2023年4月10日月曜日

認知症は生活習慣病である

  最近「年寄り(の)半日仕事」ということわざを知りました。年寄りは朝から晩まで働くと、病気になったり疲れすぎたりするので、半日仕事をやってあとはゆっくり休むという意味です。。そんな無理をしない仕事の配分が年寄りらしい仕事のやり方で健康で長生きできるというのです。実際私も先日嵐山散策したとき1日で16000歩も歩いて翌日足腰に痛みが出て苦しい目にあいました、今の私の限界は1日12000歩までなのです。 

 もうひとつ「人生僅か五十年、うまくいってもまた十年」というのもありました。これは戦前のことわざでしょう。当時の男性の平均寿命は50才もなかったのです。戦後も1947年(昭和22年)はまだ50.06才でした(女性は53.96才)、60才を超したのは1951年で60.08才(女性64.90才)に、現在では男性81.47才女性87.57才(2022年現在)になり「人生百年時代」とさえ言われる時代になったのです。誠に喜ばしいのですが手放しで喜んでばかりはいられません。

 

 認知症です。「日本における認知症の高齢人口の将来推計に関する研究」によると、65才以上の認知症患者数は2020年に約602万人、2025年には675万人(有病率18.5%)と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。この研究の2060年の患者数は850万人(有病率が一定の場合)から最大1154万人(各年齢での有病率が上昇する場合)という予測になっています。

 認知症とは、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し日常生活全般に支障が出てくる状態です。当然のことながら認知症患者の増加は介護保険制度に重大な影響があり、放置すれば保険の財源と介護現場の労働力の不足を招きます。これは「2025年問題」「2035年問題」として問題視されていて、2025年には約32万人、2040年には約69万人の介護職を追加確保する必要があるとされていますが、現在でさえ7割近い介護施設が慢性的な職員不足を感じており、そのうち実に9割が「採用困難」と答えています(公共財団法人介護労働安定センター調査)。こうした現状を踏まえて各方面で対策が考えられているのですが認知症の位置づけがあいまいでこのままでは増加を抑制することはほとんど不可能に近い危機的状況にあります。

 

 認知症は高血圧症などと同じように「生活習慣病」と位置づけ高齢者の健康診断項目に追加して「早期発見、早期治療」を制度化する必要があります。

 現状の認知症の治療経路をみると、症状が現れてから検査・診断・治療が行なわれています。本人が自覚して自ら受診というケースはあまりなく、周囲の人――家族や友人などが気づいて本人に受診を促す場合がほとんどで、しかも本人に受診を説得することが非常に困難だといいます。それは受診が本人の任意にまかされているからでこれでは手遅れになる可能性が極めて高く結果的に症状がかなり進んでからの治療になって高度な介護が必要になってくるのです。

 

 高齢化すれば血管にゴミが溜まって高血圧になるように、脳にゴミが蓄積して認知症になる可能性は相当あるはずです。実際アミロイドベータやレビー小体というゴミが脳に蓄積して発症する割合は相当高いとされています。齢を取って運動不足になって血管にゴミが溜まるならリタイアして頭を使わなくなれば脳にゴミが蓄積する可能性は十分考えられます。仕事のこと、家庭(経済)のこと、子どもの養育と受験のこと、人間関係、健康など在職中には多くのことに頭を使っていました、それがリタイアすればほとんど考えなくなってせいぜい健康と夫婦関係、趣味と遊び程度になるのですから脳の運動量は激減して当然なのです。高血圧が健康診断で検査されるなら認知症も同じであってもいいのではないでしょうか。

 高齢になれば体重測定、検温、血圧測定などを定期的に行って自己管理する、ストレッチ、体操、ウォーキング、ジョギングなどで体力向上に努める、これは常識です。しかし認知症に関しては「バランスの良い食生活、ストレスを溜めない、よく運動をする、生き甲斐をもつ」などといった漠然とした対策や「病気や障害の予防や治療に努める、寝たきりにならないよう心掛ける」といった注意事項が提案されるだけに止まっているのが現在の予防方法や対策です。

 大体「予防・検査・診断・治療・予後」といった標準的な医療体制が認知症では確立できていないのです。

 

 最大のネックは「本格的な治療薬」がまだ発明されていないことです。徐々に脱落する神経細胞を再生したり神経細胞が死んでしまうのを防ぐ薬がないのです。現在アルツハイマー病で4種類、レビー小体型認知症で1種類認可されていますがどれも病状の進行を遅くする程度の効果しかありません。検査方法は〈身体検査〉〈神経心理検査〉〈脳画像検査〉の3種類があり、萎縮度や血流の低下を見る画像検査の進展が期待されます。いずれにしても発展途上で決め手に欠けるのが現状です。

 

 こんな状況では、医学的な効果が余り見込めない対策に取り組むのは難しいかも知れませんがメタボリックシンドローム特定健診に160億円の予算が付くのなら、認知症を高齢者健康診査に加えるなど造作もないことでしょう(現在の認知症関連予算としては〈認知症施策の総合的な取組〉として22億円が計上されています)。わが国のお役所仕事の特徴としてトップダウンで施策が決められたらそれなりの体裁を整えることは極めて上手なお役人がそろっていますからある程度の〈予防・検査・診断・治療〉体制はできるはずです。とにかく認知症を〈早期発見・早期治療〉の体制に制度として確立することが大事なのです。そのうえでコロナワクチン国産化に2500億円を投じたのですから(結果は出ませんでした)認知症治療薬の開発にそれなりの予算を付ければ開発が加速する可能性は決して少なくありません。

 

 高齢化と認知症患者の増加は明かになっているのですから、そしてそれに伴う予算の増大と介護労働力の不足もデータとして提示されているのですから手を拱いていることは許されません。長年世話になっていた理髪店が8月に店を閉めることになりました、店主(女性なのですが)が認知症のお母さんの介護をするためです。今のままの認知症対策ではこんな例が日本中で増えていくことでしょう。

 

 島津製作所の田中さん、「脳圧計」を発明してください。町のクリニックにいってヘルメット型(?)の検査キットをかぶれば即座に認知症の具合が検査できる。これは大発明です、世界中の高齢者が喜びます。是非お願いします。

 

 

 

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