2025年2月10日月曜日

労働組合は時代おくれか

  毎週土曜日近くのコンビニで毎日新聞を買うことにしています。一度遅くなって売れ切れていたことがあったので以来一部取り置いてもらっています。こだわりは「毎日の書評」で新刊書の評価が適切で小説、専門書にかかわらず評者の論調から選択してアテが外れたことはありません。書評だけでおおよその内容が理解できることもあって重宝しています。

 コンビニの経営者は40才前後の小柄な実直な感じの男性で愛想もよく顔を見ただけで新聞を奥から取り出してくれるのはうれしいものです。この近辺の土地持ちの元農家の孫らしくおとなしそうな働き振りを見ているとコンビニという業態はなんと「巧み」なシステムかと感心せずにはいられません。資本(大型も含めて8台の駐車場込みの土地と建物)と労働力を「支配下」において高いFC(フライチャンズ)料まで徴収しておきながら、不採算と判断すればFC権が剥奪されて廃業せざるをえないのですからなんともFC親会社にとって都合のいいシステムではありませんか。もちろん商品開発から経営ノウハウまで質の高い「経営体」の提供を受けるのだからウインウインの関係なのでしょうが少し見方を変えると「収奪・搾取」という側面が浮かんできます。「個人経営者」(会社組織を取るものもあるかもしれませんが)ですから「労働基準法」の保護はありませんし社会保険もすべて自分持ちです。それを十分おぎなって余りある利益の上がる店も少なくないのでしょうがここ数年の「本部対FC」の争議をみているとこの業態も「人手不足」を背景に曲がり角に差し掛かっているような印象を受けます。国道沿いのこの店(セブンイレブン)の半径500m(~1km)に道を挟んだ真向いのファミリーマートを含めてファミマ2店、ローソン1店セブンイレブン3店とコンビニ激戦地なのですが廃業した店は一店もありませんからコンビニがすぐれた業態であることはまちがいないのでしょう。

 

 コンビニもそうですがアメリカ発の商売に労働者を「個人事業者」化して低賃金で働かせて社会保険も負担しないという業態が多いように思います。たとえば「ウーバータクシー」「ウーバーイーツ」などです。しかもマスコミをはじめとして世間が「新しい働き方」として歓迎、有難がるのです。好きなときに働いて自分の生活を楽しむ、そんなうたい文句で一部の若者を誘惑するように感じるのですがどうなのでしょう。働き方といえば求人情報、アルバイト情報、転職情報の氾濫は一見職業の流動化が促進されて働く者に有利なように感じるかもしれませんが、実際は転職して前職より給料、待遇が改善されたデータはないのです。特に疑問なのは「すき間アルバイト」で中には履歴書も不要というのもあってもし事故、事件があった場合の責任はどうなるのか疑問だらけの就職状況になっています。

 

 京都でも四条などの繁華街は外人のコンビニ店員さんが多いのですが東京(横浜)はもうずっと以前からそうなっています。人手不足は首都圏ではとっくに緊迫しているのです。従って「安い人件費」をベースにした業態は深刻な存続危機を迎えています。宅配、運輸、ファミレスなどの飲食関係サービス業そしてコンビニも。ここに保育、看護職も加えれば低賃金に抑えられている職業はおしなべて人手不足が深刻化しているのです。問題にしたいのは市バスの運転手さんまでなり手不足で路線の縮小廃止が現実化していることです。高齢化はますます進展するでしょうし敬老乗車券は高額化、そのうえバスも不便になるのでは年寄りの買い物や病院通いはどうなるのでしょう。

 

 フジテレビ問題が浮き彫りにしたのは「労働者の未組織」の危うさです。この問題が起こるまでの組合員は80人ほどだったのがこの問題が表面化して一挙に500人超に増加したといいます。そして日枝相談役の独裁を糾弾、退陣を要求する動きを見せたのです。しかし以前からフジテレビ(と関連会社)は日枝相談役をはじめとして70歳代超の高齢男性が経営陣を独占していました。多様性・透明性・柔軟性をこれからの企業経営の要諦と番組では啓蒙しておきながら、放送会社自体は正反対の経営を行ってきたのですから事態は深刻です。しかも経営に問題があるのを自覚しておきながら「自分ごと」として取り組む従業員は1200人のうちのたった80人の労働組合員に過ぎなかったのですから、そして文春に「上納問題」をアバカレて、社会問題化してはじめて労働組合に逃げ込んで「身分保障」を武装しておっとり刀で問題に対処しようというのですからあまりにも「労働者意識」が希薄すぎます。彼ら彼女らは「労働者」ではないと考えていたのでしょうか。労働者というのは製造業の現場に勤務する学歴の高くない人たちのことで、高学歴で「知識労働」に携わるマスコミ人は労働者ではないとでも認識していたのでしょうか。もしそうならなんという浅学な勘違いでしょうか。それがマスコミ人の正体だとしたらわが国のジャーナリズムの質的劣化は極まっているのではないでしょうか。

 冷戦が終わってマルキシズムが退潮して資本家と労働者階級という階級構造は解消したかのように、従って労働組合は時代おくれのもののように勘ちがいした人が多かったのか組合の組織率は低下の一途をたどりました。最盛期には60%近かった組織率は高度成長とともに30%台にまで低下、それが現在では16%に低迷しているのは資本主義の理解が皮相で現実との向き合い方が真剣でないからではないでしょうか。今国家問題にまでなっているUSスチールでも組合の力は無視できないものがありますし映画の現場では職能組合が強力で残業などとてもできない状況だといいます。ドイツでは「労使共同決定方式」という経営システムを模索しているといいます。「株主主権説」だけが資本主義の主流ではないのです。

 

 トランプ大統領の就任式で彼にすり寄るGAFAMをみていて彼らはジャーナリストではないと確信しました。それにもかかわらず今ほどジャーナリズムの必要とされている時代はないのです。

 日本のジャーナリズムの健全なる進化を期待します。

 

 

 

 

 

 

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