2013年6月3日月曜日

傍目八目(25.6)

 シャープが「4K」テレビを65万円(60型)で売り出し起死回生を図るらしい。「4K」テレビというのは解像度が現在の薄型テレビ(フルハイビジョンHD)の約4倍あり画像が格段にキレイなテレビで次期主力機種であるという。しかしもしシャープ(日本の家電業界も含めて)が「4K」テレビで業績回復を願っているとしたら可能性は極めて低いと思う。薄型テレビは地デジ移行という国の電波行政の一大転換が「外圧」になったから仕方なしに、別に必要もないのに無理やり買い替えさせられた側面が強い。機器は良くなったが内容(番組)は旧態依然、というよりもむしろ面白くなくなっているから視聴時間は以前より減少している。テレビがそこにあるだけで「娯楽」になった時代はとっくに終わっている、今や情報メディアのひとつに過ぎない。見るべき番組もないのに馬鹿でかい、インテリアまがいのテレビを65万円も出して購買する「もの好き」がどれほどいるであろうか。
現在の放送体制のもとでテレビが爆発的に売れるということはほとんど考えられない。テレビを情報メディアとして根本的に見直す以外にテレビが家電の主力商品になることはないと断言する。

史上最高齢の80歳で世界最高峰のエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんの偉業を讃えて「三浦賞」を創設しようという動きが政府筋にあるらしい。高齢者の挑戦や活躍を表彰するものだというが、如何なものか。正直言ってマスコミ、特にテレビが大騒ぎするほど一般市民は熱狂していない、極めて冷静である。
この度の登頂行の報道に初めて接したとき、何と傍迷惑な!と思った。三浦氏が特別な体力と能力を持っていることは間違いない。しかし今回の登頂に関しては何十人という若い人たちの援助があってはじめて可能な事業であった。実現に向けた裏方さんを含めれば数百人の協力があったことは間違いない。三浦氏でなくても同程度の力を有した人であれば「偉業」は成し遂げられた、と感じた人は少なくないのではないか。「一将功成って万骨枯る」という古い俚諺が思い浮かぶ。
大体「年寄り」は『挑戦』などしない。人類の経験したことのない「高齢人生」にあるのだから既存の価値基準を超越したところで生き方を模索せねばならず、これまでの延長線上で高齢者を見ることがかえって「失礼になる」こともある。ましてや選挙目当ての人気取りなど以ての外である。

密教の聖典に「理趣経」という経文があり、男女の性的オルガスムによる魂の救済を説いているという。知識人はこの経典の思想を研究していたし、一般人も信仰によってこの趣旨を説かれて、その肉体的快楽を通しての真理への到達という思想に慣れ親しんでいた。
これは中村真一郎の評論集「私の古典(王朝の文学・『色好み』の変遷)」にある挿話だが、更にこんな記述もある。
「医心方」という当時の宮中で用いられていた医学概説書の「房内篇」にセックスについてこう書かれている。「中国の陰陽思想によってセックスを男が女から生命的エネルギーを吸収する行為であるとし、男は一日に十一回、それも異なる女と交わるのが、健康上、理想的とされる。(略)こうした考え方はセックスが健康管理であって、今日のスポーツに相当するのだろう」。
源氏物語などの王朝文学に表れる貴族階級の貴人の「乱交」とも思える放縦な性交渉の裏に、こんな宗教的医学的常識があったということは、新鮮な驚きである。

五月雨や 大河を前に 家二軒 (蕪村)
立て縣て 蛍這いけり 草箒  (漱石)

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