2010年3月8日月曜日

テレビの凋落

 チリ地震による津波警報発令に伴う避難率が極めて低いことが問題になっている。青森県の場合大津波警報による避難者は避難指示・勧告対象者約6万6千人に対して実際の避難者が約3千人の5%未満に止まっている。全国の平均は6%前後のようだったが憂うべきは津波警報が発令されている海浜に見物に出かけたりサーフィンをする人がいたことだ。批判に応えて予測が過大だったと気象庁が謝罪したが、原因は予測の精度以外のところにもあるように思う。

 テレビというメディアに対する我々の信用度合いが極端に低下していることが大きく影響しているのではないか。芸能とスポーツから始まった情報トーク番組みが政治経済にまで対象を広げ全てをショー化した。犯罪も政治も劇場化し、政治家の発言が軽々しいものになってしまった。コメンテーターに多くのお笑い芸人や『隣のおじさんおばさん』的なタレントが多用されたことも手伝ってテレビが極めて卑近なものに変わってきた。インターネットの普及は情報源の多様化を齎し、テレビの一方向性が情報操作を疑わせる方向に作用した。これらの全ての相乗効果でテレビの信用度が急激に低下した。「テレビのいうてることはウソでっせ」という大阪のおばはんの捨て台詞が妙に当たり前のように感じられるようになっている。そんななかで津波警報が発令され終日テレビ画面の片隅に『警報地図』が貼り付けられ、時々に各地の情報が細切れに報じられるにつれ、心のどこかで『これもまた津波ショー』かと警戒心が急激に薄れていったのではないか。
 
 テレビはメディアとしての在り方をもう一度考え直すべきであろう。

 スノーボードの国母選手について一言付しておきたい。この件も視聴者の苦情をテレビが無批判に取り上げて騒動になってしまった典型だ。彼はオリンピックの制服をどう着こなせば自分流のおしゃれができるかを真剣に考えたと思う。その結果があのスタイルであって日本人の好きな『彼の美学』がそこにある。もしそれを否定するなら一昨年の今頃大バッシングを受けていた「奈良のせんとくん」の現状をどう説明するのか。

0 件のコメント:

コメントを投稿