2016年8月22日月曜日

想 滴々 (28・8)

 早朝の散歩が習慣になって随分久しい。暑苦しいマンションのドアを開て戸外のヒンヤリとした空気に触れたとき、この習慣の有りがた味をシミジミと感じる。しかし真夏の散歩の本当の素晴しさはこのあと数分歩いた児童公園(最近は街区公園というらしい)にる。植栽の多いこの公園に近づいただけで澄んだ冷気を感じるが、入って逍遥道の両脇に繁茂した樹木の下を歩きはじめるととはまったく異質の清浄な大気に包まれる。ヒヤリとした気温の差ばかりでなく空気の粒が微細になって含まれている水気が透明な感じがする。土と木と光が混じり合ってかすかに匂いさえする。フィトンチッドという森の成分のせいなのだろうか。濃い緑の常緑樹の葉と明るい落葉樹がこもごも重なっている隙間から木洩れ陽が揺れる葉っぱを透かしてキラキラと眩しい。鴉のガサツな啼き声がキッカケになってあちこちで小鳥が鳴き声を上げる
 ここ数年小鳥の種類が増えた。カラスと野鳩とムクドリばかりであった公園にうぐいす、ツグミシジュウガラなど(小鳥のことはほとんど知らないので一度バードォッチャーの友人にレクチャーしてもらおうか)十種類は下らない小鳥が飛来するようになった。特に雀が目に付く。そう言えば近くの知り合いの農家の方が休耕田の地味を痩せさせないために植える牧草の種を雀にほとんど食われたと嘆いていたのを思い出す。道路から二米ほど内側(人通りから遠いところ)を食われてしまったのだ。
 この辺りには数年前まで田んぼや畑が相当残っていて毎年今頃になると生き生きとした青稲から内に育んだ若いの匂いを漂よわせていた。いつから休耕田が目立ち始め、今年は稲の育っている田んぼは数えるほどに減ってしまった
 ひょっとすると雀が増えたのはこのせいなのではないか。田んぼや畑は除草剤などの農薬散布される。農薬は雑草ばかりでなく微な生き物も根絶やしにする。雀や野鳥の餌も激減したに違いない。そのせいで雀の飛来が減少したそれが田んぼが減って農薬が散布されなくなって、エサが復活して、雀が帰ってきた。
 こんな生態系の変化が町外れの「市街化調整区域」で起っていたのかも知れないとすれば雀の復活は高齢化と減反政策の思わぬプレゼントということになる。喜ぶべきや否や。
 
 毎週月曜日に掲載される「景気指標」をみて景気の悪さが生半可でないことを感じている。「所定外労働(残業)時間前年比」がここ二年、ずぅっとマイナスなのだ(13年平均+4.8%、14年+2.0%)。我国の賃金体系は残業代で生活に余裕まれるようになっているから残業代が支給されないと苦しくなるのは否めない。しかしこの数字はもう少し違った見方もできる。
 「常用雇用指数」が2.0を超えており「有効求人倍率」も1.3超完全失業率は3.1~3.3をキープしている。これはほとんど完全雇用の状態で雇用者総数は僅かずつだが増加し、1件の求人に1.3人以上が応募する人手不足になっている、と読み取れる。ところが「現金給与総額の前年比」は0.2~0.3給料総額はほとんど増加していないから給料の低い人たちの雇用非正規雇用のアルバイトや派遣社員の増加という形で数字上の『雇用改善』になっているのだ。
 非正規雇用の人たちは原則として残業はないから、上の残業時間は一部の忙しい会社ではそれなりに残業しているが、そうでない会社や非正規雇用の増加が残業時間数減少の見せかけを低くしていると見るのが実態なのだろう。つまり多くの会社の正社員の残業時間が相当減っていて実質的な給料減を招いているのではないかということを覗わせるのだ。このような全体的な賃金の減少は「消費支出前年比」に表れており、ここ1年の平均がマイナス1.9―すなわち前年より2%近く支出を減らしていること分かる。
 もうひとつ気になる数字がある。「新設住宅着工」が4月から100を超えている。反対にマンション契約率は首都圏近畿圏とも70%近辺で低迷している。マンション契約は今年初めに暴露された「不正杭打ち事件」以来急激に減少していまだに尾をひいている。一般住宅の建築が増えているのはマンションから戸建てに変更した人がいることを意味しているそれだけではない事情がこの数字の裏側に潜んでいる。相続税対策としての賃貸マンション建築がブームになっているのだ。賃貸マンションを建築すると相続時の土地・建物の評価額減額されて相続税が安くなる税制を活用したマンション建築がそれであるブームの後押しをしたのが「ゼロ金利政策」で超低利で資金調達できるこの時期に相続対策をしておこうという資産家が現れても不思議はない。しかし住宅数自体は既に過剰時代に突入しているからこうした動向が今後我国の住宅政策過剰な負荷にならないかから案じられる。
 市民の多くが不安な生活状況にある一方で一部の富裕層が恵まれた税制に保護されている。アベノミクスで幸せになった人はどれくらいいるのだろうか。
 
 米ワシントン・ポスト紙15日、オバマ政権が導入の是非を検討している核兵器の先制不使用政策について、安倍晋三首相が「北朝鮮に対する抑止力が弱体化する」として、反対の意向を伝えたと報じた。この件について政府はいまだに何の反応も示していないが、数日前の広島や長崎での「非核の誓い」は一体なんだったのだろう
 
 今年の「五山の送り火」は豪雨のうちに行われた。こんな激しい雨に見舞われた「大文字」は記憶無い。沛然と降るを目にしながら昔の人なら「五山の送り火」の祟りを恐れたことだろう
 
 

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