2022年9月19日月曜日

変だぞNHK

  NHKの不祥事が続いています。ひとつは昨年末に放送した東京五輪に関するドキュメンタリー番組で、反対デモの参加者が金銭で動員されているとの誤った字幕を付けた問題で、BPO(放送倫理・番組向上機構)が「重大な放送倫理違反がある」との意見書を発表しました。もうひとつは8月31日に放送されたNHK・BS1の「国際報道2022」の出入国在留管理庁の特集で、「入管側の主張を一方的かつ無批判に伝えるだけの番組内容だった」とNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」から抗議声明を受けた件です。ふたつとも制作サイドの「思い込み」が十分な裏付けも取材されないで放送されたものです。

 

 五輪関係の番組は、東京五輪の公式記録映画の監督を務める河瀨直美さんに密着したドキュメンタリーで、取材で出会った男性の映像に「五輪反対のデモに参加している」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕を付けました。実際はデモへの参加も金銭の授受も確認していなかったのです。意見書では、事実確認など取材の基本を怠ったことや、編集で男性が別のデモに関して述べた発言を五輪反対デモの発言にすり替えたことを問題点として挙げ、社会運動への関心の薄さから試写でチェックが甘くなったとも指摘しています。

 新型コロナウィルス禍の開催で賛否が分かれていた東京五輪を扱う番組にもかかわらず、取材のずさんさや制作スタッフの意識の低さは驚くばかりですが、その裏に開催を強行した政府への擁護の意識が働いていたのではないかという見方もあります。結果として、五輪を反対した人たちをおとしめたことになり、何らかの意図が働いていたのではないかという不信感も拭えません。

 問題を重く見た総務省は16日行政指導をしました。「視聴者の信頼を著しく損なうもので、誠に遺憾」と指摘し、再発防止策を徹底するように求めています。

 

 8月31日放送のBS1「国際報道2022」は、出入国在留管理庁への取材を中心に送還や医療の課題を紹介するものです。またその中で帰国を拒む外国人たちの滞在が長期化する傾向にあり在留資格を失った外国人数について2021年は5年前と比較して2万人ほど増えており、国の費用負担増につながっていると報じたのです。また批判の多い在留資格のない外国人を送還する際の入管の対応について「人道上の理由から、基本、身体拘束するなどして強制的に退去を強いることはない」と説明しています

 これに対して移住連は「長期化の客観的な根拠が一切示されていない」「入管側の発言をそのまま伝えたのだとしたら、報道機関としてあまりに無責任」として抗議するとともに報道姿勢の見直しと改善を求めました。

 NHKは批判にこたえて9月12日の放送で「22年のデータを使うことが適切だった」と謝罪したのですが、実は22年の人数は年前と比べてほぼ横ばいだったのです

 これも構図は五輪報道と同じで、政府と行政を擁護しようという意図が明らかです。昨年11月の名古屋入管に収容中のスリランカ女性死亡報道以来出入国管理庁と入管制度への激しい批判がつづいているなかで、明らかに忖度が働いているように見えてしまうのです。データの恣意的な利用はあまりにも視聴者を馬鹿にしています。

 

 最後に問題にしたいのは朝ドラ「ちむどんどん」です。放送の早くからネット上では炎上していて、脚本家への批判、抗議は「番組打ち切り」にまで及びました。実際何度見るのを止めようと思ったか知れません。ドラマの展開が読めるのだけでも作者としては落第ですが、それ以上に手垢のついたセリフと性格描写が視聴者を馬鹿にしていると思わせるのです。

 ただここで問題にするのはそうしたドラマづくりに関するものではありません。今年の朝ドラに「沖縄」を取り上げたのは「沖縄本土復帰50周年」を意識してのものであることは誰にでも想像できます。にもかかわらず「ちむどんどん」は素材を沖縄に取っただけで、沖縄問題への真摯な取り組みも沖縄県民と本土の間に横たわる不信を解きほぐそうとする姿勢もまったく見られなかったのです。別に沖縄料理でなくても道産子料理でも薩摩料理でも良かったドラマにしかなっていないです。沖縄県民の皆さんは今、復帰50周年という記念の年を迎えて憤懣と後悔の念におそわれているに違いありません。終わったばかりの知事選で普天間基地の辺野古移転に「ノー」の審判を政府に突き付けましたが、それにもかかわらず日本政府は「沖縄県民の意志」をまったく「無視」して「唯一の解決策」を繰り返すばかりです。それどころか2023年沖縄振興予算概算要求を10年ぶりに3千億円を割り込んだ2022年分より200億円減の2798億円にする「報復」で意趣返しするという非情を示したのです。こうした「不条理」をどうして沖縄県民は受けつづけなければならないのでしょうか。

 「ちむどんどん」は今年朝ドラになった意味はまったくありませんでした。

 

 NHKがBPOから重大な放送倫理違反とされたのは今回で2回目で、単なるチェック手続きの問題だけでなく、組織全体の報道姿勢や指摘された内容の検証にもとづく抜本的な改善を図らなければ、公共放送としての信頼回復を果たすことは難しいのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

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