2016年8月8日月曜日

そら知らなんだ

 長年知らないままに放って置いた身近な疑問が最近になってあっけないほど簡単に分かってきた。知っていて損はないから二三お披露目しよう。
 
 龍が想像の産物であることは知っていたが「顔はラクダ、角はシカ、掌はトラ、胴体はワニもしくはヘビ」であるとは知らなんだ。
 注連縄(しめなわ)が「二匹の蛇が交尾している様子を表したもの」であるとはこれも知らなんだ。蛇は交尾の時十五、六時間も絡まりあっているらしい。その激しい性のエネルギーが多産につながり豊穣のシンボルになった。ちなみに綱にぶら下がっているカミナリのような紙は「紙垂(しで)」といい、落雷があると豊作になることから注連縄との相乗で五穀豊穣の願いとなった。
 動物つながりで長年疑問だったのが「プレイボーイ誌」のシンボルマークの「うさぎ」だ。日本人の感覚からすると可愛くて可憐なイメージなのに何故「成人向け娯楽雑誌」に使われているのか。ウサギは年に3、4回繁殖することからアメリカ人にとっては「エッチな動物」とみられているらしい。そこからエッチな雑誌のシンボル・キャラクターになったのだ。
 では、お色気映画はなぜ「ブルーフィルム」というのか。我々日本人なら「桃色」とか「ピンク」が性的なイメージにつながるのだが、アメリカでは「ブルー(青色)」がそれに当るらしい。そこでエッチな映画イコール「ブルーフィルム」となるわけである。
 
 このように答えがはっきりあるものは本を読んだり昨今ならウィキペデイアで調べればいいのだが、答えや内容が曖昧なままに流通しているものには始末の悪いものもある。なかでも『中国の脅威』は極めて始末が悪い。
 
 安倍政権が今回の参議院選挙で大勝したがその勝因は『中国の脅威』以外に見当たらない。世論調査の多くに「他の政権よりましだ」とか「安倍さんの人柄」「清潔さ」などというどうにでもとれる感覚的心情的判断要素が含まれているがそれらを除けば「アベノミクス」と「中国の脅威への国の対応」以外に評点が見当たらない。そのうち「アベノミクス」は安倍政権の成果の強弁にもかかわらず数字が厳然と失敗を表している。賃金は上がっていないし雇用は「非正規雇用」の増加でカモフラージュされているが実態は極めて劣悪である。円安株高のメッキはとうに剥がれているし格差の拡大は深刻な状況に至っている。これではアベノミクスは完全に失敗と言わざるを得ない。
 では『中国の脅威』に備えて安保法制を変革したことは国民にとっていいことだったのだろうか。中国韓国の対日姿勢に軟化が見られるとしてその成果を評価する向きもあるが、では「バングラデシュ・テロ」で日本人が7人も死亡したことをどう見るのか。一連の安保法制変更以前はアジア・アフリカ諸国の対日感情は極めて良好だった。テロ組織の標的からも日本人は外されていたといわれている。国民の安全を守るという建て前で行われた一連の安保法制変更がこれでは全く逆の結果を招いているのではないか。
 その辺の評価は立場によって様々であるから深くは追求しないが再考の余地はある。ここで考えてみたいのは『中国の脅威』とは何かということである。
 
 中国外交の本音は台湾の回復と海洋進出だろう。台湾問題は双方の複雑な歴史的背景があるから短時日には決着は見られないだろうしここで問題にしている「中国の脅威」とは直接にはつながらない。しかし南沙諸島の人工島建設にまつわる「中国の赤い舌」問題は我国や台湾、東南アジア諸国に囲まれた中国の海底資源や漁業資源などの経済的利益と国防上の必要性から中国にとってはどうしても譲れない死活問題なのだ。勿論経済的排他水域などの海洋法に基づく権利関係は中国に不利な法体系(中国の納得していない)になっているが、しかし国際関係が純粋な法律論だけで片付くほど単純でないし、かといって現代社会において戦力の強弱で力づくの解決が図れるはずもない。となれば関係諸国の気長な交渉と国連などの調整に委ねるほかあるまい。いずれにしても中国が武力で以て沖縄を侵略することなど考えられないし南沙諸島に関連して当事国を攻撃する可能性も考え難い。
 では「中国の脅威」とは何か。正体不明というのが本当だろう。何となく有りそうな「国際紛争」的可能性の総体としての『不安』とでもいうべきか。しかしもしこの可能性を中国が実行した場合に国際社会が下す経済制裁を考えれば輸出主導で発展している中国経済は死に瀕することは間違いない。格差が拡大して国民の不満が充満している中国が国民のガス抜き以上の危険な賭けに出るなどということはとても考えられない。
 結局米ソの東西対立が消滅した後の流動化した「Gゼロ」世界で仮想敵国があった方が国内統治がし易いと考える勢力と仮想敵国があった方が得をする勢力が描いた「共同幻想」が『中国の脅威』と考えるのが妥当なのではないか。で、「中国の脅威」で得をするのは誰か。それは中国の軍需産業であり日米の軍産複合体も同様かも知れない。
 
 注連縄の意味が分かったこれからは神社にお参りするときどんな顔をして鳥居を潜ろうか。
「中国脅威論」の項は毎日新聞28.7.31掲載の『時代の風』藻谷浩介氏の記事を参考にしています)

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