2019年12月21日土曜日

わたしの有馬記念2019

 アーモンドアイの参戦で俄然有馬記念が盛り上がってきた。香港カップ(12月8日2000m)を微熱と体調不良で回避、急遽有馬記念の出走に切り替えてくれた。「最強馬」の出走で、勝っても負けても気持ちよく、楽しい年末競馬で新年を迎えられることは喜ばしい限りである。
 そこで競馬人生の全記憶をふり絞って「わたしの有馬記念2019」を書いてみよう。
 
 近年の有馬記念はJC(ジャパンカップ)を抜きにして語れない。ここ10年を振り返ってみても、天皇賞出走馬が2頭、エリザベス女王杯2頭、凱旋門賞2頭、金鯱賞2頭、アルゼンチン共和国杯、中日新聞杯各1頭の馬券がらみに比べて菊花賞の6頭は抜けているがJCはそんなものじゃない、圧倒的に優勢を誇っている。13頭が馬券対象になっているだけでなく、他レースが優勝馬優勢(除凱旋門賞、エリザベス女王杯)であるのにJCは優勝馬はたったの2頭で3、4着馬が多く8着11着馬も好走している。これだけの好相性を示せば「有馬はJCをはずして馬券は取れない」という鉄則が流布するのも当然だろう。
 だが今年のJCは史上「最弱」のメンバーだった。初めて外国馬の参加がなく3才クラッシク馬は1頭も出走せず春秋の天皇賞馬、宝塚記念優勝馬も不出走で唯一の今年のGⅠ勝馬がアルアイン(大阪杯)だけという低レベルのJCだった。勝ったスワーブリチャードにケチをつける気はないがそんなこともあって今年のJC出走馬の有馬参戦はわずか4頭にすぎない。今年もJC出走馬が馬券対象に食い込んでくるかの判断は悩みどころである。
 
 もうひとつ有馬記念には特徴がある。2500mという距離だ。大体競馬の競争体系は400mの倍数で構成されている。1200m、1600m、2000m、2400m、3200mという体系の中でこれをはみ出しているGⅠは菊花賞3000m、エリザベス女王杯の2200mと宝塚記念2200mと2500mの有馬記念しかない。ふたつのファン投票レースが400m倍数体系の「らち外」に設定されているのは日本中央競馬会の深慮だろうか?この2200mと2500mという距離には血統的な適性不適性があるとされているが専門知識がないので詳細は省くが、暮れの中山競馬場という事情も手伝ってこのレースには一筋縄でいかない秘密が潜んでいる。だから有馬記念は信じられない決着に終わることが少なくない。
 
 その象徴的なレースが1973年の第18回有馬記念だ。このレースには怪物ハイセイコーが出走して断然の1番人気、2番人気がタニノチカラ、3番人気はベルワイドが占め4番人気のイチフジイサミの4頭で「鉄板」と思われていた。したがって出走頭数もわずかに11頭で1977年の有馬記念、テンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスの最強3頭で決着したときの8頭に次ぐ少頭数になった。単勝人気も上位4頭で75%を占める異常な人気の偏りで、ちなみに優勝したストロングエイトの単勝は10人気で4200円支持率1.8%だった。ハイセイコーは別格として、タニノチカラは天皇賞秋の優勝馬で翌年の有馬記念を制した名馬、ベルワイドは1972年天皇賞春の優勝馬、イチフジイサミも1975年春の天皇賞馬になっている。
 これだけの材料があれば1~4番人気で断然ムードになるのも当然で、実際実力もこの4頭がズバ抜けていたと今でも思う。ところが勝ったのは11頭立て10人気のストロングエイト、2着馬が7人気のニットウチドリになったのだ。(勝ち馬ストロングエイトはこの時点では重賞未勝利――のちに鳴尾記念勝ち、タケホープの勝った天皇賞春ではハイセイコーに先着2着に好走している――だったがニットウチドリは桜花賞優勝、オークス2着、ビクトリアカップ(現在の秋華賞)1着の名牝である。
 
 なぜハイセイコーが負けたのか?ここに「『大穴』レースの法則」が働いていた。「人気薄の逃げ馬」、これだ。人気が差し、追い込み馬に集中して逃げ、先行馬が人気薄で少頭数の場合、ノーマークになって逃げ切ってしまい人気馬が3着以下に沈んでしまう、こんなレースがどれほどあったことか!特に大レースにそれが多かった(ように記憶している)。まさにハイセイコーもこの魔術にひっかかった。先行2頭のうしろでハイセイコー、タニノチカラ、ベルワイドが互いに牽制しあい、動くに動けず膠着状態に陥り直線を向いて追い込んだが間に合わずハイセイコーは3着に沈んで大波乱――三連単のなかった時代には珍しい枠連13,300円の大穴馬券になった。
 レースは快速馬キシュウローレルの2番手で桜花賞、オークスを好走したニットウチドリが意表をついて逃げ戦法に出、ストロングエイトは勝ちパターンの2番手追走で淡々とレースが進みそのまま、という決着だった。
 
 今年の有馬記念に波乱はあるのか。アーモンドアイが一本かぶりの1番人気になるのは確実で2番人気のリスグラシューとの断然の2強対決になる可能性が高い。「大波乱」はこんなときにこそ起こる。
 このレースにはアエロリット、キセキ、クロコスミアの3頭の逃げ馬がいる。人気薄のクロコスミアが逃げて2、3番手に折り合いをつけてキセキとアエロリットが先行する。淡々とレースが進み先行集団と後続の差が10馬身ほどになる(かもしれない)。アエロリットは距離に疑問があるので勝負どころの3コーナーあたりからクロコとキセキが抜け出して4コーナーを回る。直線で後続のアーモンドアイ、リスグラシュー、ワールドプレミア、フィエールマンが追い込む展開になって、もし届かなければ波乱になる。ただ大胆騎乗の外人騎手が増えた今年の有馬記念でこれまでのような好位での「膠着状態」があるのかどうか?悩ましいところである。
 
 さてここからが「わたしの有馬記念2019」になる(したがって「予想」ではないことをお断りしておく)。今年はJC出走馬の連がらみはないと決めつける(エタリ7、シュバル9、スワーヴ1、レイデオロ11)。アーモンドは出走過程に若干の懸念がある?リスグラは春と秋に海外遠征をしたことで目に見えない疲労が残っていないか?本来なら3才牡馬最強と評価している菊花賞勝馬だが今年はここ10年で不良だったキセキ、エピファネイアのときを除いて勝ち時計が3秒以上遅く昨年のフィエールマンと同じ3分6秒台だったからレベル的に劣っていたと断定する(ヴェロックス3、ワールド1、フィエール)。
 ということは1973年の再現の可能性に賭ける価値がある、という結論になる。まだ枠順の決まっていない段階で結論を出すのは拙速だが(この10年で12番枠より外枠が馬券にからんだのは3回だけで15番から外はすべて4着以下、1、2着に限っても同じ傾向で3頭しかない)1、2着をキセキとクロコで固定、3着にアーモンド、リスグラという大胆な推理をするか、4頭ボックスにするか?キセキとクロコの単勝と複勝に妙味があるかもしれない。(他馬では中山に変わってサートゥルナーリアが恐いが……?)
 
 (追記)枠順が決まって逃げ馬で唯一内枠に入ったスティッフェリアをクロコスミア(逃げ馬に12番枠はツライ!)と入れ替えて、馬券はサートゥルナーリアを加えた5頭の3連複にする。格下だがスティッフェリアが粘っておいしい配当になることを期待しよう。
 
 以上「わたしの有馬記念2019」である、結果や如何に?
(どなた様もよいお年を)
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 

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