2011年9月12日月曜日

電力問題を考えるために

 3.11東日本大震災から半年になる。一日も早い復旧復興を願って止まないがその基本となる電力問題、エネルギー問題への国としての構想が一向に定まらない。そこで論点整理を行ってみたい。

 先ず第1は世界一高いといわれる「我国電力料金の妥当性」の検討である。「総括原価方式」という算定方式が採用されており施設を持っていれば持っているほど利益が上がるという仕組みになっている。従って火力発電より原子力発電の方が設備が高いから原子力発電推進へひた走ってきたのではないかという勘繰りもある。とりわけ「使用済み核燃料棒」が再生すれば再利用可能という観点で資産計上されているなど根本的な問題もあり国民視点からの妥当性検討は必須の課題である。

 第2に「原子力発電所の施設詳細」の公表はどうしても省けないステップである。前首相の「原発依存からの脱却」発言以降原発存続に対する賛否が一種のイデオロギー的問題かのように論じられているが停止中の原発再稼動も含めて現状認識を科学的資料に基づいて丁寧に行う必要がある。54基ある原発の製造会社、製造年、性能と安全性に関する客観的資料、故障や事故の履歴など全面的にオープンにされた上で、個別の存続や再稼動の論議が進められるべきである。福島原発は相当古い機種で劣化も著しく稼動させていたこと自体が問題視されている施設であり、このランクの施設は早期運転停止から廃棄の処置が講じられるべきであろうが、性能の良い最新の機種であれば安全性への確実な取組みを前提として国のエネルギー政策の次段階への移行まで存続されても妥当なのではないか。
 
 最後に「大規模集中型から分散型地産地消発電」への移行を前提として「市場機能」が働く環境を整備することである。論議の過程で明らかになったのは電力市場がいかに現在の9電力独占体制に阻害されていたかということである。新規参入は完全に排除されイノベーション(技術革新)は電力会社の支配下でその芽さえ摘み取られてきた。しかし市場機能が回復すれば、そして次のリーディング産業が世界的に電力・エネルギー分野であることが明らかになった今、技術進歩は想像を超えた速度で進展するであろう。そのためには「電力全量買取制度」にみられるような買取対象を政府や官僚の裁量にまかされるような有り方は絶対に避けねばならない。発送電の分離なども含めて小資本の参加が可能な市場設計―例えば定年世代が地域蓄電や発電事業に参加できるような―も是非講じてもらいたい。

 「まだ最悪ではない、/『これは最悪だ』と言えているうちは」(シェークスピア『リア王』より)

0 件のコメント:

コメントを投稿