2019年12月2日月曜日

競馬必勝法

 「競馬は人生の縮図だ」などということを書こうとしているわけではない。五十何年競馬をやってきてやっと勝てないという諦念に至って、そのせいか競馬が少し分かったつもりになって「法則」めいたものが幾つか発見できた、それを書いてみたい。
 その一、「勝つ奴(馬)と勝てない奴(馬)がいる」。
 その二、「一流と二流の差」。 
 その三、「GⅠを連勝することはむつかしい」。
 その四、「ステップ・レースの重要性」。
 
 必勝法その一。今年の菊花賞は皐月賞馬サートゥルナーリア天皇賞(秋)へ日本ダービー馬ロジャーバローズは故障により引退と、春のクラシックホースが不在になって1番人気に支持されたのは皐月賞2着・日本ダービー3着と惜敗に終わったヴェロックスだった。単勝2.2倍は2人気ニシノデイジーの6.0倍に比べて圧倒的な人気になっている。皐月賞(2000米)はアタマ差、ダービー(2400米)は2馬身半差で神戸新聞杯(2400米)もサートゥルナーリアの3馬身差の2着に終わっている。2000米でアタマ差だったのが2400米のダービーと神戸新聞杯では2馬身半、3馬身差と完敗しているのに負けた2頭が抜けたからといって3000米の菊花賞で優勝できるほど競馬は簡単なものではない。
 勝負事は「勝つ奴」と「勝てない奴」の差は決定的だ。この1番人気は危うい!、ヴェロックスは勝てない奴(馬)ではないのか?直観だった。
 結果は武豊騎乗のワールドプレミアが勝って平成の菊花賞男が令和でも戴冠した。ヴェロックスは辛うじて3着で面目を保った。しかし勝てなかった、やっぱり「勝てない奴」だったのか?
 
 その二。2019ジャパンカップの出走予定馬を見て「史上最弱のジャパンカップ!」と思った。外国産馬が一頭も出走しないだけでなく天皇賞馬フィーエールマン(春)、アーモンドアイ(秋)、宝塚記念のリスグラシューもダービー馬も出走しない、要するに今年の最強馬と目される馬が一頭も出走しないのだからドングリの背比べのジャパンカップという印象が強く残った。これなら絶好の1枠に入った3歳牝馬カレンブーケドールで十分に勝負になる、そう確信した。とにかく3歳牝馬は負担重量が53kgで4キロ恩恵があることもあって4歳牝馬(55kg)ともどもジャパンカップでは牝馬の活躍が顕著なレースなのだ。問題は優勝できるかどうかだ。1枠1番はこのところ3年連続優勝馬が出ているラッキー枠。力関係からも枠順からも1枠1番3歳牝馬カレンブーケドールの優勝確率は限りなく100%に近い。しかしどうしても強気になれない、それは騎手の津村明秀にある。1986年生まれ、15年目の中堅だがいまだにGⅢクラス―ーそれも地方場所の重賞レースの勝鞍がほとんどだ、今年は世界中の超一流騎手7名と国内の名だたる騎手が騎乗している、余りにも見劣りする。
 レースは予想通りインの経済コースの4、5番手をじっと我慢して津村はレースを進めている。このまま、このまま。4コーナーを回って直線を向く、「あっ!?」、なんでや?なんで外へ行く!津村は先頭を走るダイワギャクニーの外にカレンを導いた。その瞬間、じっとカレンをマークしていたスワーヴリチャードのマーフィーが内に潜り込んだ。戦前のリポートで最内1頭分は芝の具合がいいと報告していた。直線を向いてあと300m、徐々に進出したリチャードはあと100mの地点で力強く抜け出しカレンに4分の3馬身差をつけていた。
 なぜ内を開けたのか、内らちギリギリに潜り込むのは勇気のいる決断だ、しかしその勇気の有る、無しの差が「一流と二流の差」、マーフィーと津村の差だ。しかしこの差は絶望的に隔たっている。 
 
 その三。GⅠレースは年間26レース組まれていてそのうち障害とダートのレースがそれぞれ2レース、2歳3歳限定レースが10レース、3歳以上牝馬限定が2レースあるから古馬牡馬(4歳以上の牡馬)が出走できるレースは10レースに限られている。短距離と中長距離で分類すると春・秋冬とも短距離(1200m、1600m)レースが2レースづつあるから中長距離のGⅠレースは春・秋冬とも3レースづつ、春は大阪杯2000m、天皇賞(春)3200m、宝塚記念2200m、秋冬は天皇賞(秋)2000m、ジャパンカップ2400m、有馬記念2500mというラインアップになっている。このうち春の大阪杯は2017年創設でまだ3年目と歴史が浅く、しかも3月最終週という早い時期に設定されたことによって従来なら4月末の天皇賞と6月3週目の宝塚記念を目標としていたローテーションに微妙な影響を与えている。馬券を買う側としては大阪杯、天皇賞と連勝してきた馬には「最強」というイメージを抱いてしまうがこれが「落とし穴」になる。大阪杯ができてから春のGⅠを連勝した馬はキタサンブラックだけでそのキタサンも3連勝を狙った宝塚記念では1.4倍の断然人気を裏切って信じられない9着に沈んでしまった。秋の天皇賞と同じ位置づけを企図したに違いない2000mの大阪杯の出現は春の古馬牡馬GⅠレースの展望に一大変革をもたらした。
 今年はアーモンドアイという超絶の一流馬がいるがこれは十年に一度の特殊な例で、血統、調教方法など育成術の進化によって競走馬のレベルアップと実力の平準化がすすんだ現在、GⅠレースの連勝は至難の業となってきたことを認識すべきだ。
 
 その四。先にも述べたように今年のジャパンカップは実力伯仲でどの馬にもチャンスがあった。予想を立てていると頭がこんぐらがって結論をどう導いていいか決め手がなかった。そんなときふと過去十年のレース結果をみていて歴然とした傾向があることに気づいた。勝馬と馬券圏内の馬は天皇賞(秋)に出走しているのだ。次に目立つのは秋華賞の上位馬、それに京都大賞典の出走馬を加えればほとんど100%がカバーできる。これほど顕著にステップレースの傾向が表れているレースは珍しい。迷っていた勝馬検討が一挙に決断に至った。
 GⅠレースはホースマンの究極の悲願だから、永い歴史の中で試行錯誤が繰り返されて最適のステップレースが選ばれている。だから各GⅠレースのステップレースを順調にこなしてきた馬は勝利の最短距離にいることになる。しかしジャパンカップほどそれが顕著な例は珍しい。これからも馬券必勝のキーポイントになるかもしれない。
 
 競馬は馬という畜生(サラブレッドごめんなさい)に他人の騎手が乗って勝ち負けが決まる、きわめて「不確定要素」の多い「賭け事」だ。だから勝つことは―ー年間通じてプラスを勝ち取ることなど『至難』至極であるにもかかわらずロマンを感じるのはなぜだろうか?昔、虫明亜呂無という競馬評論家がいた、彼はどんなレースも複勝200円馬券一枚で競馬を楽しんだと伝わっている。
 彼ほどの境地は凡人には至り難いが、競馬は負けるものと観念して「楽しみに徹する」競馬をめざしたいと願っている今日この頃である。
 

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