2015年2月2日月曜日

インターネットと原発

 北朝鮮の金正恩を揶揄したソニーの米映画会社製作のB級コメディーをめぐって米朝のサイバー合戦がマスコミを賑わしている。昨年はベネッセをはじめ企業の顧客情流出が相次いだし、政府関係機関の情報流出も頻発した。ビットコインがハッカーに収奪されて約114億円が消失した例は特殊としても銀行預金がネット上で盗難にあう事件も後を絶たないしシステムが破壊されて仕事に支障を来たすことも珍しいことではなくなった。
 1月20日付けの日経「一目均衡」が「『第5の戦場』株価に脅威」と題してサイバー被害の株式市場への影響の大きさを詳述している。
 米小売大手のターゲットは13年のクリスマス商戦期に大量のカード情報を盗まれ14年には顧客情報流出も判明して株価が下がり最高経営責任者が辞任に追い込まれた。米ウォール街ではハッカー集団が上場企業のインサイダー情報を盗み株式を不正売買している疑惑も浮上している。13年半ば以降米国の上場企業100社以上がハッカーに役員らのパスワードを盗まれている。米軍はサイバー空間を陸海空と宇宙に次ぐ「第5の戦場」と位置づけて脅威に備えているが、株式の売買や決済、保管のシステムなど各国の株式市場を支えるインフラは電子化されており、大きなサイバーリスクに直面している。サイバー犯罪は企業経営や株価を大きく揺らす危険に満ち、資本市場の信頼を保つための「第5の戦場」に対する備えは喫緊を要する事態に至っている。
 
 インターネットは便利な技術でありその活用によって生産性が大きく向上するなど恩恵は計り知れない。ここ数年、ビッグデータを如何に活用するかがマーケティングの死命を制すると各社しのぎを削っているようにインターネットを含めたIT技術は重要な戦力ではあるが、「情報流出」「システム破壊」「資産収奪」がこれだけ『容易』に行われる脆弱な技術に、国家も企業も『命運』を託していいものだろうか。このままではいつ何時、国や企業を破滅させる事態に追い込まれないとも限らないではないか。
 
 この情況は原子力発電を『見切り発車』して利用に突き進んだ姿と余りにも似ていないか。使用済み核燃料の処理方法や廃炉技術を確立する前に利用に踏み切ったのは『目先の便利さ』に目がくらんだからではなかったか。何度もチャンスがあったのに『目先の利益』―見せかけのコストの安さや短期の環境負荷の少なさなど―に心を奪われ引き返す『勇気』を示せず今日までズルズル来てしまった。チェルノブイリを他山の石としておれば「福島第一原子力発電所事故」はなかったはずなのに、それにも懲りず4年も経たないうちにまた「再稼動」に踏み出す愚かさを「インターネット」でも繰返すのか。
 
 インターネットの『不完全さ』の最も顕著な例は「アラブの春」と「オバマの選択」である。
 アラブの春は2010年から2012年にかけてアラブ世界に発生した「反政府活動」の総称で、長年の鬱積した独裁政権への不満が『インターネットの呼び掛け』で発火し旧政権を打破した。オバマの誕生は、当初劣勢を伝えられていた陣営が『インターネットを活用した資金集め』に成功し選挙運動を圧倒的な優勢に導き大統領選に勝利した。
 しかしアラブの春はエジプトやリビアで民主化の綻びが見られシリアでは泥沼の内戦情況に陥るなど、反政府の抗議活動は真正の『革命』には結実していない。一方「世界の警察」として戦後世界を統治してきたアメリカの、財政再建と国内回帰の「チェインジ」を託されたオバマは結局「決められない政治」という最悪の政治状況に「覇権国アメリカ」を陥れ世界を『秩序なき無極世界』に引き摺り込んでしまった。
 「アラブの春」と「オバマの選択」の『未完成』は「インターネット言語」の『不完全さ』に由来する、と結論づけるのは『誤った認識』であろうか。「言葉」は元々不完全なのものではあるが、昨今のSNSを原因とした犯罪の多発をみるにつけ「インターネット言語」はもっともっと「精度」を高める必要がある。
 
 
 
 多くの思い違いのなかに、完璧な辞書が存在するという思い違いがある。(略)あらゆる言説に対して、あらゆる抽象的観念に対して、人はそれに対応するものを、正確な記号を辞書の内に見出し得ると考える錯誤がある(A.N.ホワイトヘッド)。

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