2010年1月18日月曜日

神が作り給うた物

 ヨーロッパに招待されたサモアの大酋長が島に帰って「ヨーロッパ文明は何であったか」を島民に次ぎのように報告した。「物にはふたつあって、自動車やテレビなどは人間の作ったものだが、もう一つ『神の作り給うた物』というのがあって、それは美しい星空やきれいな砂浜、おいしい魚などだ。そういう物は我々の方がはるかに豊かで、自分たちの文明が物に関して貧しい文明だとは思っていない」(『パパラギ―はじめて文明を見た南海の酋長ツイアビの演説集』より)。

世界第二の経済大国、という我国のブランドがついに中国に破られてしまうという表現がこのところメディアに度々あらわれる。更に少子高齢化によって労働力人口が2005年の6,772万人をピークに2025年には6,296万人にまで減少するからこのまま放っておくと日本は世界の中流国に成り下ってしまう、などという論調も少なくない。一方で先ごろ開かれた環境問題を話し合う「COP15国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)」では世界の国々が自国の豊かさへのエゴを剥き出しに主張しあう醜態を曝していた。
 ツイアビさんが見たら何と言うだろうか。

200810月のリーマンブラザースの破綻に端を発した金融危機に象徴されるように我々は今『人間の作った物』に執着しすぎている。勝ち組負け組などという厭な言葉も片方からの価値判断で多様な人間の存在を切り捨ててしまう偏狭な表現だ。負けてもいいとは云わないが、50年前の我国のレベルにようやく達した中国や印度に対してもう少し鷹揚に対する姿勢が指導者やメディアに望めないものか。そしてやがて彼らも辿るに違いない『成熟期』の国のあり方の新たな方向性を示す革新的な世界観を呈示するようなリーダーが現れないものか。

世界中から出店されていたブランドの退却が続いているという。日本人も少しは賢明になった証だろうが、もう少し深く考えてGDPというもの差しも『一方からの偏った価値判断』の指標に過ぎないことに気づけばもっと社会の在り様が変わってくるに違いない。



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