2013年2月4日月曜日

生きることへの愛

  公園のゴミが激減した。近住のNさんが20年、引き継いだ私が8年毎日ゴミ袋1袋以上拾い続けたゴミがここ数週間ほとんど見られなくなったのだ。原因は近くの中学校と小学校の協力にある。捨て方に無邪気さがなく悪意を感じたので昨年の夏休み前、教頭に現場を見せて児童生徒に指導して欲しいと頼み込んだ。一度には改善されなかったが指導を繰り返して頂いた結果、今年になって見違えるようにごみ捨てが少なくなったのだ。
 もう一つ変化の見えるのが少年野球だ。暴力的なシゴキと威圧的な叱咤が長い間少年野球指導者の指導方法であったが最近はそうではない。子供達を集めて穏やかな口調で諄々と理詰めで指導する監督の姿をよく見るようになった。

 桜宮バスケ部員の自殺事件や日本柔道オリンピック候補女子選手の監督の暴力行為に対するJOCへの嘆願事件などスポーツ界での暴力事件が相次いで表面化している。しかしスポーツに関するこうした事例は日本固有の傾向であって、そもそもスポーツと暴力は対極にある。
 産業が高度に発達し、機能的分化が著しく進んだ現代社会では人生の重要な活動の中で興奮を示すことは、危険と見なされ、興奮は社会や国家によって極端に規制される。ところが、多くの余暇活動は、人間が直接、肉体的被害を被ることなく、実際の人間生活の中で生み出される興奮に近い状態を味わえる想像上の領域を提供してくれる(ノルベルト・アリエス他著「スポーツと文明化」p464大平章訳法政大学出版局)。
 余暇活動の中にスポーツが含まれることは自明であり、アリエスがいうように「肉体的被害を被ることなく興奮の疑似体験」をするのがスポーツであるならば、体罰や暴力的指導が当然視される環境は全面的に改められるべきであろう。「部活」という形態の見直しや選手とコーチ(監督)の対等な関係の構築など我が国スポーツ界の根本的改革が必要な時期に来ているのは間違いない。

 子供の死に関して衝撃を受けたニュースがあった。平成23年度に全国の小中高校から報告のあった児童生徒の自殺数が前年度より44人増えて200人になったと伝えられたのだ。内訳は高校生が157人(前年比45人増)中学校39人(同4人減)小学校4人(同3人増)。原因は不明が58%、父母の叱責12%進路問題10%で自殺は中学校で4人となっている。(これは警察庁発表の自殺数353人と大きな開きがある―集計期間が異なるが)。同じ頃大津中2いじめ自殺事件について第3者委員会が報告書をまとめた。自殺といじめに直接の因果関係を認めた画期的な内容になっている。
 高度に産業化し都市化した現在、「興奮は社会や国家によって極端に規制」されているから人間の内面に潜む「暴力や肉体的興奮」を如何に管理するかは個人にとっても集団にとっても重大な課題である。中途半端にしないで本質的な解決策を模索して欲しいと心から願う。
 
 生きることへの愛を、君たちにとって最高の希望への愛とせよ。君たちにとって最高の希望を、生きていることの最高の思想とせよ!(ニーチェ「ツァラトゥストラ」p95丘沢静也訳・光文社古典新訳文庫)。

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