2012年12月17日月曜日

今こそソフトパワー(4)

  北朝鮮がミサイル実験を強行した。すると翌日中国空軍機が尖閣上空の領空を侵犯したがこれは北朝鮮にメンツを潰された中国政府が国民の批判を逸らす為に起こした示威行為とみるのが単純だが当を得ているのではないか。
経済力を背景とした中国の権威主義的な外交政策は、尖閣諸島のみならず南シナ海の領有権をめぐるフィリピン、ベトナムとの対立激化、黄海での領有権をめぐる中韓対立、更に中国と良好な関係を保っていたミャンマー政府の中国離れなど再考を迫られている。
目を国内に転ずると所得格差を表す「ジニ係数」が警戒ラインを大幅に超え社会不安につながる『危険ライン』とされる0.6も突破するという状況に至っており不満分子の暴動は年間20万件を超えている。こした影響を受けてか2013年の昇給見通しは9.5%と予測され(人事・組織コンサルティング大手ヘイコンサルティンググループによる)これは物価上昇率の約3倍にも相当する。その一方で12年7月の失業率は8.05%と高止まりしており特に都市部の大学を卒業したばかりの労働者の失業率は16.4%と超高率になっている。
国内情勢が制御可能範囲を超えるかもしれない不安を抱えているにもかかわらず2012年度の国防費は前年度比11.2%増の6702億7400万元(約8兆7000億円)と増加傾向に一向に歯止めがかからない。こうした状況は一定して日本の軍国主義復活に対する不安を提起してきた中国に同調してきた東南アジア諸国を中国に対する恐怖をかきたて逆に日本の過去の侵略被害の記憶を打ち消し日本の再軍備への支持に変化させる結果を招いている。

10月から3回にわたって中国情勢を考えてきた。勿論それは経済を中心とした『中国一斑』にすぎないが、それにもかかわらず世上喧伝されている「中国脅威説」が根拠の薄いものでありむしろ中国共産党指導部の現体制維持の枠組みが相当困難な状況にい追い込まれていることを浮き彫りにしている。
「2025年には、いずれにせよ中国共産党の76年間にわたる権力に終止符が打たれるであろう」というジャック・アタリ「21世紀の歴史」(林昌宏訳作品社)の言葉はリアリティがあるし、更に「中国の軍事力を懸念する必要はない。なぜなら、中国は本当の意味で軍事大国ではないからだ。強大な海軍、空軍を持つには程遠い(2012.9.9毎日新聞「ジャック・アタリ/時代の風」)」という彼の発言は中国軍事力の見方に従来とは全く異なる視点を与えてくれる。

国内に抱えるマグマを増す矛盾、にもかかわらず対外的に威信を示さざるを得ないことからくる抑制不能な恒常的軍事費の増加傾向、拡大するGDPと1人当たりGDPの埋めることのできない乖離。
情報化とグローバル化が加速する世界情勢の中で、14億人の人口を一党独裁で制御することがいつまで可能なのだろうか。

安倍政権の10年後20年後を見据えた冷静で賢明な外交政策を期待する。

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