2011年10月17日月曜日

一票の格差

 和歌山県の人口が100万人を割り込んだことを知人から聞いてショックを感じている。勿論近畿でははじめてのことであり、和歌山出身の彼は口惜しそうに、そして淋しげな表情で語っていた。
 2010年現在人口が100万人を割り込んでいる府県は少ない順に鳥取の59万人を最少に島根、高知、徳島、福井、佐賀、山梨、香川に和歌山県を加えて9県ある。一方東京は1千286.8万人で 総人口1億2751万人 の10.1%、東京圏(神奈川、千葉、埼玉、栃木、群馬、茨城)の人口は4205万人33%を超えている。世界の大都市圏の人口集中度で東京圏は群を抜いており他の国ではせいぜい20%少々で留まっているから東京及び東京圏への人口集中が異常であることは間違いない。今回の東日本大震災は東京一極集中を真剣に考え直すべき時期を向かえていることを印象付けた。

 戦後の壊滅的状況から国を再建するために工業化を全速力で図ってきた。繊維産業などの軽工業から重化学工業化まで効率的に達成するためには都市化が必要であり膨大な労働力の調達のために『都市による農村の収奪』が必然であった。しかしバブル崩壊後の我国経済は労働力の削減によって生産性の向上が齎される「グローバル経済」特有の現象が顕著に現れており、都市への人口集中の効果は最早無くなっている。
 「国土の均衡ある発展」を標榜してきた我国政府が現状のような『歪(いびつ)状態』を放置してきたのは明らかに国家経営の誤りである。ここ数年「地方分権」が大きな政治命題として論議されているがその前提となるべき『地方経済の個性ある発展』の展望は全く提示されていない。

 最近選挙の「一票の格差」が問題視されている。2011年3月に前回2009年の衆議院選挙での「一票の格差・違憲判決」が最高裁から出されて以来その是正が当然視され、その際「都道府県にまず1議席を配分する基礎配分方式(1人別枠方式)」を廃止して人口を正確に反映させる方向に論議が進んでいるが、それでいいのだろうか。

 一票の格差が違憲になるような『国家経営』をしてはいけない、憲法14条の「法の下の平等」はそのような警告を我々に発しているのではないか。選挙制度をいじる前に『国の歪な状態』を改める方が先ではないのか。

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