2013年3月11日月曜日

アベノミクスでデフレ脱却はなるか

 アベノミクスの効果か日経平均がリーマン前回復を果たし1万2283円(3月8日現在)をつけ円安も95円40銭まで進んでいる。政府の要請に応えて流通大手は賃上げを打ち出し自動車産業各社もボーナスの労組要求に満額回答を与えた。3本の矢のうち金融政策は予想を超えた効果を表しており財政、成長政策次第では20年に及ぶデフレからの脱却も現実味を帯びてくる。

ところがこうした期待に冷水を浴びせる事態が大きく報じられているにもかかわらずメディアは全くそのことに気づいていない。というよりも、ふたつの問題は別次元で相互に深い関連があるという認識がないのだ。それは「昨年の衆院選『違憲』」という東京高裁判決だ。2009年衆院選の「一票の格差・違憲判決」が2011年3月に最高裁から出されていたにもかかわらず強行された昨年末の衆院選に、高裁が僅か3ヶ月足らずで結論を出したということは違憲状態が議論の余地のない事態に至っていることを意味している。立法府の怠慢は三権分立の根幹に関わる重大な過誤と責められて当然である。

しかしこの判決は視点を変えれば日本国土の経営が『違憲』を招来するほど『歪(いびつ)な』形で行われている現実を訴えているのだがそれを指摘するメディアは皆無だ。折しも2020年オリンピック東京招致のIOC委員へのプレゼンが良好裡に進められ実現に向けて大きく前進している。もしこのまま開催ということになれば施設・インフラ整備に莫大な税金が注ぎ込まれ益々「東京圏とその他」の格差は拡大する。
何故デフレと「違憲の国土経営」に緊密な関係があるかについては企業の有価証券報告書を見れば一目瞭然だ。有価証券報告書の貸借対照表・資産の部に「有形固定資産/土地」という項目がある。企業は「資産」を最適活用して「付加価値」を極大化し利益を上げることが至上命題である。都心の目貫通りに本社ビルを所有しているにもかかわらずそれにふさわしい売上高や利益を生み出していなければ、株主から本社ビルを売却してもっと安い土地に移転するよう要求されるに違いない。
敗戦からの復興という使命を負っていた戦後の政府・官僚は効率性を上げるために首都圏偏重で開発を進めざるを得なかった一面は否めない。しかしある時点から、置き去りにしてきた首都圏以外の「地方」の経営的活用に転換しなければならなかったにもかかわらず膨大な「既得権(者)」の維持を当然視して地方を切り捨ててきたのだ。
デフレ解決の有力な方策のひとつが「規制緩和と構造改革」だが、これは供給面の円滑な新陳代謝を意味し、使命を終えた旧産業から新たな成長産業への資源の適正移転と未利用資源の有効活用によって実現される。国家の経営も企業と異ならない。旧産業に滞留する資産と人材を新産業に移転すると同時に「未利用資産」―例えば最近注目を集めているメタンハイドレードのようにこれまで全く知られていなかった資源を活用すると共に未利用の国土の有効活用もデフレ脱却の重要な課題であるという認識が不可欠である。週刊東洋経済が2050年未来予測として『人の住まない無居住化地域の増大』という警告を発し人口半減地域も拡大すると予測している。埼玉県と同じ広さの耕作放棄地もある。

東京圏一極繁栄という不合理・非効率な国土経営で日本全土からデフレを駆逐できるはずがない。

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