2012年3月5日月曜日

追憶ナショナル・ブランド

28日パナソニックは津賀一宏専務が社長に昇格、大坪社長、中村会長はそれぞれ会長と相談役になる人事を発表した。これに先立ってテレビ事業の縮小、合併した三洋の白物家電事業の売却を決定するとともに今3月期7800億円の赤字決算になると発表している。今回の人事でパナソニックは電工、三洋とのグループ統合に目処がついたことで経営陣を刷新し、テレビ事業の建て直しと環境・エネルギー分野への事業構造転換を急ぐ姿勢を鮮明にした。
 しかしこれは表向きの事情であって、実情はグローバル展開する中で韓国等の新興勢力にテレビや白物家電の分野で太刀打ちできなかったために同分野から撤退せざるを得なかったことへの責任人事の意味合いが強い。

 今から30年前、我が家の電気製品はほとんどナショナル製品だった。「まちの小さな電器屋さん」が繁々と訪問してくれ家内の電気製品に不具合があると小まめに調整してくれるので、ひとひねりした機能を付加して「使い勝手が良く」少し価格が高いナショナル製品をついつい買ってしまうという繰り返しをしているうちナショナル・ブランドで埋め尽くされていたのだ。生家が鉄工所で「モーターの日立」「機械の東芝」という父の影響を受け松下製品は「後出しのマネ製品」という固定観念を刷り込まれていた私だったが、いつのまにかナショナル・ファンにされていた。
 その「ナショナル信仰」にカゲリが出たのは「ワープロ」がきっかけだったように思う。シャープの「書院」が全盛のなか敢えて「まちの小さな電器屋さん」の勧めでナショナルのワープロを購入した結果は見事失敗だった。丁度この頃、バブルが弾けたと記憶している。爾来長い長いデフレの時代が続いている、そして我が家からナショナルが姿を消した。成熟した電化製品の多くでメーカー間の品質差が消滅し価格だけで製品を選択することが常態化したからである。

 パナソニックに限らず日本の家電メーカーすべてがグローバル展開に失敗したのは何故か。その答えは自動車産業―とりわけ日産とスズキがいち早く始めた取り組みの中にありそうだが、長年日本経済を牽引してきた日本の家電メーカーがこのままで終わるはずが無いと強く信じている。

 最近我家に「エコナビ」のついたパナソニック冷蔵庫が入った。

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