2015年12月20日日曜日

スポーツ雑感27.12

 最近の若いアスリートのコメントの旨さには舌を巻く。先日バルセロナで行われたフィギスケートのグランプリ(GP)ファイナルで男子初の三連覇を達成した羽生結弦選手などその典型だろう。先の「2015NHK杯」で男子シングル史上初の300点超えの322.40点で優勝した羽生がどんな滑りをするか?前人未到の300点超えの後だけに注目されていたが世界最高得点を更新する330.43点で優勝したその驚異の成長に異次元の完成度を見せつけられた。その彼のコメント。「300点超えの達成感はNHK杯で味わったので、今回は(続けて達成できた)安堵感が強い」。更につづけて、今年の自分を表す漢字に「成」を選んで「一歩づつここまできたという気持ちと、ここからさらに強くなるぞ、という思いです。いいこと言ったな」と満面の笑みで締めくくった。
 短いことばで今の自分を表わすと同時に「成」という文字で簡潔にこれからの決意を表現するコメント術には一分の隙もない。普通なら「いいこと言ったな」という言葉には嫌味がつきまとうものだが、そこにだけ21歳という若さが滲み出て聞く者を安心させるのも彼の実力が最早常人でないレベルに達しているからだろう。
 コメントの旨い選手にはテニスの錦織圭、体操の内村航平など枚挙に暇がない。聞くところによると「ナショナルトレーニングセンター(通称味の素トレセン)」に若手の優秀な選手を選抜して特別高度の育成を行っていて、そのなかにはコメント術もメニューにあるらしいがそればかりではあるまい。若くてもひとつのジャンルを極めた人にはその高みからくる完成された表現術が自然と具わるのに違いない。
 
 別の意味で阪神の金本新監督のABCテレビ「おはよう朝日です」でのインタビュウのコメントに感心した。
 どんなチームづくりをしますか?という問いかけに「打つ野球、守る野球、走る野球がありますが分かりません。全選手のレベルアップを図りますからそれに応えてくれたなかから良い選手を選ぶのが監督の仕事です。打つ選手が多くなれば打つ野球になるでしょうし又別の野球になるかもしれません。今の時点ではどんな野球になるか分からないのです。
 来年が楽しみですね?キャンプは楽しみですがシーズンは怖いです。キャンプに若手がどれだけ成長してくるかを見るのは楽しみですがシーズンは未体験ですから怖いですね。
 アナウンサーの通り一遍の質問にここまで誠実に正確に答えた監督は初めて。なんと明晰な返答であろうか。ひょっとしたら金本監督は大変な名監督になるかもしれない。資質は十分だ、マネージメント力次第だが期待は大だ。
 
 金本流の真逆をやったのが巨人だ。20年ほど前財力にものをいわせて4番打者をズラリと並べて強力打線を誇ったが本塁打数のわりには成績は振るわず結局長島監督を引退に追い込んでしまった。考えてみれば当然のことで「打線」というように1、2番が塁に出て3番がチャンスを膨らませて4番につなぐ、4番がガツンといって5番が更に得点を重ねる、このつながりがビッグイニングを成立させる。4番打者クラスが本塁打を打ってもたかだが一年に30本に過ぎない、110試合前後は不発であるから本塁打数は多くてもそれ一本では勝利にはつながらない。投手も同様で先発15勝クラスの投手を10人以上も揃えたサムライジャパンが世界野球プレミア12で優勝できなかったのも中継ぎ投手が手薄だったからだ。同じ球威抜群の投手でも先発と中継ぎでは役割が根本的に異なる。1回から6、7回まで2、3点までに抑えてゲームを作ればいい先発と緊迫するゲームの終盤にマウンドに立って1回ないし2回をゼロに押えなければならない中継ぎでは投球術に相当な隔たりがある。球威抜群なら先発投手でも中継ぎが勤まると考えるのは素人の考えだ。小久保ジャパン監督がそうとは言わないが結果が3位ではいかんともしがたい。
 
 来季のセリーグは40歳の巨人高橋、47歳の阪神金本、41歳のDeNAラミレスと新人3監督を含めて全員が40代の清新な監督が采配を振るう。実力は未知数だが「前例」に捉われない「野球改革」を行えばセ・パの実力差は一気に詰まるかも知れない。クリーンナップがチャンスにベンチを窺うような「データ野球」でなく思いっきりバットを振り回す「面白い野球」が見たい、とファンは切に願っている。
 
 それにしてもプロ野球選手は恵まれている。 
 
 
 

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