選挙が終って「自民圧勝!」という文字が躍っている。しかしこれは余りに皮相な見方である。「自民マイナス4、公明プラス4」「共産プラス13大幅増」「沖縄自民全敗」の意味するところは大きい。
自公でプラス・マイナス4、の意味は「自民の暴走に歯止めをかけられるのは野党ではなく、連立を組む公明しかない」というところにある。集団的自衛権や特定秘密保護法など自民の『偏向』は多くの国民の危惧するところである。本来なら今回の選挙で自民に強く反省を促さねばならないところだが、現状の野党でそれを託するに足る存在は認められない。その苦肉の策が「公明プラス4」である。安倍首相は今回の選挙で自民単独で絶対的安定多数が取れれば公明との連立を解消したいという下心がミエミエであった。しかしこの結果では選挙前よりよけい公明に頼らざるを得ない状況に追い込まれた。実に『賢明な選択』であった。
共産プラス13、は国民の『苦渋の選択』である。「反自民」の受け皿がない今回の選挙。アベノミクスの負の面が相当明らかになってきたうえ集団的自衛権などの憲法改革志向が強い自民党内右傾集団がこれ以上勢力を持つことは戦後民主主義の否定に繋がるという危機感を持っている国民は決して少数派ではない。しかしこれだけ「重いテーマ」を党として取り組むだけの成熟した野党は残念ながら今は無い。そこで政権与党になる可能性は極めて低い、されど最も戦後民主主義を擁護する共産党に今回は『一時』託そう、そう考えた人が相当多かったのである。だから野党が今後4年間で集約を進め政権党としての体裁を整えることができれば次回の選挙で共産党が勢力維持する可能性は極めて低いだろう。しかし「共産党の躍進」は不勉強な野党にはある種の「恐怖」をを覚えさせたに相違ない。
沖縄で自民全敗、の結果は自民党だけでなく又政党だけの問題としてではなく国民全員が「安全保障と基地の問題」を根本的に考え直す契機にしなければならないことを示唆している。東アジアと東・南シナ海の緊張にどのように取り組んでいくか、中韓ロだけでなく東アジア、東南アジア諸国連合を含めた広いアジア諸国と現状打破に関して「賢明な選択」をしなければならない今、従来の日米安全保障体制のみに拠りかかった固定的な安全保障の考え方ではとても乗り切ることはできない。もし選択を誤れば基地・沖縄は攻撃目標になる可能性も否定できないのだから、この選挙結果は「積極的な現状変更」を求めるものとして重く受け取める必要がある。沖縄の選択に日本国民としてどう向き合っていくか。沖縄市民の突きつけた意思表示は深刻である。
こう考えてくると「自民圧勝!」などと簡単に論評できる結果でないことは明らかで、未成熟な政治状況の中で国民は『極めて賢明な選択』を行ったことに気づくべきである。
さて「投票率」についてである。戦後最低の52.6%で「民主主義の危機」とマスコミは国民の覚醒を促している。しかし最も反省すべきは「政党」と「マスコミ」ではないのか。政権交替で政治の転換を容易に行える「小選挙区制」を実現したにもかかわらずそれに対応する政党(自民党を含めて)が『成熟』していない現状は国民から『選択肢』を剥奪し結果として『白紙委任』させてしまった。その責任が国民にあることは言うまでもないが、それ以上に国民と政党を媒介して「政治の成熟」を導く機能を担う『マスコミの怠慢』こそ最も糾弾されるべきであり、首相不在の中で「官邸主導」の選挙モードを誘導したのはマスコミであったし、『大義なし』と喧伝して政党―とりわけ政権与党から「説明責任と明確な選択肢の提示」を引き出せなかったのもマスコミである。これからの4年間、漂流する野党に「再編と成熟」を促す重要な責任をマスコミが負担することを自覚して欲しい。
一方で現在検察が捜査中の「小渕優子」氏が圧倒的多数で当選するような「古いムラ社会」の形骸を一日も早く一掃する「選挙の近代化」も進められなければならない。都市では「地盤、看板、カバン」から解放された「無党派層」が選挙結果を左右する勢力になっている。地方でも選挙年齢の若年化に伴って「無党化」が進展するに違いない。そしてそれは一時的に「投票率の低下」に繋がるかもしれないがしかしそれは「望ましい選挙」へ進展するための過程として捉えるべきで悲観する必要はない。
今回の選挙は国民の『絶妙で賢明』な選択であったと思う。
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