2014年12月1日月曜日

生活者の景気感

 今年7~9月のGDPが4~6月のマイナス7.6%(年率)に続いてマイナス1.6%(年率)と2期連続マイナスになったために、消費税10%増税を来年10月から17年4月実施に18ヶ月先延ばしする政治判断を首相が行いそれに伴って衆議院を解散することになった。経済の専門家や政治家の多くは7~9月はプラスに、それも2%近いプラスになると予想していただけにショックは大きいとマスコミは伝えている。しかしこの専門家筋の予想にはいささか違和感を覚える。
 
 素朴なことだが発表になるGDPの成長率は3ヶ月毎の前3ヶ月分に対する増減率でありこれまでは3ヶ月の増減率の形で発表されるのが通常であって年率が表立って発表されることはまれであった。それが今回マスコミが主に年率で発表したのは何か意図があったのだろうか。単純に年率は3ヶ月の数字の4倍からマイナスのショック大げさに伝わるそのあたりに発表側(政府筋)の狙いがあったのだろうか。
 今年になってからのGDP成長率を3ヶ月の数字で見てみると次のようになっている。《1~3月》プラス1.6%(年率6.4%)《4~6月》マイナス1.9%(7.6%)《7~9月》マイナス0.4%(1.6%)と年率よりも随分緩やかな変化に感じられる。これを実額表示すると同じくプラス8兆5千6百億円、マイナス10兆3百億円マイナス2兆1千7百億円である。3月期は駆け込み需要によるものは明らかだし6月期はその反動であろうことも納得できる。そこで7~9月期のマイナス2兆1千7百億円マイナス0.4%をどうみるかである。
 マイナス幅が10兆円からマイナス2兆円にまで減少したという数字は市民の日常の購買行動から類推できる実感と程遠い数字で、企業活動が随分活発化し回復しているのだろうと思わせる。主婦目線からいえば8%の外税は相当衝撃感の強いものであり、しかも増税前298円(5%の消費税込み)のものがそのまま298円の本体価格にしたといった例が多くの商品で見られたから8%の消費税が掛けられる質的には消費税13%ではないのかというのが実際の感覚だった増税に慣れて萎縮した消費者心理が徐々に緩み、年末ボーナスが少しでもあれば来年から消費も少しプラスになるのではないか、そんなところが正直な市民感情。円高がプラスに働いて企業活動に良い影響が出れば10~12月期はプラス成長に転ずるかも知れないし、円高が過剰に亢進すればマイナス成長のままかもしれない。
 ちなみに内閣府の実施している「街角景気」は9月―消費税率引上げに伴う駆込み需要の反動減の影響も薄れつつある。ただし、先行きについては、エネルギー価格等の上昇への懸念等がみられる10月―景気は、このところ弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、エネルギー価格の上昇等による物価上昇への懸念等がみられるとまとめられている。
 
 海外メディアは「日本は景気後退期に入った」という見方がある一方「企業の予想外の在庫調整がなければ、わずかにプラス成長だった可能性」を指摘するものや「機械受注など他の経済指標で改善が見られる」という見方もある(2014.11.23日経「海外メディア」より)。
 消費関連統計の分析を見ると「小売業売上高は8月以降顕著な回復が見られる。また実質家計消費は8月まで横ばいの後、9月に持ち直しの動きがある」が「消費増税後の物価上昇幅が大きいため、この影響は来年3月まで残る」と結論している(2014.11.24日経「日本総研・湯元健治副理事長/ここに注目」より)。
 
 いずれにせよ、今回の解散騒ぎもそうであった、マスコミが首相官邸や政府筋の情報操作にいいように操られてお膳立てする例が目立って多くなっている。今回の解散は「大義がない」と批判するがそういう流れに世論をもっていったのはマスコミ自身である。安倍政権の強権姿勢に屈したのか、マスコミの矜持が試されている。
 ともあれ、解散時のテレビで「失職した議員さん…」という表現が使用され、「政治家」が「職業」であることに何の疑問も抱かれなくなってしまったことに「政治の劣化」を哀しみをもって実感した。
 
 
 
 

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