2009年6月27日土曜日

根拠なき楽観

 かつてグリーンスパン米FRB議長が株式市場の異常な高騰を「根拠なき熱狂」と警告したことがあった。株価が一時一万円台を回復したり政府が景気の底打ち宣言を出したりしている今の我国の状況を『根拠なき楽観』と感じているのは私だけだろうか。

 アメリカ発の金融危機による百年に一度の経済危機、を15兆円にも上る補正予算で乗り切ろうとしているが、その先にある「国のかたち」が全く見えてこない。退職者の健康保険等のレガシーコストがGMを破綻に追い込んだことを教訓として、オバマは国民健康保険の創設、GMやAIGなど経営破綻企業の一時国有化やグリーン・ニューディール政策によってアメリカを大きく方向転換させようとしている。EUは低炭素社会への移行を産業革命以来の文明史的転換と捉えて温暖化ガスの中期削減目標を1990年比20%を掲げている。自民党や民主党にこうした世界観歴史観が全く感じられない。
 
 明治維新以来わが国は「殖産興業」「富国強兵」を国是として先進国へのキャッチアップに邁進してきた。資源少国でありながら国のありようを「貿易立国」と定めて「資源、石油、食料、軍備」を外国から輸入することを当然としてきた。しかしこうした「日本国のかたち」を百パーセント見直して新しい国のかたちを問うのが今回の総選挙であり、これまでの延長線上や、ましてや従来型施策の増強などで『百年に一度の経済危機』を乗り切れないことを知る必要がある。

 消費税増税の前にムダを省くと誰もがいうが、歴史観に基づいた新しい国のかたちをもっていない政治家や役人の手におえる作業ではない。少なくともキャッチアップのための供給側(企業)偏重の国の経費は役割を終えたとして削減対象と見なす覚悟がいる。この視点だけでも相当な割合の国家予算が削減できるし特別会計は殆んど不要になるであろう。低炭素社会は石油輸入を、食料自給率向上は食料輸入を大幅に低下させる。さらに軍備削減に切り込む勇気があれば日本は全く新しい国に生まれ変われるのだが、そんなリーダーが現れてくれるだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿