2011年7月4日月曜日

仏つくって

 国難を前にして政治が機能不全に陥っている。政権交代が結果として政治制度の欠陥を浮き彫りにした形となりマスコミは政治制度改革の必要性を訴えている。強すぎる参院権限見直し、参院否決後の衆院再可決ルールの緩和、小選挙区制度の見直しなど答えはほぼ出尽くした感がある。衆参の議決が異なった場合に開く両院協議会の改革など今すぐ手を付けられるものから早急に対処すべきであろう。

 しかしいくら制度を改めても中味―政治を形成する政党が今の構成では本質的な政治状況の改善にはつながらない。6月13日付けの本コラムにも記したように現在の我国の政党は右から左までほとんどが「大きな政府」を根本的な政治信条としている。戦後55年体制が長く続き、その間マスコミは「保守と革新の激突」などの表現を繰り返してきたが―そしてそれはレトリックとしては致し方ない側面もあるのだが―実際は「保守主義政党」は存在していなかった。従って政権奪取を目指す民主党とすれば政府に集めた国民の所得の再配分先と分配方法をこれまでの自民党方式と改める以外に差異化の術はなかった。それが「子ども手当」であり「農家への個別補償制度」などの直接支給方式につながることになったのであり『民主の自民化』など自明の結果である。

 では「保守主義」とはなにか。6月13日のコラムから引用すれば「私権の制限を最小限にすることを価値判断の基準とする考え方」であり「自分の属している社会構造から他の社会構造への移行を、人間的価値の損失を最低限にとどめながら引き起こすこと」であるから結果的に「小さな政府」を標榜することになる。「金持ちの政党」であったり「古いものを大切にする政党」が保守主義政党ではない。

 ただ『政治とは、(略)要するに権力の分け前にあずかり、権力の配分関係に影響を及ぼそうとする努力である(M.ヴェーバー著「職業としての政治」より)』と考えると、保守主義は『分け前』にあずかる分野を今より大幅に削る必要に迫られるから既存の政治家には不人気であろう。そうした意味では勢力拡大に苦労するかも知れないが、今国民が求めているのは「信念を持った志の高い」政治であり政治家であるから刻苦勉励して貰いたい。

 制度改革と政党の成熟が伴って日本の政治の安定が齎される。

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