2015年11月8日日曜日

理屈と感情

 サプリメントについてこんな話を聞いたことがある。某大学の准教授が一日に百十何錠かのサプリメントを服む以外は水を飲むだけでほとんど食事を口にしないで十年以上過ごしているという。これは極端な例としても何らかのサプリメントを常用している人は多く、中国人旅行者の「爆買」の人気商品上位に品質の良い日本製サプリメントが含まれていることも知られている。
 古い考えかも知れないがどうもサプリメントに馴染めない。『サプリ信仰』にはふたつの勘違いがあるように思う。まず、サプリ単体で効いているという考え方、二つ目は栄養素のすべてが明らかになっているという誤解である。
 遺伝子解析でもそうだが、ヒトゲノムのおよそ97%は役立たずの遺伝子『ジャンクDNA』とされているが、だからといってそれが『無用』とはいえないらしく、まだ確認されていない機能を果たしている可能性が高いようだ。眼や免疫機能に効果があるビタミンAはベータカロチンを多く含む色の濃い野菜に含まれているサプリだが、ビタミンAが体内で機能するときビタミンAと野菜に含まれるその他の物質が相互に影響してビタミンAとして吸収、機能しているかも知れない。更に今まだ発見されていないサプリメントがどれほどあって、それが健康とどのような関係にあるかも定まっていない。
 科学は発見されやすいものから発見され、人間に役立つ方向に偏って進歩するいう考え方がある。あんなに悪者扱いされていたコレステロールに善玉があるということが言われだしたのが最近であるように科学を『信仰』するのは行き過ぎだと思う。上等の牛肉が健康に良いものであっても、楽しく美味しく頂かなくては吸収され難いように、食事は衛生的で新鮮な『食品』でするのが第一だと理屈抜きで信じている。
 
 消費税の軽減税率はその逆進性ゆえに増税の緩和効果は薄い、というのが経済学の常識になっている。軽減税率導入がすんなりと政策として成立しないのはこの常識が邪魔をしているからだ。今、消費税が8%から10%に増税されて食品が8%に据え置かれた場合、年収一千万円の人が100g1000円の牛肉を300g、年収200万円の人が100g300円の牛肉を200g買ったとすると、一千万円の人は3000円の2%だから60円、200万円の人は600円の2%だから12円の消費税が軽減される。所得の高い人は高価なものを買うから減税額が多く所得の低い人は安いものを節約して買うから減税額が少なくなる。だから「低所得者の税負担を少なくしよう」というそもそもの目的が果せない、というのが常識的な批判となって、自民党の税調などは実施に反対している。しかしこれは理屈であって紙の上の考え方に過ぎない。もしこの考え方が本当に正しいなら欧米の多くの国でこの減税措置が実施されていることの説明がつかない。
 確かに60円と12円だから減税額は高所得者のほうが多いが年収に占める割合は0.001%と0.006%で低所得者のほうが高い。高所得者の食費の割合は低く3割程度だが所得の低い人は6割近い人も多いから『軽減率』から見た恩恵は低所得者の方が多くなる(食費割合から軽減税額を算出して年収と照らすと一千万円層では6万円で0.6%、200万円層では2.4万円で1.2%に相当する)。
 領収書を集めて申請して、半年先に貰える(還付される)2千円より今日の50円100円の方がありがたい。
 もうひとつ「スティグマ」という心理的負荷も考えるべきだろう。一ヶ月ほど前「臨時福祉給付金」六千円の支給を受けたが「低所得者」という『烙印』を押されたようで違和感を感じた。高級官僚や政治家には理解できないだろうが気持ちのいいものではない。
 理屈ではないのだ。
 
 魚消費が和食ブームも手伝って飽和状態に達し我国への流入量が減少している。過剰捕獲も常態化し魚資源自体枯渇化しているものもある。そこで『養殖』が注目され「近大マグロ」が脚光を浴びている。梅田のグランフロントにある近大マグロを提供する店は長蛇の列を成しているらしい。結構なことだがちょっと待てよ?エサはどうなっている?調べてみると魚粉を原料とする配合飼料も使われているが多くは生エサでサバ、アジ、イワシが主らしい。エサになるイワシなども当然天然資源だから養殖が盛んになってエサの必要量が増えれば海洋生態系のバランスへの影響も無視できない。つい最近も「大衆魚のイワシが高嶺の花」などとマスコミが囃し立てていた。
 マグロを取るかイワシを取るか。
 
 理屈通りいかないことも多い。
 

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