2020年6月22日月曜日

2020春GⅠを振り返る

 2020年春のGⅠ競馬もあと宝塚記念を残すばかりとなりました。競馬を始めて57年、高松宮記念から安田記念を終わった時点でプラスを保っていることなどはじめてのことなので驚いています。そのせいもあってか今年ほど競馬を愉しんだこともありませんでした。そこで何がこれまでとちがったのかを振り返ってみようと思います。
 
 馬券の話に入る前に全般的な傾向について記してみましょう。
 (1)短距離志向、(2)高速化、(3)騎手偏重、そして今年だけの特殊事情として(4)無観客競馬、この四っつを強く感じました。短距離志向の最たる象徴はアーモンドアイの安田記念敗退でしょう。中二週の出走間隔(加えて短期放牧無し)とか稍重と出遅れなどが敗因として挙げられていますが最大の原因は「マイル」の安田記念にあったと思います。ア-モンドが負けるならここだと思っていましたからグランアレグリアの単勝もばっちりゲットしました。短距離志向は今に始まったことでなくもう何年も前から、いやずっと前からつづいていますし、わが国だけでなく世界的な傾向でもあります。欧州だけがこうした趨勢に抵抗して重厚な競馬を保っていますから世界の「凱旋門賞」だけは欧州馬が他国馬につけ入る隙を与えないのです。反対に日本馬が香港の短距離GⅠレースを席巻できないのは世界中の短距離自慢がここに集結するからで、そうした傾向のわが国競馬界の意欲の表れが「マイル重賞」重視の姿勢です。JRAでは年間安田記念とマイルチャンピオンSの2レースを古馬混合のマイルGⅠレースとして組んでいますが70回の歴史を誇る安田記念を重んじてか今年は10頭のGⅠ馬が参集しました。マイルのスペッシャリストが出走したこのレースはアーモンド何するもの、というライバル意識剥き出しの厩舎、騎手の気迫がみなぎっていましたからアーモンドといえども決して盤石ではなかったのです。 
 
 高速化はトレセンの整備と馬場の改良、種牡馬の質的向上が相乗効果となって驚くべき進化を遂げています。私が競馬を始めたころのマイルは1分36秒台、2千米なら2分0秒近いタイムがでれば速いといわれていましたが今やマイルは1分30秒台、2千米は1分56秒台になっているのですから大変な進歩です。こうした高速化の最大の原因はトレセンの整備でしょう。中央競馬は長い間東高西低の時代が続きました。ところが昭和44(1969)年栗東トレセンができてから一挙に関西馬優勢の時代に移りこの傾向は今でも続いています。坂路、スイミングプールなどの効果が競走馬の能力向上に絶大な貢献を果たし、育成牧場の登場によって競走馬の馴致・育成システムが完成したといってもいいでしょう。種牡馬の改良と競馬場の高速化が並行して行われることによって日本競馬は「高速化」し、それは必然的に「短距離志向」に向かったのです。見逃してならないのは種牡馬の質的向上と育成技術の改良は競走馬全体の能力を底上げしたことで、今や日本馬の能力は世界レベルに達しています。そうなると馬の能力を余すことなく発揮させることのできる騎手の手腕が問われることになり、上位騎手への騎乗依頼が集中する結果を招いています。現在JRAには約160人の騎手(障害騎手含む)が所属していますが上位10位の騎手の勝利数が約30%、上位20位までで約50%を占めています(年間レース数は約3400レース)。こうした騎手の偏重傾向は「騎手エージェント」の出現によってますます拍車がかかりそうですが日本競馬界の発展に悪影響を及ぼさないことを祈るばかりです。
 
 今年の特殊事情としてコロナ禍による「無観客競馬」という異常事態が起こりました。幸い馬券売り上げは10%以下の売上げ減で止まっていますからご同慶の至りですが、ダービーの勝利馬が広大な競馬場の無音の中、ポツリポツリと歩む姿と勝利の福永騎手が無言で静かにヘルメットをはずして頭を下げ感謝の意を表する姿に限りない寂しさを覚えました。
 しかしマイナス面ばかりではありません。この春三歳クラシックは無敗の二冠馬(コントレイル、デアリングタクト)が牡牝で誕生しましたがこれは1952年のクリノハナ、スウヰイスー以来のことで、そしてコントレイルの勝利は無観客の好結果ではないかという人が多いのです。少し気難しいところがあり大歓声や騒音に苛立つ可能性が懸念されるコントレイルにとって無観客は幸いしたに違いありません。歓声と騒音のないことの影響は特に未勝利や下級条件の競走馬に好結果をもたらしたようで、通常開催で能力を殺がれていた馬が突然能力を発揮したことで大穴をあけ、4月25日には3場で単勝万馬券が5レース、3連単百万円馬券が4レースも出るという珍事を演出しました。調教師のなかにはこのまま無観客がつづけば、というひともいるかもしれませんね。
 
 そろそろ馬券について語りましょう。57年の馬券生活を経て遅ればせながら悟ったことは馬券が獲れるのは4、5回に1回もあれば上出来だということです。競馬場へ行った時なら1日に2レースも獲れることはめったになく、もっぱら場外(リモート馬券)を利用して月に4、5回しか馬券を買わない人なら月1回当たれば幸運ということです。ということはトータルで勝つことを願うなら「理由のある穴馬券」を狙うのが必勝法になります。かといってダービーのようにどうみてもコントレイルとサリオスで鉄板というレースは、獲って損でもいくらかは抑えておくことも必要でわずかでもマイナスを少なくすることで次のレースの資金を確保することが競馬を楽しむためには必要なことなのです。ダービーの馬連、皐月賞のコントレイルの単勝は今までなら手を出さない馬券です。
 
 長年競馬をやっておれば「自分流の馬券術」が身についているはずでその「自分流の馬券術に適したレース」をこれまでの勝ちレースを思い出して見い出すことが必勝法につながるということに気づきました。それを確定して年に何回かあるであろうそんなレースで確実に勝つことが競馬を愉しむ道につながるのではないかと思うのです。しかしどうしても勝てないレースもあるものでそんなレースは遊ぶ程度に控えることが負けを最小限に止める意味で大事なことになります。私はNHKマイルCとの相性が極めて悪くこれまで一度も馬券を的中させた記憶がありません。反対に天皇賞春は滅法強く今年も馬連5,770円とスティッフェリオの複勝830円はきっちりゲットしました。
 注意すべきは「勝馬検討法」と「馬券術」は異なるということです。GⅠレースの勝馬検討でこの春から重要視したのは「過去の全GⅠ~Ⅲ実績」と「近走8、9走のGⅠ~Ⅲレースの実績」でこの二つの要素でまずA~Cにランクづけします。GⅠレースは長年の積み重ねでステップが確定していますからGⅡ、GⅢのステップとしての評価を間違わないこと、GⅡはGⅢより評価が上ということ、GⅠの出走経験はそれだけでも大事だということがポイントです。勝馬候補が決まったら次は馬券にどう絞り込むかの段階に進むわけですが、当該GⅠレースの過去10年で関連性の高いステップレースでの成績を第一のフィルターとして「絞り込み」、さらに当該レースを得意としている騎手、種牡馬などを第二のフィルターとして最終決定します。
 今年春のGⅠレースが上首尾なのは固くても確実な単勝を獲ったこととランクの割に人気の低い馬の複勝馬券が意外に高配当を生んだことにあります。さらに上位ランクの馬連ボックスとAランク馬とBCにランクしたにもかかわらず低評価の馬(10番人気以下)の馬連――AB×XY方式とよんでいます――が2レース引っかかって高配当をゲットしたのも効いています。
 
 結論すると「自分流の馬券術」に合うレースの傾向を発見してそれに合致するレースで勝負する、他のレースは遊ぶレースとして投資を手控える。これが競馬を愉しむ近道だということを気づかせてくれた2020春GⅠロードでした。
 自分流で宝塚記念を大いに愉しみましょう。
 

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