2013年5月20日月曜日

私ご遠慮いたします

 我が国の億万長者は100万人とも200万人とも言われている。最近のある統計では140万人になっていたがそのうちの80%を高齢者が占めている。今仮に高齢者の億万長者で厚生年金受給者が100万人だとするとその年金額は1年で2兆円を超える。厚生年金の平均支給額は年間200万円超であるから月額18万円程度の年金支給がなくても億万長者の彼等は生活に困るということはないであろう。もし彼らが「私、年金の支給をご遠慮いたします」と言ってくれれば国の財政にとって大変有難いことになる。年間の税収約40兆円社会保障費合計約26兆円だから社会保障費の1割弱税収の5%が節減できるのだから影響は大きい。財政再建が喫緊の課題になっている現在、どうして日本経団連などの財界大物が提案しないのか不思議でならない。
 考えてみて欲しい、年金は積立方式ではなく「賦課方式」なのだ。現役の若い人達が年金を負担してくれているのだ。総所得(雇用所得や財産所得などに年金所得を加えたもの)の平均年額は65~70歳世帯458万円、70~75歳世帯429万円なのに対して30~34歳世帯は477万円になっていることを知れば上の提案は決して無理押しでないことが分かろう。更に医療費に目を転じると国民医療費全体(10年度)に占める高齢者の医療費は65歳以上分が55.4%、うち後期高齢者(75歳以上)分が33.3%に達している。ある試算によると50年度には65歳以上の医療費がほぼ4分の3を占めるようになると予測している(データは2013.5.17日経「経済教室・小塩隆士一橋大教授」より)。
 年金・医療費をなど高齢者は出来る人から既得権を放棄することを考える時期に来ているのではないか、「私ご遠慮いたします」と。

 若者の失業が世界的に問題になっている。ILO(国際労働機構)の13年見込みによると若年層(15~24歳)失業率は12.6%と全年齢の6.0%を大幅に上回っておりなかでも中東、北アフリカ、EUは20%を超えて深刻化している。EUは金融危機から脱するための緊縮財政が求められているから失業中の若者の不満は国を混乱に陥れる恐れさえある(財政再建に迫られている我が国も決して他人事ではない)。
 我が国の若年層の失業率は12年8.2%で世界平均より低いが国内の全年齢4.3%を大幅に上回る。加えて失業期間が10ヶ月以上に長期化しているから事態は深刻だ。これに非正規雇用者の35%(これはOECD加盟国中韓国イタリアに次いで3番目に高い)を加えると実に半分近い若者が不安定低所得な雇用状態に置かれていることになる。彼等は教育や訓練を受ける機会に恵まれないから職務遂行能力が著しく毀損される恐れがあり長い目で見れば我が国の労働生産性が劣化することは間違いない。グローバル化が進展し製造業中心から頭脳労働中心のサービス産業に産業構造を変革しなければならない我が国にとって著しい問題である。根本的な対策を早期に講じる必要がある。
 安倍政権の成長戦略の一つとして「限定型正社員」の創設を打ち出しているがこれを現在の正社員にも適用を広げるべきだ。正社員は仕事の中身、勤務地、労働時間が無限定な職務を負っている。そのため長時間労働が常態化しそれによる疲労が創造性の欠落を招き日本企業の独創性イノベーション力の貧しさにつながり国際競争力の減退を招いている。
 そこで提案だが「現在の正社員」の職務をジョブ・ディスクリプション(職務記述書)で限定化を図り残業時間を削除し、取り除かれ掬い上げられた労働時間と職務を「ワークシェアリング」して若者に分与してはどうか。連合などの組織労働者、とりわけ国労や自治労の公務員が率先して取り組んで欲しい、「お役所仕事」はとなりの仕事も分からない程職務が分離・確立しているのだから。
 連合の皆さん「私、定時勤務を超える仕事を、ご遠慮いたします」と申し出てくれませんか。

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