2022年2月21日月曜日

220兆円あれば今すぐ世界は平和になる

  ウクライナといえば「ヨーロッパの穀倉地帯。ソ連への穀物補給の重要地域。ロシアとは歴史的に深いつながりがある」、中学校の世界史教科書にそう書いてあったように覚えています。1950年代の教科書ですからその後冷戦が終結して旧ソ連領の多くが国民国家として独立しNATOに加入した、そう思っていましたから今になってロシアとNATO加入について紛争が起こっていると知って自分の勉強不足に恥じ入っています。

 NATOというのは「北大西洋条約機構」と訳されますがそれでは何がなんだかその実体が分からなくなって、ヨーロッパ諸国のうちの民主主義国家の経済的協力機関で軍事的な連携も保った組織でもあるかのように認識している人も多いかもしれませんが、れっきとした『軍事同盟』です。軍事同盟というからには「仮想敵国」が想定されているわけでNATO発足当時は紛れもなくそれは「ソ連」でした。その共産勢力の中核的存在であったソビエト社会主義共和国連邦が解体したにもかかわらずNATOが存続したことが不思議ですが、そしてそれを普通に受け入れていたのは、NATOが軍事同盟であることに「知らないフリ」をしていたからでしょう。

 ロシアとウクライナは歴史的に深いつながりがあり、ついたり離れたりがありましたがそれだけに両国とも親ロシア(ウクライナ)派も反ウクライナ(ロシア)派も混在しているにちがいありません。しかし「離反」「対立」は避けたいのが本音でしょう。ただし「プーチンのロシア」は嫌だ!というウクライナ人は相当多いかもしれません。今のゼレンスキー・ウクライナ大統領はポピュリストといわれていますから国民のうちにある「反プーチン」の高まりをついて「NATO参加」に踏み切る可能性はあるかもしれません。その辺の{危うさ」を懸念してプーチン氏は強硬手段に訴えようという「素振り」を装っている、いや実態はそんな生半可な悠長なものではなく緊迫していると捉えるのが「世界政治の常識」であり、世界はその方向に強く傾いているようです。

 

 世界には現在も10近い軍事同盟があります。旧ソ連のワルシャワ条約機構も形を変えて存続していますがNATOほど加盟国は多くありませんしその存在感もワルシャワ条約機構ほどではありません。そんな状況でロシアを仮想敵国と想定しているNATOにウクライナが参加するとなればロシアは穏やかでないでしょう。旧ソ連の同盟国であった国がいくつもNATOに加盟していますが、そしてロシアもそれを許容してきましたがウクライナの加盟はロシアの許容範囲を越えているのです。両国の国民感情も微妙なバランスに揺れているのでしょう。そんな複雑で微妙な問題を他国が自国の利害関係から介入することにプーチン・ロシアが反発するのにも一片の理屈を認めるという考え方もあり得ます。

 とにかくNATOは「対ロシア軍事同盟」なのです。

 

 冷戦解消後一挙に増加した自由主義陣営が21世紀に入って徐々に減少し2020年にはほぼ均衡(自由陣営92ヶ国対反自由陣営87ヶ国)する事態に至っています。勢力が均衡しているということは対立も激化する可能性が高まるということで2021年の世界の軍事費は220兆円(1兆9200億ドル)にも膨脹しています。一方世界の武器貿易額は1兆円(950億ドル2017年)という統計もあります。

 軍事費(2020年)の世界1位は米国で7780億ドル(約87兆円、世界の39%)、2位が中国で2520億ドル(13%)以下インド、ロシア、イギリスとつづいて日本は9位491億ドル(2.5%)、韓国は10位457億ドル(2.3%)となっています。

 武器輸出額は1位米国93.7億ドル(約1兆円、世界の37%)、2位ロシア32億ドル、3位フランス20億ドル(8.2%)以下ドイツ、中国、英国、とつづいて韓国は9位(2.7%)です。

 また世界の武器製造や軍事関連サービスの世界上位100社の2017年の売上高総額は約4000億ドル(約44兆円)と発表されています(勿論アメリカのロッキード社がナンバーワンでアメリカ企業で2255億ドル6割り近くを占めています)。

 

 カントは18世紀中頃、世界は戦争状態が通常であり平和は一時的な「休戦状態」に過ぎないと喝破しました。それ故「世界平和」は世界人類が究極の目標として絶えず「創り上げていくもの」であらねばならない、とある種の諦念の思いを込めて提言しています。それから300年近く経って、2回の世界大戦――無差別の全面戦争を経験したにもかかわらず、規模においても破壊力――殺人能力においても最悪の事態になっています。

 

 アメリカという国はほんの数年前まで「世界の警察国家」を自認して、自由と民主主義の盟主として君臨してきました。それでありながら世界最大の『死の商人』であり、アメリカの意に添わぬ国を「仮想敵国」に仕立てて世界最大の「常備軍」を保有しているのです。こんな裏表のある矛盾に満ちた国家を「世界の指導者」としていていいのでしょうか。制限のない競争をほしいままにして資本主義の蹂躙を許して世界中を「格差と分断」の状況に追い込んでもいます。

 われわれ自由主義陣営に属する国々の市民は、中国を、ロシアをそして専制主義的な権力が支配している国々を「世界平和」の『攪乱者』として一方的に『反平和勢力』と糾弾してきました。しかし、われわれ自由陣営は平和的に振舞ってきたでしょうか。アメリカという国は本当に信じていいのでしょうか。

 

 220兆円の軍事費1年分を世界の貧困対策に投入すれば明日にでも飢餓がなくなる可能性は100%あるといっていいはずです。戦争の究極の目的が世界制覇であり世界という「自国領土」の「無戦争状態」の『支配』であるとするなら、それは「暴力」による一時的な「世界平和」の達成に他ならないでしょう。そうであるなら考え方を180°転回して220兆円の軍事費の貧困対策という絵空事も決して「夢物語」ではないかもしれません。ただしカントは暴力による世界国家の実現よりも敵対する国家の並立状態の方がまだ望ましいと言っているのですが。

 

 いずれにしてもアメリカという国を無条件に信じて「盲従」していくことは決して賢明な策ではないことにそろそろ気づくべき時期になっています。

 

 

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