2020年6月1日月曜日

滑稽な人たち

 5月26日の朝刊を見て笑ってしまいました、そして悲しくなりました。「コロナ緊急事態 全国解除」「経済 8月にも全面再開」とあるのですが、それはこちらの勝手であってあちら(コロナ)の事情は一切お構いなしではありませんか。今のところコロナ(新型コロナ感染症)のことはなにも分かっていません。「肺炎」なのか「血栓」が感染症の決定的(重症化)な症状なのかについて明解なこたえは出ていませんし、そもそも感染者の総数すらもいまだに確定されていません。感染者の数が「人口10万人当り0.5人以下」という解除の判断基準となっている感染率も、非常に少ないPCR検査の実行者の感染者が対象ですから検査数が増えれば感染者数がどれほど増えるか判断がつきません。検査数が少なすぎますから「無症状率」がどれほどかも把握されていませんから現在の感染者数が正しい数字かどうか判断できないまま今日まで来ています。
 一番確からしいのは、「昨年の死亡者数と今年の死亡者数」を比較して有意の差が認められればその数がコロナ感染症で亡くなった人数であると類推できることで、加えて「肺炎で亡くなった人の昨年と今年の比較」をすればより確かなコロナ感染死亡者数が確定できるのです。死亡者数の確定は毎年調査されているものですから確実に実行できるはずで速報値でいいから一日も早くこの数字を出すべきなのです。1~5月の数字なら6月末にも速報値は出せるはずで、この「もっとも確からしいデータ」に基づいてわが国での新型コロナ感染死亡者数が把握できない限り「コロナの実態」はだれにも判断できないはずです。にもかかわらず「全国解除」だの「経済 8月にも全面再開」などと国の偉い人たちが真面目な顔で「宣言をのたまう」から笑ってしまう以外に反応しようがないし、まったく無能なわが国の為政者の体たらくを知れば知るほど情けなくて悲しくなってしまうわけです。
 
 経済全面再開、と大見えをきっていますがそうなれば「人の移動」は必須で国外の移動に「非感染証明」はどの国も要求するに違いありません。今のわが国の体制でそれに応えられるでしょうか。1日の検査数2万件と安倍さんは公言していますがいまだに6千件とか8千件しかやれていません。経済全面再開ともなれば5万件前後の検査が必要になるでしょうがその体制があと2ヶ月で整うとは思えません。なにをもって「経済全面再開」などと号令できるのでしょうか。
 第2波第3波の流行が必至といわれていますがマスク、防護服、フェイスシールドなどの医療資源の調達は可能なのですか。検査機器と試薬は十分に確保できるのですか。ワクチンと治療薬の開発体制と予算は十分の備えがされているのでしょうか。
 なにひとつ「現状把握」も「備え」もできていないのにどうして国民に責任をもって「解除宣言」できるのか、おかしくてやがてかなしいという以外に言葉がないではありませんか。
 
 そもそも「ポストコロナの新しい生活様式」を声高に国民に圧しつけながらどうして「新橋」や「淀屋橋」の出勤の混雑はあんなに酷いままなのでしょうか。あのあたりは官公庁か大企業がほとんどのはずで彼らが率先垂範して「お手本」を示さなくてどうして一般庶民に従えと強制するのですか。新しい生活様式でテレワークやオンライン授業が推進されそうですがIT環境はそれに耐える体制になっているのでしょうか。相当な情報量が流通するようになりますが5G対応も含めてハードの整備は十分に整っているのでしょうか。企業活動が日常的にオンラインで行われるようになればハッキングの危険性はこれまでとは比較にならないほど高まりますがわが国の体制はそれに耐えられるほど高度化されているとは思えません。
 
 安倍総理は「わずか1ヶ月半で流行をほぼ収束させることができた」と誇りましたが彼はいったい何をやったのでしょうか。宣言下での出来事については「まだ検証する段階ではない」と語りましたが、検証なしにどうして次のステップに移れるのでしょうか。「医療と雇用は絶対に守ります」と公言してはばかりませんが補償には消極的で倒産、特に中小企業の倒産は年内相当数に上る可能性が高いはずです。統計上現れてくる倒産以外に自主廃業、清算が小企業で、特に地方で多いのではないかと危惧しています。
 職業政治家の二世やぬくぬくと育った私企業の二代目の多い現在の政治家には到底想像もできないでしょうが「起業」の大変さは並み大抵のことではありません。血の汗を流してようよう立ち上げた商売を、自分の不始末ではないのに――銀行や大企業には厚い補助があるのに――十分な補償のないままに倒産の憂き目にあう口惜しさは想像に難くありません。一旦つぶした会社をもう一度立ち上げるなどということは余程精神力と周りの応援がなければ絶対不可能で、そうでなくても地方の衰退が心配されていたところにこの仕打ちではますます地方が疲弊してしまうのは確実です。
 雇用は守りますと高言してはばからない安倍総理ですが、中小企業の倒産をなす術もなく見捨てておいてどうしてそれを保障することができるのでしょうか。そもそもわが国の企業総数に占める大企業の割合は0.3%にすぎません、ほとんどが中小企業で85%近くが小企業です。特に地方はその比率が高く中小企業をどう守るかがわが国の雇用維持の要諦といっても過言ではありません。日本の経営者はアメリカやヨーロッパの企業ほどドラスティックに「首切り」をしませんから3千万人とか4千万人という失業規模には達しませんが、昨今の非正規雇用の多い雇用情勢では表に出ない失業で社会が疲弊してしまわないか心配です。
 
 そもそもわが国の新型コロナ禍は『人災』なのではないでしょうか。WHO(世界保健機関)は今年1月初めには新型コロナ感染症を把握していましたから連絡はあったはずです。中国が海外への団体旅行を禁止したのは1月末でした。どうしてこのとき、中国からの渡航を全面禁止しなかったのでしょうか。五輪の延期決定は3月24日で緊急事態宣言が発令されたのは4月7日でした。
 中国からの渡航禁止を早期に実施できなかったのは4月に予定されていた習近平主席の来日を考量してのことでしょう。緊急事態宣言の発令を躊躇したのはコロナ禍を甘く見て五輪開催を優先したからということは容易に想像できます(この点では安倍さんも小池さんも同罪です)。
 もし1月末に中国との交流を断絶し緊急事態宣言を早期に発令していたら、今ほどの犠牲を出さずにコロナとの戦いを終息できた可能性が高かったと想像できます。
 どう考えてもわが国のコロナ禍は『人災』です。
 
 安倍総理は『責任』ということばを度々口にします。しかし言葉だけで「身を切る」責任の取り方を示したことを知りません。3月初めに学校の一斉休校はじまって急落した株価は3月19日16,358円で底を打つと僅か1週間で1万9千円台を回復、5月15日に2万円台に乗せた後順調に上昇基調を保って2万2千円台に届こうかという勢いです。経済が百年に一度の戦後最悪の状態を呈しているのに何故株価だけはこんなに高いのでしょうか。第2波がくるまでにこれまでの経過を検証しなければならないのに、専門家会議の議事録が作成されていなかったことが明らかになりました。
 言葉は空疎、数字はデタラメ、記録は不完全。これがあるべき国のかたちとはとても思えません。
 
 やっぱり「知識偏重」で「理想」を教えなかった『70年代教育』がまちがっていたのでしょうか。
 
 
 
 
 

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