2013年2月11日月曜日

もし、終戦日が陰鬱な冬日だったら

  もし、終戦日がみぞれ混じりの陰鬱な冬日だったら日本国の戦後復興はあんなに力強いものであっただろうか、時々そんなことを考える。突き抜けるような青空、炎熱の太陽がジリジリと照りつけカラッカラに乾いた何もない真空のような真夏日。敗戦を知らされたのがそんな日であったからなんども挫折しそうになっても「みんな同じように貧しかったじゃないか」と思い直して頑張ってこれたように思う。
 
 アベノミクスが市場に歓迎され株高円安が進行しているが一時の熱狂で終る危険性はないだろうか。戦後の復興は皆等しく「壊滅」というスタートラインに立っていたから達成された側面が否定できないと思っている。財閥は解体され政治家は追放になったうえに農地も解放された。旧体制は解体したと多くの国民は感じていたに違いない。アベノミクスはそこへの踏み込みが不足している。むしろ改革を先延ばしして既得権を擁護しようという意図が透けている。

 インフレ目標を掲げ物価の先高感を煽って消費を掻き立てようと目論んでいるが狙い通りに事が運ぶかどうかは極めて怪しい。「一億総中流」で大量消費を可能にしたのは終身雇用、年功序列の生涯賃金性度という裏付けがあったからだ。ローンを組んで未来が買えた。30年ローンで住宅を、5年ローンで自家用車を、クーラーもカラーテレビもローンで買った。しかし、今は大企業でも明日は分からない、成果主義で給料の見通しも立たない。派遣かパートで共働きしようと思っても保育園がない。銀行でローンを申し込んでも相手にしてくれない。「安心できる持続可能な年金・社会保障制度」で安定した将来を示せば『今の消費』が拡大するとアベノミクスは構想しているが、そこへ行き着くまでの『今と明日の生活』の見取り図が描けていない状態でローンを組んで未来を買うだろうか。

 総務省が1日発表した2012年12月の労働力調査によると、産業別就業者数で「製造業」が前年同月より35万人減って998万人となり1千万人を割り込んだ。1千万人割れは1961年6月以来51年ぶり、ピークは1992年10月の1603万人でそのときより4割も減少している、と報道された。しかしこの数字は実態とかけ離れている。中小企業金融円滑化法で延命されている企業があるからだ。中小企業の借入金返済の期限延長や条件緩和を通じて企業の倒産を防ぐ目的で導入されたこの法律が平成25年3月で最終延長の期限切れになり大量の企業が倒産するのではないかと懸念されている。倒産企業がどれほどの数になるか定かではないが深刻な事態が予想されているから倒産による失業者も少なくないに違いない。全産業就業者数6200万人の16%という数字が表立った製造業の雇用状況になるが実質的には更に低下しているとみるのが妥当であろう。しかしアベノミクスは製造業偏重の「成長戦略」という旧来型の傾向が強い。

 デフレ克服を最重要課題に掲げるアベノミクス。しかしバブル崩壊という「第二の戦後」からの脱却を目指すにしては覚悟が甘い。

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