2020年5月18日月曜日

競馬の勝ち方、愉しみ方

 非常事態宣言が「解除」されましたがほんとうは「緩和」なのです。それを言葉の選択を誤って解除」などというから事態は思わぬ方向に進展してしまうのです。今の政治家がいかに「言葉」に鈍感なのかがこの辺にも表れています。こんな政治家に今以上に「権力の集中」を行えば結果は火を見るよりも明らかです。
 
 では本日の本題に。
 競馬をはじめて57年目にやっと分かったことがあります。なぜそんな正確に年数を数えられるのかといえば、学校をでて社会人になったその年の四月にはじめて東京競馬場へ行ったからです。ちょうどシンザンがダービー馬になった年で第一次競馬ブームのころでした。それまでは麻雀くらいしか賭けごとをしたことはなく、競馬競輪などというものは「博打」そのものだから素人の手を出すものではないと固く思っていたのが、就職した広告会社の寮が国分寺にあって大阪採用の大卒男性約十人が研修期間中その寮に押し込められたことで競馬へのみちが開かれたのです。寮生のなかに京大出のワルがふたりいて、一浪と二浪の彼らは現役卒のウブな私にとってはおっさんそのもののオトナにみえ彼らの誘いを断ることはとてもできず、国分寺の二駅先の東京競馬場に休日の日曜日出かけました。その日は数レースして馬券は当らなかったのですが、以来57年間その魅力にはまって今日に至っているわけです。
 当時の広告会社は興隆期にさしかかっており定期採用、中途採用を問わず京大東大卒を大量採用していました。配属された人事局は局長をはじめ部長、課長、二年先輩のリーダー格までみな東大出身者で占められていました。しばらく同じ職場で仕事をして東大卒の先輩の頭の良さが尋常一様でないことを知りました。京大の頭の良さとは別次元の、異常な記憶力の良さが際立って何度驚かされたか知れません。しかしそれと、仕事ができるかどうかは別物で、中途採用でかき集められて各部署の中間管理職に据えられていた東大京大出の先輩方の評価は決して高いものではありませんでした。国家公務員や大企業の管理部門で活躍されていたにちがいない彼らですが、広告会社という時代の先端を走っていた新しい産業の新しい仕事には即さなかったようです。それが証拠に仕事の関係で付き合いのあった経済企画庁や厚生省の東大出の若い役人は素晴らしい仕事をしていましたから能力に向き不向きがあるということなのでしょう。それとは反対に立教や成蹊大(東京に行くまでは名前すら知りませんでしたが安倍首相の出身校ということで有名になったかもしれません)出身の後輩に秀れた人を見ました。立教の男は才人で成蹊の後輩は発想が実にユニークでした。そんなことがあって世間で言われているほど学校格差はない、それぞれ向き不向きがあって環境に恵まれると思わぬ才能や能力が発揮されるものだ、という「人の見方」が身に付きその後の人生にとても良い影響があったように思っています。出会った人を先入観で判断しない接し方はこの経験が元になっています。
 
 随分余談が長くなってしまいました。本題に戻りましょう。気づいたのは何かといえば、「勝馬検討」と「馬券検討」をごちゃ交ぜにしていたということです。「やっぱりアイツが来たか。そうだと思っていたのになぁ」という嘆きをよく耳にしますし私も何度も口惜しい思いをしてきました。これは勝馬検討では正しい推論――予想をしていたのに馬券を決める際にチョイスする馬を誤ったのです。何といってもお金に限りがありますし配当も気に懸かります。今でこそ3連単100点張りなど珍しいことではなくなってきましたが(それでも1点100円なら1万円ですから)枠連しかなかったころはせいぜい7点ばり8点ばりくらいに絞らざるを得なかったから、勝馬検討で6頭~8頭を選び出せてもそれを馬券に結び付けることは至難の技になるのです。そこに馬券検討の難しさがあります。
 
 馬券予想にはいくつかの方式があり評論家別に方式を選び出すと、まず「大川方式」があげられます。大川慶次郎はオーソドックスな勝馬検討で「パーフェクト予想(全レース的中)」を4度達成した「競馬の神様」と呼ばれた人で、成績、血統、騎手、調教などを総合的に分析する基本的な検討方法です。競馬ファンなら多かれ少なかれ大川方式を採用しているはずです。
 最近ではほとんどの重賞レースで各紙が特集を組む「データ分析」を最初に考案したのが赤木駿介です。1960年代後半に「赤木駿介 重賞レースの傾向と対策」として名声を馳せました。初めて彼の理論に接したときの新鮮な驚きは今も忘れません。これを習熟すればどんな重賞でも獲れそうな気になったのですから愚か者だったのです。
 競馬を文学的に楽しんだのが虫明亜呂無です。もともと競馬は菊池寛や吉屋信子など文人が馬を持ってサロンを形成していましたし、寺山修司、山口瞳などもシンザン時代のマスコミに競馬をテーマに随筆や小説を書いていました。しかし専門紙や一般スポーツ紙に毎週予想を絡ませたコラムを書いた最初の人は多分彼だったでしょう。今も「心情馬券」を買う人は多いと思いますがこの系統の馬券の買い方のひとつです。(虫明は1レース200円の複勝馬券1枚でレースを楽しんだと伝わっています)
 今年のGⅠや重賞に見られる傾向を方式として編み出したのが宮城昌康の「AB―XY方式」です。1番人気馬2番人気馬にブービー人気馬と次に人気のない馬を絡ませて馬券を決定する方式で、XYは必ずしも最低から2番人気3番人気に限る必要はなく、低人気の出走馬を1~2(3)番人気と組み合わせてもいいので、例えばNHKマイルCは1番人気と9番人気、天皇賞は1番人気と11番人気、福島牝馬Sは3番人気と13番人気の組み合わせですから、この方式を上手に使えば穴レースが多いですから5レースに1回、いや10レースに1回でも当たれば「モト」は取れます。
 少し前に亡くなった大橋巨泉の方式は季節別条件別の穴レース発見法で、例えば3才未勝利の夏直前のレースは大荒れと分析していました。3才未勝利戦は2才新馬レースがはじまるころにはレースが無くなりますから関係者は必死で勝ちにかかります、それまでのレース実績とかけ離れたレースをする馬が出てくるというわけです。最近の例では4月25日に3歳未勝利で2回、3歳1勝クラスで1回単勝万馬券が、それらを含めて3連単百万円馬券が4回も出ました。
 最後に最近は騎手で決まるレースが多いということです。NHKマイルも終わってみれば〈デムーロ→ルメール→福永〉で決まりました。外人騎手が有力馬に騎乗したらそれから外人と日本人有力騎手に――川田、武豊、福永に池添か岩田を絡ませておけばGⅠかGⅡの5レースに1回は当り馬券を手にすることができるはずです。
 
 では競馬に『必勝法』はあるのか?あると思いますよ、しかも誰にでも。
 これまで馬券を取ったレースを思い出してみてください、何か傾向はありませんか。牝馬の重賞は勝っているとか、GⅠの特定のレースでよく的中しているとか、必ず自分の得意とするレースがあるものです。ところがそれに気づかずにあれもこれも手を出すからトータル目も当てられないマイナスを出してしまうわけで、自分の得意レースを見出してそのレースを「勝負レース」にしてその他のレースはほどほどにしておけば年間に5、6回も当たれば勝つまでは無理でも負けを少なくすることは決して不可能ではありません。
 
 要するに自分の『勝馬検討法』に向いたレースを見つけるのが『必勝法』です。自分の歴史を見つめなおしておおいに競馬を「愉しんで」下さい。
 
 
 

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