2017年7月24日月曜日

エアコンをつけっぱなしにしてはいけません!

 
 テレビというメディアの不定見については大概のことにはもう慣れっこになっているが今回の「熱中症対策―エアコンはつけっぱなしがお薦め」には呆れるばかりか怒りさえ覚える。
 近年の異常な暑さのために熱中症で救急搬送される人が急激に増え死者の数も無視できない数に達している。こうした傾向を踏まえると例年以上の暑さが予想される今年は余程シッカリと対策を講じないと大変な事態になるとの思惑から「エアコンの効果的な利用」を呼びかける動きとなったのだろう。それだとしても「エアコンつけっぱなし」推奨のテレビは不定見すぎる。
 
 エアコンをできるだけ使用しないでおこうという国民の―特に高齢者の「節電」意識は、2011年の「3.11東日本大震災」による「福島第一原子力発電所事故」によって我国全体の原子力発電が中止されたことにより「電力の供給不足」が予想されたので、「節電」を国全体で取り組みましょうという国民運動が起り、その一環として「エアコン節電」も提案されたという事情がある。エアコン使用は夏の「電力需要ピーク時」と時期が重なるために特に「節電」が強調された側面もあった。
 国民の心配をヨソに原発再稼動が徐々に始まりつつあるが、それでも電力需給は根本的に解決されていない。この状況で国民全体がエアコンを「つけっぱなし」したらたちまち「電力不足」になることはほぼまちがいない。そんな事態の予測もなしに無責任に「エアコンつけっぱなし」を囃し立てるテレビというメディアには愛想が尽きた。
 
 電力問題よりも「熱中症対策」が大事だという向きもあるにちがいない。エアコンの効果的な利用は有力な方策であることは事実であるからそのあたりについて話を進めてみよう。
 西陣の築百年近い民家から桂のマンションに引っ越して十五年近くになる。桂離宮の南、桂川のスグ西側のマンションは東西のベランダを開け放して風の通路を確保すれば快適そのものだった。引っ越して一年目、エアコンを利用したのは一夏で半月もなかったように記憶している。四、五年前――丁度七十歳を超えたのと合わすようにエアコンの利用頻度が多くなってきた。齢のせいもあるだろうが気温の上昇も一廉でなく、いわゆる夏日や猛暑日が年々増えてもきた。
 そこで「湿度計付きデジタル温度計」を買ってきた。どんな状況で『老体』はエアコンを欲しがるかを調べてみようと思ったからだ。その結果、大体の傾向としては、「室温が32℃、湿度が62%(ベランダを開放して風の通りをよくして)」というのが一応の目安になった。気温が29℃なのに湿度が64%を超えると無性に暑苦しく感じる。逆に湿度が57%位だと室温が32℃でもそう不快に感じないこともあった。経験を重ねて上のような目安を決めたのだが湿度が64%を超えたら原則エアコンを利用している。
 スポーツドリンクも重要なアイテムだ。一日に五、六回はコップ一杯飲んでいる。スーパーで2リットルのペットボトルが百円(税別)の安売りをアテ込んで1ケースづつ買っている。
 ここ二、三年心がけているのはベランダの壁の打ち水だ。はじめてやってみたときの驚きは忘れられない。水のかかるしりからサーッと冷気が湧き上がる。二度打ち水をすれば二時間ほどは暑さを押える効き目がある。一日三、四回、夕方にはベランダのガラス戸にも打ち水すると寝るときよほど室温が落ち着く。
 氷枕は六十歳ころから利用している。「熱もないのにそんなんしたら頭悪なるのとちがいますか」という訳の分からない妻の叱言を無視して使い続けているが、最近はテレビでも取り上げられるようになって妻の叱言も治まった。
 数年前までテニスをやっていた。インドアだったがそれでも七月近くなると暑さが堪えられなくなってくる。そんななかでもテニスしていると、あるとき、全身汗みどろになるときがくる。練習が終わると頭の先から靴下まで汗まみれ、シャワーを浴びると不思議にシャッキリする。この経験を経ると日常の暑さが軽く感じられるようになる。私はこれを「毛穴が開く」といっている、科学的に意味があるのかどうか分からないが有効な方法だと今でも信じている。思うにエアコンが普及するまでは、だれも皆こんな経験をしていたのではないか。ところが今では「毛穴が開く」前にエアコンに頼ってしまうから「暑さ慣れ」することがない。同じ30℃でも毛穴が開けば耐えられる肉体にレベルアップしていたのが耐久力がついていないからエアコンに頼らざるを得ない状態のまま躰がとどまっている。現在の人間と暑さの関係はそんなことなのではないか、そう思う。
 
 熱中症対策としてのエアコン利用を闇雲に反対するのではない。しかし利用を薦めるのなら、一方の重大問題でもある「節電」も考量して利用の目安を科学的に―温度と湿度だけの目安でもいいから示してほしい。扇風機を併用したり、濡れタオルで汗を拭うだけでも大分暑さはしのげる、とか「知恵」も授けて欲しい。それぞれの工夫の可能性も残しておいて欲しい。一刀両断「エアコンはつけっぱんしにすべし」と言われても一般庶民は困ってしまうのです。
 
「お金を気にしなくて済むなら誰に言われなくてもエアコンつけ放題にしたい」と思っている高齢者は世の中にいっぱい居るということをあの「エアコンつけっぱなし」推薦の専門家は知っているのだろうか。
 

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