2014年10月6日月曜日

本当は8%増税では?

 増税後の消費の落ち込みが想定された範囲を超えて推移している。4-6月期の個人消費は前期比マイナス5.0%で前回増税時(1997年)のマイナス3.5%を大きく上回っている。原因の一つ重税感上げられて、外税になって本体価格に8%が掛けられるとズッシリと増税を実感するというのだ。いかにももっともらしが見落とされている現実がある。例えば298円の商品を買って8%の消費税を加算されるには、増税前298円のものは一旦298円を分解(本体価格284円+消費税14円)して本体価格284円を導きこれに〈1.08〉を掛けて306円を請求されるのがフェアな手続きである。ところが実際は、増税前内税(本体価格+5%消費税)で298円だった商品がそのまま298円の本体価格で売り出されておりこれに消費税8%を掛けた321円が請求価格になっていることが決して少なくない。これは元の(本来あるべき)本体価格284円に消費税を掛けた306円より15円く支払ったことになる。主婦たちは増税前の価格を記憶していてこうした売り手側のカラクリを知っているから今回の増税は3%の上乗せではなく8%増税された13%の消費税が課税されていると実感している。
 今回の増税前政府は中小企業―とりわけ下請け企業の増税分請求が大企業(発注企業)のゴリ押しで転嫁拒否にあわぬように「消費税円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」という長ったらしい名前の法律を作って中小企業保護努めた。これはこれで評価していい。しかし「もの言わぬ」消費者の保護には『手抜かり』があった。勿論すべての小売商品でこうしたアンフェアが行われているわけではない。しかし毎日身近に起こっているこうした事態が彼女らの全体を覆っているように感じるから「消費が萎縮」してしまうのだ
 今回の消費の落ち込みは政府や担当者が考えている以上に深刻な事態と見るべきであろう。政府は賃金の伸びを期待しているが8月の1人当たり現金給与総額が前年同月比1.4%の伸びで止まっていることを考えると8(13)%近い賃金の伸びは望むべくもなく、もしこうした現状を放置しておいて10%に増税するようなことがあれば日本経済に致命的な影響を及ぼす可能性があることを覚悟しておくべきであろう。
 
 御嶽山の噴火が戦後最大の被害をもたらした。この報道でわが国に110もの活火山がありそのうち47常時観測が必要な火山とされていることを知った。御嶽山もその一つであったにもかかわらず警戒態勢が整備されていなかったことが今回の惨事に繋がったようだ。少し前に起こった広島の土砂災害も被害地域が土砂災害危険箇所に指定されているにもかかわ警戒区域への指定が遅れていたことが大災害の原因になったと考えられている。
 広島の場合、警戒区域へ指定されると土地価格が下落することもあり住民の説得が困難なことが多いようだ。御嶽山は7合目までロープウェイが整備されいて3000M級の山であるにもかかわらず3時間程度で頂上まで登山ができ紅葉の秋には人気が高かった。前兆らしい兆候が観測されていたにもかかわらず登山者への警戒情報提供にまでは至らなかった原因はそのあたりにあるのかもしれない。
 このふたつの惨事を考えるとき、広島の場合は私有地の経済価値への悪影響、御嶽山の場合は警戒度を高めることでの観光客の減少、という経済的価値への配慮が人命尊重の措置を滞らせた側面がみてとれる。煎じ詰めれば経済的価値か人命尊重かという究極の選択に行き当たる。
 
 今思っても残念なことは、東日本大震災のとき「過酷災害特別法」のようなものがあって『私権の制限』がスムースに行えておればということがある。特に津波と原発被害の甚大であった地域を制限地域に指定し取引価格を直前価格で凍結してその全地域を国が買収できておれば復興事業はもっと迅速に進捗していたはずだ。先ごろ政府が提示した汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設の土地の買い取り価格の目安基本的に宅地と農地の場合、福島第1原発事故がなかったと仮定して現在の土地の値段の5割、つまり100万円の土地なら50万円で国が買い上げるというもの)など地権者の足元を見透かした理不尽なものでおよそ納得できるものではない。津波と原発被害で価値がゼロになった土地を震災前の価格の5割で買ってやろう、という論理は「津波による被害は対象外」と言っているようなものだ。こうした形でしか私権の制限を打ち出せないのは、私権の制限についての根本的な討議がなおざりにされてきたからに他ならない。
 
 私権を絶対的なものとして神格化し、地球温暖化によって自然災害が激甚化する時代に対応不能なまま放置することの不合理さとどう向き合うか、真剣に考えるべき時期に来ている。

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