることもあった。
大学が多いこともあり人口当たりの書店数は全国でも有数だったが近年は減少に歯止めがかからず府内の店舗数は96店(3月末)で10年前の151店から6割に減少している。背景には人口減や読書離れ、インターネット通販の普及があり店主の高齢化、後継者不足も影響している。電子メディアの普及は市職員個人への配達ゼロになり美容院はタブレットに置き替わりネット通販や電子書籍の普及で来店者数は激減した。
今年3月隆一さんが肺炎で入院し祥一さんが膝を痛めたために区切りをつけることにした。
町の書店の減少に対しては政府も対策を講じています。「書店活性化プラン」として昨年6月経産省、中小企業庁、文科省、文化庁などが提案したものですが総花的で実効性があるとはとても思えない内容です。書店が求めている業界慣行の大型書店優遇策是正はお題目だけで具体策が実施されたという報道は今のところ伝わっていません。
識者やコメンテーターたちがマスコミで町の本屋さん応援を喧伝していますが果たして彼らが本屋さんで本を買っているかといえば非常に疑わしくアマゾンなどを利用しているのが実体ではないでしょうか。
はっきり言って「町の本屋さんを守るんだ」と地域の人たちが連携して本の購入を町の本屋さんに可能な限り限定するくらいの決意で取り組まないと結果は実現できないと思います。店になければ取り寄せを依頼して待つ。ほんの二三日のことです、長くても1週間もすれば店に届きます。それが待てないのです、お店に取りに行くのが面倒だと敬遠するのが今の私たちなのです。この不便を受け入れないと町の本屋さんは守れません。文具もできれば本屋さんで買って上げよう、それくらいの思いやりがあってはじめて町の本屋さんは守れるのです。
戦後わが国は豊かになりました。と私たちは思っていますし平均所得も随分多くなりました。しかし中身を考えてみると「早く、安く、便利」になっただけではないでしょうか。タイパ、コスパ一辺倒、「インスタ映え」に至っては論外です。便利――コンビニエンスの形になったものがスーパー、コンビニ、100円ショップと回転寿司、飲食店チェーンです。その陰で失ったものを考えてみるとその甚大さははかり知れません。町の本屋さんはその一例に過ぎないのです。
日本文化は「早い、安い」の真逆に本質があります。和食がユネスコの無形文化遺産になりましたが本物の和食は最初薄味で徐々に味が重なって主菜で味わいがピークに達するように設計されています。寿司は「飯炊き三年、握り八年(一生)」といいます。「早い、安い」では和食も寿司も成立しないのです。和包丁が外人に大人気ですが「型押し」で和包丁はできません、鋼を焼いて鍛たいて鈍まして一本づつできるのです。
飛躍したことを言いますが、共通テスト(センター試験)で偏差値能力を判定し合否を決定する、この試験制度で大学のすべての学部に適した人材が選抜できるでしょうか。この入試制度に適した学習塾(家庭教師)での学びにドップリつかった今の子どもたちの教育環境でグローバル時代に要求される創造性豊かな子どもが生まれるでしょうか。これも「早く、便利」ではないでしょうか。
最後に。GDP(名目)は価格ベースです。医療費の日米格差は圧倒的にアメリカが高いですからその分アメリカのGDPは多く算出されます。デフレの30年、安さを極大化してきたわが国のGDPは「早く、安く、便利」の報いの側面もあったということを認識すべきです。その裏返しが現在のインブレ増税と税収増ということになります。
「早く、安く、便利」で失ったものを見つめ直すことがわが国をほんとうに豊かにする道だと思います。そこから町の本屋さんを守る方法も見つかるような気がします。
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