2011年9月19日月曜日

上沼恵美子の見識

 「断腸亭日乗」(永井荷風の日記)にこんな記述がある。「(大正十二年)十月三日(9月1日に関東大震災があった)。(略)午後丸の内三菱銀行に赴かむとて日比谷公園を過ぐ。林間に仮小屋建ち連り、糞尿の臭気堪ふべからず。(略)帝都荒廃の光景哀れといふも愚かなり。されどつらつら明治以降大正現代の帝都を見れば、いはゆる山師の玄関に異ならず。愚民を欺くいかさま物に過ぎざれば、灰燼になりしとてさして惜しむには及ばず。(略)この度の災禍は実に天罰なりといふべし。何ぞ深く悲しむに及ばむや。民は既に家を失ひ国帑また空しからむとす。外観をのみ修飾して百年の計をなさざる国家の末路は即かくの如し。自業自得天罰覿面といふのみ。」

 何とも激烈な慨嘆ではあるが、東日本大震災から半年を過ぎて未だに「百年の計」が提案されず復旧復興の端緒にもつけずにいる国民の心情を代弁して余りあるといえないか。東電が原発事故の本補償の手続きを開始したが補償金請求書の煩雑さは被災者無視も甚だしく、悲しく空しい。補償作業がこのまま東電ペースで続くのならこの国はもう「国民の生命と財産を守る」という国家の態を成していない。
被災者の立場に立った「百年の計」は一体何時になったら提示されるのだろうか。

 閑話休題。上沼恵美子が「上沼・高田のクギズケ」という番組でキレまくる場面を見た。この番組は芸能ネタを中心としたテーマを5、6人のパネラーが解説し、にぎやかしに配された2、3組のお笑いタレントが番組を盛り上げていくという構成になっている。先日松尾某というタレントが出演した時「アンタは一体何もんナンヤ!」と上沼がキレたのだ。番組的には「にぎやかしのお笑いタレント」として配された彼は、これまで何度か出演しているがパネラーを差し置いて知識や薀蓄を語ったことが度々ありその都度上沼は注意していたのだが、とうとう堪忍袋の緒が切れ、たまらず叱責の声を荒げたのだ。

 ひと月に150冊の本を読むと豪語する宮崎某というタレントがいるが、彼は「1日に5冊も読めるような本」しか読んでいないことを白状していることに気づいていない。松尾某や宮崎某など専門分野を持たない物知り「かしこタレント」が幅を利かすのはテレビスタッフのレベル低下の裏返しに他ならない。

 市民も放送局も相当な出費でデジタル化したのだから放送内容の良質化を是非実現して欲しい。

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