日曜夕方の「ハーバード白熱教室(NHK教育)」が人気らしい。マイケル・サンデル教授の政治哲学というおよそ素人向けでない授業が何故一般に受入れられたかといえばその語り口が極めて解り易いからだ。マイケル・ジョーダンやビル・ゲーツを例に引いて問題を解きほぐし学生の意見を取り入れながら『深遠な政治哲学』に導く教授術は見事という他ない。「難しいものをやさしく、やさしいものを面白く、面白いものを深く」という『井上ひさし流』の講義は楽しい。
この番組でひとつ気になっていることがある。1000人を超える受講生は驚くほど多くの国の留学生で構成されているが日本人と確認できる学生がこれまで一度も画面に出てきていないのだ。白人黒人に伍して中国人、韓国人などの黄色人も多数受講している中、日本人らしい姿が見えない。勿論そんなことは無いのだろうが比率からして圧倒的に少ないことは間違いない。これは『ゆゆしい問題』なのではないか。世界の優れた大学で多くの国々の学生と切磋琢磨したグローバル化世界に通用する若者がこれからの日本に必要ではないのか。
我国の大学教育が充実しているから大丈夫いう見方があるかも知れない。本当だろうか。2008年世界大学ランキング(THE-QS発表)によればベスト50には僅か3校しか入っていない(東大19位京大25位阪大44位)。「日中韓大学間交流・連携推進会議」が大学、行政、産業界の参加で発足したのもこうした危機感に根差している。この会議の共同議長を務める安西祐一郎慶応義塾前塾長は日本の大学教育の現状を次のように分析している。
日本は国内向け雇用市場に連動した世界と懸け離れた「ガラパゴス化した大学教育」になっている。企業側が自前で新卒の再教育をする雇用環境のもとで、国外に一歩出れば通用しない質の低い教育が横並びで行われ、学生も批判せずに受入れる状態が国内に蔓延してしまった。(6.14日経より)。
大学4年次の秋(10月以降)に就職活動を解禁するという就職協定を1996年に廃棄した大企業の採用環境は、大学で勉強する期間を実質2年間にしている。これでは優秀な学生の育成される可能性が極端に限られても仕方ない。新卒一斉定期採用という雇用慣習の再考も含めて我国高等教育のあり方を根本的に考え直す時期に来ている。
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