2010年12月20日月曜日

減税は財政支出に勝る

 米国が10年間で約8580億ドル(約72兆円)に及ぶ減税(ブッシュ減税)や失業保険給付の延長を決定した。当初は年収25万ドル以下の所得層に限って考えられていたが共和党との調整で富裕層にも配慮した制限無しに落ち着いた。これは金融危機を受けて2009年に成立した景気対策の当初規模約8000億ドルを上回るもので、景気低迷や雇用悪化への危機感を共有した議会と政府が「最悪の事態」を避ける措置に踏み切ったものである。

 これに対する米国内の論調は次のようになっている。ワシントン・ポスト「減税終了は脆弱な景気回復を脅かす。景気対策として現実的期待を抱かせる賢明な政策」、ウォール・ストリート・ジャーナル「税率が成長に重要で企業を泥棒扱いするのは投資と雇用を阻害し、減税は財政支出に勝ることを(オバマは)認めつつある。企業が元気づけられ雇用を増やせるとの合図を送っている」、ニューヨーク・タイムズ「失業給付延長を妨害していたら数百万の米国民が苦しむところだった。ただ、無期限に富裕者向けの減税を続ける余裕はない」。

 一方我国の来年度税制大綱は12年ぶりの法人税率引下げを大々的に打ち出し景気活性化と雇用拡大を狙ったと政府は訴えているが、内容を見ると法人税減税(5%)5800億円、個人増税4900億円で実質減税額900億円という、将来の見えない負担に歪みのある、効果を疑うものになっている。個人増税は、サラリーマンの必要経費である給与所得控除を年収1500万円超で245万円打ち切りとする、相続税の基礎控除を縮小するなど富裕層を狙い撃ちにしたもので、小手先の帳尻合せといわれても仕方がない。

 我国と米国のGDPは2009年50680億ドルと142560億ドルで約2.8倍の差があるが、それにしてもこの驚くべき危機対応の差はどう説明したらいいものか。米国の民主党と共和党による国の命運を賭けた真剣勝負のせめぎ合いに対して、我国の政治家には全く愛国の情熱が感じられない。経済状況はデフレが20年も続いている我国の方が深刻なはずなのだが。

 政治家と政党の成熟度の差なのか、FRBと日銀の差なのか、それとも政治と経済に透徹した識見をマスコミが有しているかどうかの差なのか。

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