2012年11月12日月曜日

今こそソフトパワー(3)

  8日開幕した中国の第18回共産党大会で胡錦濤総書記が「2020年までに1人当たりの国民所得を倍増する」という目標を掲げた。違和感を感じる控えめな目標ではないだろうか。

2010年に日本を抜いて世界第2位の経済大国に成長した中国は2020年から2025年にはアメリカを超えて世界第1位になるとまことしやかに伝えられている。もしそうなら2011年に5400米ドルだった1人当りGDPは1万ドルを超えて15000ドル、3倍に近い数字になっていなければおかしい計算になる。
中国が1位になるという想定を受け入れてその時の世界経済を考えてみると米国と中国が世界経済の40%近い比率を占めることになる。少し前の『G7(8)』は今や『G20』の時代になっており新興国隆盛の情勢を踏まえると今後は30カ国以上の国々が優勢な世界経済のプレイヤーとなるに違いない。『資源の有限性』という厳然たる事実を考えると米中2国で資源の独占が許されるとは到底思えない。
また中国がこれまで成長のエンジンとしてきた「人口ボーナス」はすでに転換点を越え2020年には「人口オーナス」の状況に至っている。人口、生産性、イノベーションが成長の3要素だとすれば人口増加の望めない中で成長を遂げるには生産性の向上とイノベーションが必須となるが現状の中国経済の状態はそれには程遠い状況にある。加えて総書記の活動報告にもあるように中国国内の腐敗と格差の拡大に対する不満は年間10万件を超える集団抗議行動として顕在化しておりそれを解消せずに成長を達成することは不可能である。

「中国の鄧小平の実行した四つの近代化は『工業、農業、国防、科学技術』であった。中国はこれには成功したと言えようが、情報の近代化を実現できるかがこれからの中国指導者の課題である。(24.11.4毎日「時代の風・中西寛」)」。中西氏の言うようにこれからの中国は情報化によるサービス産業の育成が重要になってくるが為政者はこの段階を着実に実行できるであろうか。

経営学に「スパン・オブ・コントロール(管理の限界)」という考え方がある。「ひとの管理できる人数は7~9人が限界である」として管理組織を構成していく。国家の経営を企業のそれになぞらえる事に無理があることは承知のうえで、国家経営の人口規模はどのあたりが限界なのだろうかと考えてみる。人種の坩堝といわれながら活力を失わずに辛うじて成長を続けるアメリカは格好のモデルケースといえるだろう。そのアメリカは今3億1千2百万人弱の人口である。先日の大統領選挙の結果をみても統一を保てるギリギリの限界のように感じる。とすれば13億人を超える中国は「国家の人口管理の限界=3億人」を4倍近く超えていることになる。

 胡錦濤総書記をはじめ中国為政者は「13億人の国家経営」に緊迫した危機感を抱いている。「所得倍増計画」はその表れと感じたのは私だけだろうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿