2010年7月19日月曜日

民意の真意

 先ずクイズを。
 ある女性が癌のために死に瀕しています。夫が彼女を救うために最近開発された特効薬を求め様としたのですが開発者の薬剤師は2000ドルという法外な要求を出して一歩も譲りません。1000ドルしかない夫はどうしても妻を助けたくてとうとうその薬を盗んでしまいました。
 彼の行動は正しかったでしょうか?それとも間違っていたでしょうか?そしてそれはどのような理由からでしょうか。

 これはコールバーグの道徳性発達段階テストとよばれるもので答えはつぎの6段階がある。[1]懲罰志向(警察に捕まって刑務所に入れられるから盗むべきでない)[2]道徳的快楽志向(彼が刑務所から出てくる頃には妻は死んでいるだろうから何の徳にもならない)[3]よい子志向(ドロボーと呼ばれるし妻も盗んだ薬で治りたくないだろう)[4]権威志向(どんな理由でも窃盗は正当化されない)[5]社会契約志向(盗むべきでない。薬剤師のやり方はひどいが開発者の権利は尊重されるべきだ)[6]個人的理念に基づく道徳性(盗んでよい。その代り自首して処罰は受けなければならない。最も大事なことは妻の命を助けることだ)

 民主党惨敗の参議院議員選挙の結果について種々取り沙汰されているが、上のテストの『妻の命を助ける』と同じような最高位に位置づけられるべき『価値』があいまいにされて議論されている。民意の揺れが激しいと『衆愚』と嘲る向きもあるがとんでもないと思う。
 政治システムや政治家の資質が今のままではいけないのではないか。自民党的なるものは制度疲労して使い物にならないが、かといって民主党の提案も正しいとは思えない。こうした迷いが『ねじれ』となって一方に傾斜するのを躊躇っている、それが『民意』なのだ。

 明治以来欧米先進国へのキャッチアップを目指してきて戦後経済の復興と世界第2位の経済大国を実現した。政治についてみれば議会を興し、民意を反映するシステムに発展させるために政治家は努力してきたし一応の結果は齎している。
 政治も経済も目指してきた目標はソコソコ達成したといえる。ところがここに至って目標を明確にすることが困難なほど価値が多様化、重層化、複雑化してしまったために政治システム(含む官僚組織)も政治家も対応できなくなっている。
 大変革の時代は古い政治システムと政治家の退場を要求しているように思う。

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