2011年9月5日月曜日

円高異見

 円高がつづいている。このまま円高を放置しておけば輸出産業を直撃し国内空洞化が加速するのは必定である、とメディアは報じる。しかし世界に目を転じてみれば物価高騰が弱者を痛めつけ世上不安を増幅している。9月2日の日経の記事によれば「タイの消費者物価指数は4.3%、韓国は5.3%上昇」、8月末の報道では「インドで9%ベトナムでは20%の上昇に高止まりしている」と伝えている。2010年のインフレ率を見れば「ベネズエラ27.18%ギニア20.8%イラン、パキスタン、ベトナムが10%以上」という高率国をはじめとして、日本その他2、3の国を除くすべての国で物価高が進行している。
 内容を見ると(7月現在の2010年平均との比較で)、日経国際商品指数など代表的な3指数の平均は28%上昇、NY原油22%シカゴ・トーモロコシ60%大豆30%小麦15%コーヒー54%綿花20%と軒並み高騰している。
 記憶に新しいロンドンの若者の暴動騒ぎは職に就けない若年層の不満の爆発であり、年初来の「アラブの春」は永年の独裁による格差拡大が貧困層を増加させそこへ食料品の高騰が直撃したことが引き金となった。EU圏内の財政危機も格差拡大と弱者への物価高騰が底流にある。

 円高が輸出産業に与える悪影響は事実であるがその側面ばかりを強調する報道のあり方は不公平である。GDPに占める輸出の割合は1割であり消費は7割を占める。もし今、円が100円であったり115円であったら世界的な物価高は国内消費に重大な影響を与えているに違いない。若年層の失業率が20%近くあり年金生活者が5人に1人を占める我国で物価高は想像以上の生活苦につながる。
 世界的な潮流からすればむしろこうした側面からの円高評価が報じられて当然ではないのか。

 円高の原因が『デフレ』にあることは明らかであるにもかかわらず「円高対策」といえば「市場介入や金融緩和」が前面に出てくるのは何故だろうか。
 デフレ脱却には総需要の増大が必要であり、結果的に雇用と投資の増大が輸出以上に必要になる。『国内産業の空洞化』は雇用の海外流出であるからデフレを更に進めてしまう。200兆円以上に積み上った内部留保を雇用拡大にも投資にも活用できない企業にこそデフレ脱却の責任があることは疑いない。   

 円高のたびに「政府・日銀の円高対策」を声高に叫ぶマスコミと企業に根本的な転換を求める。

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