ディープインパクト(以下ディープ)が逝って今年で4年。現3才馬がディープの最終年度産馬ですが2019年7月20日に急死した当年の種付け頭数はわずかに24頭、現在登録数は12頭に過ぎませんから実質最終年度産馬は今年の4才馬とみるのが妥当でしょう。2022年まで連続11年リーディングサイアー(全馬・賞金順)に輝いた彼の経歴――ヒンドスタンもシンザンもサンデーサイレンスも超える日本競馬史上最高の種牡馬の称号を築いたディープの栄光を汚さないためにも現4才馬には最終年度を飾って欲しいものです。
そんなファンの声を知っているかのように今年の古馬重賞戦線(芝限定)におけるディープの活躍が素晴らしいのです。昨年の有馬記念以降5月7日までの種牡馬別(除マル外)勝馬頭数でディープは断然の成績を残しているのです。24レースで22頭(2勝馬が2頭)の勝馬が出ているなかでディープは9頭の勝馬を出しています。なかに大阪杯のレイパパレ、天皇賞のワールドプレミアがいますから内容的にも文句なしです。次位が3頭出しのロードカナロア、3位が2頭出しでルーラーシップですからいかにディープが凄いか分かります。1頭出しは有馬記念勝ちのイクイノックスを擁するキタサンブラック以下7頭で合計11頭の種牡馬が重賞勝ち馬を出しています。
現在およそ160頭の種牡馬がいるなかの11頭ですからこれらの種牡馬の価値の大きさが分かると思います。そこに11年君臨しつづけるディープの偉大さはどれほど評価しても評価し過ぎることはないでしょう。
(資料)2020年~2022年リーディングサイアー(全馬・賞金順)
2022年1位ディープインパクト、2位ロードカナロア、3位ハーツクライ
2021年 〃 〃 〃
2020年 〃 〃 〃
2022年4位キズナ 、5位ドゥラメンテ、 6位キングカメハメハ
2021年 〃 キングカメハメハ エピイファネイア
2020年 オルフェーブル 〃 ルーラーシップ
(資料)2023年重賞勝ち馬(昨年有馬記念~5月7日現在)
1位ディープインパクト9頭〈マジックキャッスル、ラヴズオンリーユー、コントラチェック、ランブリングアレー、ギベオン、テルツェット、レイパパレ、デゼル、ワールドプレミア〉
2位ロードカナロア3頭〈ケーデンスコール2勝、イベリス、ダノンスマッシュ〉
3位ルーラーシップ2頭〈グロンディオーズ、ディアンドル〉
4位キタサンブラック〈イクイノックス〉、ハーツクライ〈ヒシイグアス2勝〉、オルフェーブル〈ショウリュウイクゾ〉、エピファネイア〈アリストテレス〉、トゥザグローリー〈カラテ〉、ダイワメジャー〈レスシテンシア〉、キズナ〈ディープボンド〉、スクリーンヒーロー〈ウィンマリリン〉
目を3才馬に転じてみるとこれはもうドゥラメンテの天下です。昨年末の2才GⅠ3レ-スから5月7日までの芝限定20重賞(19頭)でドゥラメンテが5頭の勝ち馬を出していて、しかもホープフルS勝ちドゥラエレーデ、阪神JF・桜花賞勝ちリバティアイランド、NHKマイルCシャンペンカラーとGⅠレースを総なめしているのですから凄いの一語です。他のGⅠは朝日杯のルーラーシップ産駒ドルチェモアと皐月賞を勝ったソールオリエンスをキタサンブラックが出しているだけですから圧倒的な勢いです。過去3年のリーディングサイアー(2才馬賞金順)をみてもディープ無きあとはドゥラメンテが一歩抜きんでていてその後をエピファネイア、ルーラーシップが上昇基調で追いかけている形勢になっています。もう1頭キタサンブラックが注目ですがドゥラメンテの今年のここまでの急激な上昇振りはディープの後継はこれで決まりのような印象を受けます。
(資料)2020年~2022年リーディングサイアー(2才馬・賞金順)
2022年1位ドゥラメンテ 2位エピファネイア 3位ルーラーシップ
2021年1位ディープインパクト、 〃 ドゥラメンテ
2020年1位 〃 ドゥラメンテ モーリス
(資料)2023年2才馬重賞勝ち馬(昨年末2才GⅠ3戦~5月7日現在)
1位ドゥラメンテ5頭〈ホープフルS・ドゥラエレーデ、阪神JF・桜花賞リバティアイランド、シングザットソング、シーズンリッチ、NHKマイル・シャンパンカラー〉
2位ルーラーシップ2頭〈朝日・ドゥルチェモア、フリークファクシ〉
2位キタサンブラック2頭〈皐月・ソールオリエンス、スキルヴィング〉
2位ハービンジャー2頭〈ファントムシーフ、エミュー〉
3位ディープインパクト〈ライトクォンタクト〉、ダノンバラード〈キタウィング〉、ハーツクライ〈ハーパー〉、リアクインパクト〈モズメイメイ〉、サトノクラウン〈タスティエーラー〉、ロードカナロア〈バラジオオペラ〉、シルバーステイト〈エエヤン〉、ゴールドシップ〈ゴールデンハインド〉
日本競馬はここ10年ほどのあいだに海外競馬で海外勢と互角以上の戦績を残すほどにレベルアップしてきました。その原動力となった一つに血統の質的向上があったことは論をまちませんが中でディープの貢献は甚大でした。
そのディープの産駒が今年で存在しなくなるのですから日本の競馬が大きく変わることは確実です。勿論ブルードメアサイアー(種牡馬の父馬)として今後も長く影響を与え続けるでしょうが新しい局面を迎えるのは否定しようのない事実です。そしてその後継馬として浮上してくるのがキングカメハメハの産駒ドゥラメンテというのですから「競馬の血」の不思議さを感じずにはいられません。現役時代はすれ違いで一度も勝負をしていないディープとキンカメですがいまだにファンの間でどちらが強いか支持が分かれる両馬の子どもたちが、これから長く競い合うようになるのですから競馬は奥深い競技です。
日本競馬がどう変わっていくのか、興味が尽きません。
(注)農林水産省「馬をめぐる情勢」を一部参考にしました。
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