先日NHK・Eテレで「中満泉さん」のインタビュー番組を見ました。日本女性初の国連事務次長を務める今年61才のチャーミングな方ですが、若いころの写真にみるキュートでたおやかな女性が紛争当事国の現場でむくつけき男性兵士の中に立ち交じってにこやかに調停に携わっているシーンはまるで映画を見ているような現実離れした可憐さを漂わせています。緒方貞子さんに憧れて早稲田を卒業後ジョージタウン大学修士課程を経て国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を皮切りに国連の要職を歴任、現在軍縮担当上級代表にあります。スウェーデン外交官マグヌス・レナートソン氏と結婚、二女の母でもあります。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとハマスのガザ紛争など国連の機能不全が喧伝される中で黙々と任務を遂行している彼女の口から「核兵器禁止条約を発効にこぎつけたのは確かな一歩です」という言葉を聞くと「世界平和」実現のために40年にわたって現場で努力してきた人だけがもつ「不屈の意志」を感じずにはいられません。世界で唯一の被爆国であるという「常套句」を口にしながらアメリカの核の傘の下に惰眠を貪るわが国の政治家に対して彼女がどれほど口惜しさを抱いているかは想像に難くありませんが番組中一度もそんな素振りを見せなかった彼女の凛々しさに尊敬の念を抱かずにいられませんでした。(今年のノーベル平和賞が日本原水爆被害者団体協議会に決まったことは彼女らの黙々とした地道な信念の継続に一つの光明が差したようで喜ばずにはいられません。)
彼女以外にもテレビでよく見る中林美恵子さんも米国ワシントン州立大学修士課程を経て日本人として初めてアメリカの連邦議会・上院予算委員会補佐官(公務員)として採用され約10年にわたって米国家予算編成に携わった経歴の持ち主です。ほかにもタレントのREINA(レイナ)さんは日系アメリカ人のもとに生れブラウン大学卒業後ビル・クリントン事務所にインターンとして勤めたのちCIA(中央情報局)の内定をもらったが辞退したという変わり種です。
ここまで書いてきて妻の姪が外交官をしているのを思い出しました。オーストラリア、スイスなど外地勤務が多かったのですが今年父が無くなって母が独り住まいになったのを機会に帰国して内地勤務になりました。私の甥もJICA(海外協力隊)勤務でコロンビア駐在中に現地美人と結婚して二児をもうけ、彼の娘はGoogle日本支社勤務です。友人の娘さんは自動車部品製造会社勤務の彼と結婚、アメリカ法人勤務となってもう10年以上あちらに居住しています。近所の喫茶店の女主人の娘さんは結婚して夫婦で渡豪、現地のオーストラリアで日本料理店を経営しています。もう一軒の喫茶店のママは店を息子に譲ってカナダに移住、ときたま帰ってきて海外生活をエンジョイしている元気な姿をみせてくれています。今改めてみて身近にこんなに海外交流があることは驚きです。
海外交流のひとつの指標として国連にどれほどの日本人が勤務しているかを調べてみました。2021年末で国連に関連する国際機関で勤務する職員は956人となり過去最高を記録したとNHKが伝えています。2023年には国連本部、WHO(世界保健機関)、WTO(世界貿易機関)などに勤務する女性が604人に増加し61%を占めるに至っています。国は2025年には1000人に増員したいとしています。
朝日新聞が伝える所では日本人の海外流出が静かに進んでいるとしています(2023.1.23)。外務省の海外在留邦人数調査統計によると、2022年10月1日現在で永住者は過去最高の55万7千人になった。前年比約2万人増で、よりよい生活や仕事を海外に求める傾向が強まっているのではと分析しています。
スイスの「世界経済フォーラム」の発表する「ジェンダー・ギャップ指数(GGI)2024」によるとわが国は世界120ヶ国中118位(0.663)という悲惨な結果になっています。教育と健康は世界トップクラスですが政治参画は(0.118)、経済参画は(0.568)となっており韓国(94位)中国(106位)より下位にあるという事実は、わが国低迷の根本的な要因がこのあたりにあることを示唆していないでしょうか。それを裏づける研究が明らかになっています。女性の社会進出が進んでいる国ほど合計特殊出生率が高い傾向にあるというのです。
実質賃金の国際比較をみてみますと(1991年100)、わが国は103.1(2020年)とこの30年ほとんど伸びていません。一方アメリカは146.7、イギリス144.4、フランス129.6、ドイツ133.7となっておりこの30年に最低でも3割は増加しているなかでわが国の低調さは際立っています。
政治の世界の男性優位は明らかでそれも高齢者が威張っています。先日の自民党総裁選挙でも小泉さんは43才、小林鷹之さんは49才で「経験不足の若手」ということで落選しました。フランスのマクロンは45才、カナダのトルドーは51才であるのに反して。経済面のジェンダー・ギャップを管理職の女性比率で見ると大企業では7.6%、中小企業11.5%になっています。
先に見たように教育(識字率や高学歴率など)では世界最高レベルにあるにもかかわらず社会進出がこれほど「男性優位」に偏っているのでは女性がわが国に失望するのは当然です。若くて有能な女性ならなおさらでしょう。自国の女性に見捨てられた日本がアジアの、そして世界の人びとを惹き付ける魅力ある国として存在することは極めて難しいのではないでしょうか。国の将来推計人口では40年超後には日本の10人に1人が外国人になると予測しています。そのことで最低生産人口を確保するという目論見なのでしょうが果たして可能でしょうか。
気がつけば身近なところでグローバル化が進んでいます。魅力ある国づくりを真剣に考えないと気がつけば意欲ある女性がほとんど周りにいなくなっているという事態になっていないとも限りません。
威張っているじいさんおっさんたち、本気で女性と若手を評価しないと日本は世界から取り残された弱小国に成り下がってしまいますよ。
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