2010年9月6日月曜日

独法は誰のもの

 先日某独法(独立行政法人)の西日本支社長就任会見に同席した。これまで天下りの指定席であったのを民間登用した最初の人材だったので大いに期待を持って臨んだが見事に裏切られた。事業仕分けで厳しい評価を受けた独法だから民間感覚で組織の建直しに意欲満々な姿勢が窺えるかと思っていたのだが、微塵もそんな様子はなく、彼にとっての定年退職後の単なる再就職先でしかないことがあからさまに分かる会見であった。
 
 天下り規制に関しては今もう一つ問題がもち上がっている。各府省の幹部職員、特に40~50代の職員の滞留を解消するために政府が6月に決めた「退職管理基本方針」によって実施されようとしている「各府省の幹部職員を独法の役員や民間企業に出向させる人事」がそれだ。行き場を失った幹部を救済する失業対策のような交流人事であり、このままでは天下り規制の形骸化と官民癒着に繋がる危険性が高いと危惧されている。

 天下りの弊害は言い尽くされているから民間登用へのプロセスは理解できるが、登用の仕組みは万全だろうか。そもそもこの問題を『上からの視点』ではなく『下からの視点』で見る必要もあるのではないか。独法などの政府系機関のプロパー(生え抜き社員)の立場にすれば、幾ら頑張ったところでトップなどの幹部職員が天下りや民間など外部から来ることが決定付けられているのでは意欲が湧かないのも当然であろう。しかも仕事内容を熟知しない外部からの幹部が任期中(2~4、5年)にできることはそんなに多くないし継続性にも疑問があるから、組織にとって良いことは殆んどない。それなら思いきって『プロパー重視』に切り替えてはどうだろう。勿論組織としての設立動機の必要性を不断にチェックし目的達成度を厳しく判定する、独法等管理規則を定めて必要性と費用対効果の判定を適格に行う体制を作るべきことはいうまでもない。

 独立行政法人には明確な設立動機があったはずである。その目標を効率的に達成するために最も必要なことはその組織で働く職員の意欲であり高いインセンティブである。だとしたら幹部職員を含めてプロパーの実力が正しく反映される組織であらねばならない。
 『天下り規制』という上からの視点ではなく正統な組織理論に基づいて独法を見直す必要を強く感じる。

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