2016年8月29日月曜日

暑熱の夏に爽やかな話題を

  
 リオ五輪が終って日本は過去最高の金12個、銀8個、銅21個合計41個のメダルを獲得した。中でも日本柔道の活躍は目ざましく男女合わせて12個のメダル、特に男子柔道は参加7階級ですべてメダルを勝ち取るという花々しい成果を上げた。井上康生監督は金メダルゼロに終わったロンドン五輪からわずか4年で再建に成功指導者としての資質が称賛されている。しかし忘れてならないのは日本柔道連盟の組織改革があったことだ。
 2013年1月に女子柔道強化選手の暴力告発事件があり、3月には全日本柔道連盟が日本スポーツ振興センターからの助成金を不正受給していた問題が発覚。現場の指導者や選手からも不正の実態を裏付ける証言が相次ぎ、全柔連会長である上村春樹氏の責任が問われた。事態改善のために設置された第三者委員会の提言と日本オリンピック委員会(JOC)からの改善勧告に従い4月に全日本柔道連盟会長上村春樹氏の引責辞任と組織刷新が行われた。その結果暴力、暴言、パワハラ等の諸問題を、開かれた全柔連と柔道界、公明で透明性の確保された組織に改変することで再発防止と日本柔道の再興に努めることになった。
 当時テレビに映し出されたシゴキそのものの暴力、暴言をふるう指導者の姿を見て、これでは選手は萎縮するし、このような練習方法では実力養成が図れるはずもなくオリンピックで敗退するのも当然だろうと感じたのを覚えている。今回のリオ五輪で好成績を上げられたのは、組織改革によって上からの理不尽な締め付けもなく、井上監督をはじめ現場のスタッフが自分たちの思い通りの強化策が実行でき、選手たちも納得のいく練習に取組めたからに違いない。インタビューに答える選手たちの明るく快活な態度に前回のロンドンとは比べものにならない伸びやかさを感じた。2020年の東京ではきっと今回以上の成績を上げるであろうことを期待させた。
 それにしても篠原信一という人は不運な人だ。有名な「誤審問題」でシドニー五輪100kg超級の金メダルを逸したし、ロンドン五輪では金メダルゼロの責任を監督として取らされる羽目に追い込まれた。しかし2013年の問題噴出は篠原氏ら現場の若い指導者たちが画策したのではないかと憶測している。日本柔道界の切り札―井上康生をかつぎだしたからには日本柔道界の根本的な改革を実現し飛躍的な実力向上を図ってリオでメダルを量産する体制を築かなければあと20年~30年日本柔道の再生は無いのではないか。そんな切羽詰った状況に彼らはあった、そう思う。二大派閥が勢力争いを繰り広げる腐敗した権力構造の下で蓄積した積年のウミを吐き出さなければドン底まで落ち込んだ日本柔道の再興は計れない、選手と指導者一丸となった必死の取り組みがリオの華々しい活躍に結実したのだ。
 激戦を終えてインタビューに答えた井上康生監督の涙の裏にはこんな若き指導者たちの苦闘があったのではないか。そんな思いが去来した日本柔道の活躍であった。
 
 京都府は24日、亀岡市で計画している球技用スタジアムの建設予定地を変更すると発表した。絶滅が危惧されている桂川右岸に棲息する希少淡水魚「アユモドキ」を保護するために従来JR亀岡駅の北約500㍍に建設する予定だったものを、亀岡駅の北部分に隣接する区画整理地に変更する。スタジアム建設が発表された当初から環境団体が計画変更を提言していたが府がこれに同意したもので、「公共事業のあり方に一石を投じるもので、いい例ができたのではないか」と山田京都府知事は語っている。
 
 環境がらみでは「鵜殿の葦」も問題になっている。新名神高速道路の二期工事で高槻市鵜殿(うどの)地区にルート設定されていたが東儀秀樹氏ら雅楽団体が反対運動を起こしいまも協議中である。「鵜殿の葦」は雅楽器の篳篥(ひちりき)のリード部分の原材料となっており、これがなくなると篳篥が作れなくなる。正確に言うと他の地の葦では昔からの伝統的な音色が変わってしまうらしいのだ。鵜殿地区の淀川沿いに葦の群生地があり今の建設計画通り工事が行われると、この群生地で古来から行われてきた年1回の「野焼き」ができなくなり葦の生育を妨げることになる。東儀氏らの問題提起を受けてNEXCO西日本は「鵜殿ヨシ原の環境保全に関する検討会」を設置、平成25年1月以来7回の協議を重ねている。そろそろ結論が出るだろうが、このような問題がこのような形で慎重に協議されるようになった我国の在り様に『国の成熟度』を感じる。
 
 政治も経済も大きな転換点を迎えている昨今だが、歴史や環境などこれまで蔑ろにされてきた多様な価値観に少しづつ目が向けられるようになってきた。嬉しい傾向だ。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿