2015年9月13日日曜日

安倍政権と株安

 昨今の株式市場の動静に一喜一憂するのは愚の骨頂とは思うが8日の株価に何か象徴的な感じを受けたので書いてみたい。8株価日経平均株価1万7427円08銭で前日比433円39銭安となりこれは昨年末終値(1万7450円77銭)を下回り年初からの上昇分を打ち消した。折りしも当日は自民党総裁選の告示日であったが立候補者はなく安倍首相の無投票再選が決まった。本来ならご祝儀相場でも良かったはずがこの株価、ひょっとして市場の「安倍再選」へのシグナルではないのか。
 
 アベノミクスは金融緩和、財政政策、成長戦略の「3本の矢」であったがここにきて成長戦略に対する失望を内外から突きつけられ中国経済の失速も重なって先行きに不透明感が漂っていた。即ち円安の副作用、地方再生、成長と財政再建の両立など課題が鮮明になっている。しかし問題は経済以外にも有り、集団的自衛権行使を容認する安保法制や戦後70年談話、原発の再稼動などが国民に先行き不安を抱かせている。
 こうした情勢は内閣府が発表した8月の景気ウォッチャー調査に如実に現れており、街角景気の実感を示す現況判断指数(DI)が49.3となり前月比2.3ポイント悪化、好・不況の分かれ目となる50を7ヶ月ぶりに下回った。2~3ヶ月先の見通しを示す先行きIDも悪化し50を割り込んだ。経済の専門家は中国など海外経済の減速や株価下落が主たる要因と見ているがそれだけだろうか。
 街角景気調査は小売店の販売員やタクシードライバーなど景気を敏感に感じ取る仕事に就く約2千人に足元の景況感や先行きを聞いている。確かに販売傾向やタクシー乗車客数、貨物トラックの荷動きなど身近な商売の動きを敏感に感じる人たちだがそれと同時に「安保法制」への激しい反対運動や説明不足と批判される政治手法への不信感、原発再稼動への不安など現政権への信頼の揺らぎも感じていることは間違いない。こんなとき政権与党が安倍一極集中の「物言えぬ政党」に硬直化した「安倍無投票再選」を打ち出した、それへの『不満』と『不安』が大幅な株価悪化という市場のシグナルとなったのではないか。
 
 最近関西のテレビで「保育料算定における年少扶養控除の取り扱い」に関する矛盾を訴える報道が各局から放送されている。例えば5人子どもをもっているある家庭の公立保育園の保育料が今年の4月から3万3千円に改定され昨年の6千600円から大幅アップされたのだ。年間に直すと30万円以上の増額になるわけで一般家庭にとっては見過ごすことのできない事態にもかかわらず、前以て何の連絡もなく突然「保育料の改定について」という通知が届いて実施されたという。行政に訴えても、国の指導に基づいているので減免等の措置は行えないという対応に終っている。
 詳細はこうだ。所得税等に適用される所得控除のうち平成23年度から年少扶養控除は廃止されている。公立保育所等では両親のどちらかの収入から年少扶養控除を控除して所得を算出しその所得に基づいて保育料が算定されているが、この控除措置が廃止されたのだ。ただ一時に実施するのではなく経過措置として4年間(平成26年まで)据え置かれてきたのが、期限切れの今年からは全廃はせずに子どもの人数にかからわらず一律一家庭2人の子どもとして控除額を算定し保育料を決定する方式に改定された。従って件の家庭の場合、昨年までは〈年少扶養控除38万円×5=)190万円控除されていたのが(38×2=)76万円に減額され120万円近く算定所得が増えることになり保育料が5倍になったという訳である。
 少子化でこどもを如何に増やすかが大問題になっている昨今、こんな逆行する―子どもを多く産めば産むほど負担が増える制度を何の検討も加えず制度変更してしまう『粗雑な』政権運営に不満が高まる。
 ほかにも現在財務省で検討中のマイナンバーを利用した「消費税の軽減制度」や、消費税8%増税時に販売現場を厳重に監視する備えを怠ったために、〈増税前の内税5%上乗せされた販売価格〉をそのまま増税後の小売価格とした販売現場の『ズル』を見逃した(その結果3%増税が実質8%増税になった)意図せざる過剰増税など、政権が想定していない「市民への負担増」はまだまだありそうだ。
 
 金融緩和は「市場=国民の期待」に働きかける施策であると為政者は説明した。安保法制への不信、社会保障に対する不安、原発再稼動を取り巻く不透明感などが国民の将来に対する期待を揺るがしている。上に述べた保育料など経済制度の細かな綻びも含めて『国民への丁寧な説明責任』を怠って問答無用の政権運営が今後も継続するならば、戦後70年つづいてきた『民主国家日本』の破綻は意外と現実感をもってくるかもしれない。
 

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