2021年11月8日月曜日

不安の時代

  風邪をひいてしまいました。ここ数年、風邪気味になっても早めの葛根湯と体力で医者にかかることもなく乗り越えてきたのですが今回は微熱、鼻水としつこい咳に悩まされてお医者さんの世話になり結局スッキリ全快するのに十日余り費やす体たらくでした。原因は分かっているのです。薄着で自転車に乗って買い物に出かけて、寒気を感じたのですが上着を取りに帰らずそのまま走り続けたのが悪かったのです。去年まではこの季節同じ服装で過ごしていたので大丈夫と高をくくった報いです。八十才という老いの曲がり角という自覚と用心を怠ったのが禍したのです。

 悪いことは重なるものでめったに寝込んだことのない妻までが目まいと吐き気が酷く食事も取れない状態に陥ってまるまる一日寝込んでしまったのです。以前軽いメニエルという診断を受けていたのをここ五六年事なきを得たので安心していたのですがやはり八十才ちかくなって体力が衰えたのか、急な冷え込みもあって再発したのでしょう。

 私は寝込むほどでなかったので簡単な家事はでき支障なく生活は営めたのですが、考えてみれば八十才ともうすぐ八十になる妻の老夫婦二人暮らしですからこんなこと――老いたふたりが寝込んでしまって食事の用意もできない事態になる可能性は決して少なくないと考えて当然なのです。これまで恙無く健康で来られたのが例外なのであって、どこかが悪くて医者通いしている夫婦が普通といってもいいかもしれないのです。そう考えると不安になって近くの「地域包括支援センター」へ相談に行くことにしました。

 

 夫婦二人が寝込んでしまって食事の用意もできない、そんなとき一日二日身の回りの世話や食事の用意程度をヘルパーさんにお世話してもらうことは出来ないのか。そんな相談を応対に出てくれたセンター長さんにしたのですが結果は「ノー」でした。介護保険の適用を受けるためには申請を出して審査を経て最低でも「要支援1級」に認定されないと適用対象と認められないのです。われわれ夫婦のように障害も持病もなく生活に不都合のない場合は「要支援」となることは無いのが現実なのです。食事については「高齢者配食サービス」があって申し込み翌日からはサービスが受けられるシステムがあるようです。

 結局介護保険を利用することのないように日頃から運動、食事、睡眠に心配りして健康にはげみ、病や障害で生活に不便を来している老人に「乏しい介護資源」が投入できるように高齢者同士が努めることがのぞましいのです。このセンターでは8人のスタッフで地域の6000人の高齢者に対応しているそうで、今回の私の場合などは「身内と地域」で対処するしかないのが現状なのです。「遠くの身内より近くの友人」を心がけて日頃から老人クラブなどへ参加することが望ましいと助言されました。

 私たち夫婦は老いこまず誰の世話にもならず健康に自立して生活したいと努力してきましたから、老人クラブなど思いもしなかったのですがこうなるとそんな「意地」がかえって逆効果だったようです。でも運動、食事、睡眠に注意して健康で充実した生活を享受したい、この「意地」はなんとか通したい。不安を感じながらもまだ強がってみるのです。

 

 不安といえば数日前、山科で長男の就職を心配して訪れた両親をその長男が刃物で刺し殺した事件がありました。60才半ばの親を40才手前の息子が殺したのですがこれも「8050問題」のひとつなのでしょうか。高齢の親が中高年の子どもを支える8050問題は非正規雇用の拡大と就職氷河期問題が重なって緊急を要する問題になっています。この親子がそうなのかどうかはまだ明らかになっていませんが似たような構図であるのはまちがいないでしょう。親が仕事を離れて年金生活に入っても子どもに定職がなく親の年金頼りで生活しなければならない、そんなケースが社会問題化するほど深刻になっているのです。なかには「引き籠り」という場合もあるようで問題は複雑です。

 

 さらにコロナ禍で働く女性の「自殺が3割増加」したという報道もあります。コロナで雇止めやアルバイトの時間が減少して所得が大幅にダウンして生活困窮に陥るという事情があるのです。「2021年版自殺対策白書」の伝えるところでは、男性は11年連続減少していますが女性は千人近く増加しているようです。非正規雇用の女性だけでなく学生も増加しているのはコロナで対面授業がなくなって友達ができず孤立して、両親の仕送りも途絶えて学業を続けられなくなったりしても相談もできず自殺にはしったのでしょうか。

 

 20年以上不景気が続いていたのがコロナ禍でなお一層景気が悪くなった現状を回復させるのは至難の技です。しかしここで考えるべきは、不景気の大元である消費を本格的に増加させるには小手先の現金給付だけでなく、安定して将来見通しがつけられるような経済状態に多くの国民がなるような施策を講じる必要があります。食費などの最低限の生活資金は不景気でも費消されるでしょうが、住宅や自動車、大型の耐久消費財の購入は「安定した将来所得」がなければ購入されないことは経済学の基本です。政権担当者も当然既知の常識のはずです。しかし安倍・菅の自民党一極支配政権はそこに手を打たず「自助・共助・公助」を声高に言い募りました。そして、また、今度の選挙です。

 

 得票率48%、投票率55.9%、有権者の25%の支持で絶対安定多数の261人を自民党は獲得したのです。公明の32人を加えれば自公政権は好き放題できる状況になります。非正規雇用活用の『国民不安の時代』は依然としてつづくのです。ということは「デフレ脱却」も「600兆円GDP」の実現も遠のくことは目に見えています。

 

 「小選挙区比例代表制」がつづく限り『不安の時代』を覚悟せざるをえないのです。

 

 

 

 

 

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