2011年11月21日月曜日

既得権とTPP

1ヶ月前に「安全宣言」が出された福島県産米が大きく揺らいでいる。福島市大波地区のコメを農家が自主検査したところ国暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を超す放射性セシウムが検出されたため政府は17日同地区の今年の生産米の出荷停止を指示したのだ。県が9~10月に同地区の2ヶ所で実施した予備調査、本調査で出した「規制値を下回っている」という検査結果は一体なんだったのだろう。国民は国や地方公共団体などの「公式発表」を今や全く信頼していない。国であれ地方であっても役所というものは企業―作り手側のためにあるもので市民―買い手を向いて手助けしてくれるものではない、と改めて覚悟せざるをえない。

 開業医や小規模な病院には税金の算定に関して特別な優遇策が認められていたようだ。実際の経費に関係なく売上高(お医者さんの場合も売上高でいいのだろうか)の57~72%を「みなし経費」として税金を計算してよかったのだ。利口なお医者さんは実際の経費と「みなし経費」のどちらか有利な方を採用して税務申告していたらしく、事務負担を減らして医療に専念するためという特例の目的に沿っていないと会計検査院が見直しを求めていたものを政府税調が廃止の方向で方針を決めた、と報道されている。

 (米国経済・歴史学者キンドルバーガーは)「自由貿易がその国にとってプラスかは状況に依存する」と主張する。その根拠として彼が挙げたのが、19世紀末に域外から安価な穀物が輸入された際、欧州5カ国が異なった反応をした事実だ。/一番ポジティブな反応をしたデンマークは農業を改革し域外への輸出国に転換したのに、一番ネガティブな反応をしたイタリアでは農業が荒廃し、南部からの移民が大量発生していた。(2011.11.16日経「やさしい経済学」より)

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加の最大の抵抗勢力は農業関係者と日本医師会である。反対するのは「膨大な既得権」が侵されるからだろうということは誰にでも見当が付くが、やっぱり、と思わせる「みなし経費」だ。洗い立てればまだまだでてくるに違いない。
19世紀ヨーロッパを襲った自由貿易の嵐に真正面から取組まなかったイタリア農業の荒廃と我国農業がダブって見えるのは私だけだろうか。

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