2019年10月7日月曜日

西洋医療への疑問(続)

  現代人の病は無意識の底にある「精神の不安」が影響していることはほぼ確実でがんの発生や進展もその影響を無視して考えることができないことが明らかになっている。
 依存症の専門家は精神的不安の特徴を六つ析出して「自己評価が低く、自分に自信が持てない」「人を信じられない」「本音を言えない」「見捨てられる不安が強い」「孤独で寂しい」「自分を大切にできない」に類型化している。そして患者の多くが人を信じられる生育環境でなかった、信じていいと思えないまま孤独で生きてきたという環境にあったことが原因となっている。だから人を信じられるようになると人に癒されるようになる、そうすれば薬物に「酔う」必要がなくなるという。つまり依存症とは人間関係の問題なのだと結論づける。(京都新聞2019.10.1薬物依存症の診察室から
 また在宅医療に意欲的に取組む若き医師は、「訪問診療の現場で実際に必要なのは専門性を融合した総合医療です。そのためには患者と良好な人間関係をつくるコミュニケーション能力を高めることが重要で、コミュニケーションを通じて患者の不安を解消し情報交換を円滑に、密に行うことが治療の大きな要素になっている」と言っている。(京都新聞2019.9.30日本人の忘れもの知恵会議 
 
 西洋医療は専門特化型医療を進め高度化細分化によって専門分野を深化させてきた。高価な免疫療法のがん新薬や陽子線治療などはその成果だが進化する薬剤、治療法、検査機器は歯止めの利かない治療費の高騰を招いている。こうした傾向は今後さらに深化して遺伝子解析による「オーダーメイド医療」という方向にまで発展しようとしている。
 しかしこうした方向性は病理・治療の一側面の深化・進化であって現代人の負っている「精神の不安」からの治療は考慮されていない。さらにがんに関しては先に挙げた国立がん研究センターが九月に発表したように「老化」も発生に大きく関与している。同研究所発がん・予防研究分野の研究チームは、多くのがん変異は無秩序に入るのではなく、細胞の老化によりDNA修復能が低下し、DNAの損傷が蓄積することで変異のリスクが上がり、がんを発生させることを見出した。これまでもこうした可能性は示唆されていたのだがこの研究によって老化と発がんの関係明確になった
 
 病の「精神の不安」「老化」の影響が明らかにされている現状と高度化細分化した専門特化型西洋医療をつなぐものとして『メッセージ物質』が有用なのではなかろうか。NHK「人体」で「人体の中で臓器同士や細胞同士が繰り広げている情報ネットワーク」としてメッセージ物質を次のように説明している。
 これまでは病気ごとにそれぞれの臓器を診ることが医療の中心的な考え方でした。しかし、現在はそれだけでなく臓器同士のネットワークに注目して治療を進めることが大切なポイントであることがわかってきました。臓器の出すメッセージに耳を傾けることが、治療困難な様々な病気を克服する切り札になると考えられています。
 受精卵が分裂を繰り返しながら分化を重ねて臓器を形作っていく過程で、細胞同士が情報をやりとりする
その情報子が"メッセージ物質"である。臓器同士は常に会話するように情報交換しながら、 支え合って働いているのだが、そんな臓器との連携を図りながらながら、その内部に高度なネットワークを築き上げてきた「究極のネットワーク臓器」『脳』である
 
 スピリッチュアル・ヒーリングは手や掌で触れたり擦ったりすることでストレスで緊張した精神をほぐして「途絶」したメッセージ物質を「活性化」しているのではないか。また「語る会」や「カウンセリング」などの「ナラティブセラピー」は、患者の自主性に任せて自由に記憶を語らせることによって単なる症状の除去から人生観の転換に至るまで幅広い改善を起こさせる精神療法と考えるとこれは「語ることのカタルシス効果(日ごろ心の中に鬱積ている情緒を解放しそれにより快感を得ること)」によるメッセージ物質の活性化とはいえないか。
 
 メッセージ物質は西洋医療の専門化細分化の窮極の進化の過程で発見された。しかし現場ではそれ(専門化細分化)だけではうまく回らないという危機感を抱く医師が少なくない。そんな彼らは「総合医療」に活路を求めている。それは四十年前五十年前に逆戻りするのではない、情報通信技術を使ったデータに基づいた健康管理と最新医療技術を融合させながら医師とメディカルコーディネーター(診療以外のケア全般を担当する)と患者と患者の家族の信頼関係のもとに治療に当たる。そんな総合医療なのである。
 
 西洋医療が陥っている陥穽から脱却するために我々は思い出す必要がある、かって祭りや呪術行為、憑依現象が人間と世界の関係を安定させるものとして機能していたことを。今やこうした行為は知的なものではないと否定されているが人間は意識的に捉えられないものとの関係を持たずには生きることができない存在でもある。人間のそうした多様性、複雑性、重層性を西洋医療は忘れている。
 
 百歳時代が現実化してきた現在、「生かす医療」だけでは時代の要求にこたえられなくなっている。
 
 
 

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