2010年10月18日月曜日

セカンドオピニオンは必要か

 昨今のテレビはやたら保険の広告が目立つ。その広告の『売り』は先進医療とセカンドオピニンをサービスに含めていることが多い。そこでセカンドオピニオンについて考えてみたい。

 文明の進歩と社会の疾病構造の変化について英国の疫学者が次のような仮説を立てている。文明の第一段階にある社会では「消化器系感染症」が死因のトップを占め、以下第二段階では「呼吸器系感染症」、第三段階になると「生活習慣病」に変化し最終段階では「社会的不適合」による死が主役になるだろうというものである。我国のこれまでを振り返ってみると、明治維新から昭和初期にかけてはコレラや疫痢・赤痢などの消化器系感染症で死ぬ人が圧倒的に多かったが、昭和に入ると結核や肺炎などの呼吸器系感染症が主役に躍り出た。それが今ではがん、心疾患、脳血管疾患の生活習慣病に属する疫病が主要死因を占有している。

 こうした疾病構造の変化を医師と患者の関係でとらえると、感染症の場合は体内の病原体を殺すこと、悪い働きをしなくすることが治療だから主役は医師であり患者は医師にまかせておけばいい。しかし生活習慣病では患者が治療の主役になる。医師や看護婦、薬剤師などの医療行為はあくまでも患者に対する援助サービスであって、その『実行』は患者自身やその家族に委ねられている。治療行為の実践者としての本質的役割は医師ではなく患者側にあって、医療の本質が「キュア(治療)からケア(看護)へ」変化しているのである。

 この変化を正しく理解している人は以外と少ない。高血圧や糖尿病であっても医師に頼りっきりでただ薬を服(の)み続けるだけの場合が多い。指示通りに服む人はまだいい方でそれすらいい加減な人もいる。大体生活習慣病の患者に何故禁煙を強制しないのか。高い薬を服用しても喫煙していたのでは病状が改善されるわけがない。多分喫煙は個人の自由だからなのだろうが、こうしたことを放置しているから医療費の公負担が厖大に積みあがって財政を圧迫するに至ったのではないか。
 
 医師と患者の関係を良好にする第一条件はどちらもが正しく情報を交換することだ。その段階をなおざりにして『セカンドオピニオン』を取り入れても治療は正常に行われないに違いない。患者は医師に助けられるが、医師を育てるのは患者だということも認識する必要がある。

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