2020年9月7日月曜日

後生畏るべし

 連日のニュースショウに登場する米大統領選挙のトランプ氏とバイデン氏の姿を見ていると、よその国の選挙をここまで長時間放送する国があるだろうかと呆れてしまいます。興味本位であることはいうまでもないでしょうがそれにしても取り上げ方が表面的すぎないでしょうか。報道機関であるなら一つの局でいいから、なぜアメリカという「若い」「自由主義」の国の大統領にトランプ74歳、バイデン77歳という「高齢」の候補者が選出されるシステムができたのかという「本質論」に切り込んでほしい。75年という長期の「平和の時代」があぶり出した資本主義の本質的な『矛盾』と、その結果としての格差の拡大と国民の分断という「アメリカの病巣」がトランプとバイデンにどう影響しているのか、そこが知りたいのです。アメリカばかりではありません、ロシアではまたまた反プーチン派の党首が毒殺される(?)という事体が出来していますし、香港では中国の「国家安全法」のもと林鄭月娥・行政長官が「香港は三権分立ではない」という驚くべき発言をしでかしているのです。
 米中ロという世界を三分する巨大国がそろいもそろって「民主主義」と「自由主義」という価値観を無視する勢力が権力を握っており、しかも彼ら三人が絶対的な暴力装置としての核兵器の『核のボタン』を握っているのですから、今ほど「危機的状況」はないということを私たちはもっと真剣に認識すべきではないでしょうか。
 
 しかしわが国も対岸の火事と座視していい状況とは言えません。安倍首相の突然の辞任をうけた自民党の体たらくはおよそ民主主義国の第一党の総裁選挙と思えない『談合』選挙となってしまったではありませんか。民意(党員の総意)を無視した「両院議員総会」での選挙となり、しかも地方党員の選挙結果を議員投票前に発表せず、議員選挙と同時に分明させるという姑息な方法さえとるという完全な党員無視を行うというのです。「自由民主党」という「自由」と「民主主義」を標榜する政党がその総裁を選出する選挙において「民主」を破棄して「偏向」を奉戴するというのですからこれからのわが国の政治状況を考えるとき暗澹とならざるを得ません。まあしかし、この状況を演出したのが二階俊博という81歳のご老人(幹事長)なのですから無理もありません。
 
 今度のコロナ禍で身に沁みてわかったことは『若さ』の素晴らしさでした。大阪の吉村知事、北海道の鈴木知事、むつ市の宮下市長などの颯爽とした思い切りのいい行政手腕は、前例にとらわれコロナ禍の対処法を自らの手で創出しなければならないという覚悟の片りんすら見られない国のトップや官僚上がりの高齢首長と比べて何と清新に感じたことでしょうか。しかし中には和歌山の仁坂さんのような熟練・敏腕知事もいらっしゃいますからひとからげにいうことはできませんが総じて若い人の方が秀れた対応を見せてくれました。そしてそれはわが国に限らず世界的な潮流であったように思います。
 ではなぜ若いひとの方が未曾有の事体に有効な対処ができたのでしょうか。官僚(役人)の使い方がうまかったからではないでしょうか、それも若い官僚を。中央は勿論のこと地方でも官僚には優秀な人が集まっているはずです。それをいかにうまく使いこなすかがトップに求められる最も重要な能力だと思います。ところがややもすれば「取り巻き」の「使い易い」人材を重用しがちなトップの多いのが現実なのではないでしょうか。吉村さんを見ていて、よくもこれだけ次から次へとアイデアが浮かぶものだと感心させられましたが、実はそれは吉村さん個人のアイデアではなく役所の各担当の役人の、それも若い役人のアイデアだったのではないでしょうか。そうでなければあれだけわれわれの思いつかない施策は打ち出せないと思います。
 ではなぜ吉村さんは――鈴木さんも宮下さんも――官僚組織を柔軟に活用できたのでしょうか。役所というのは年功序列の厳とした権力構造に出来上がっています。そこへ若い――宮下さんに至っては35歳で政界入りしたのですから、まずこの権力構造を突き崩して風通し良くしなければなりません。力づくで上から抑えつけてもうまくいくはずはありません。「懐柔」といってはそぐはないようにも思いますが、とにかく年長者を上手に「手なずけ」なければ組織は動きません。役所に入って最初の、そしてもっとも苦労するのが各組織のトップ連中との円滑なコミュニケーションの確立であったに違いありません。例にあげた三人に共通して感じるのはそうしたコミュニケーション力です、相当苦労しただろうけれども上手に年長者との関係性を築いて組織を手中に収めた「したたかさ」です。柔らかだけれども毅然とした厳しさもある、そんな印象でした。そうした準備があって、風通しの良い組織に役所を「進化」させた。その結果役所のいたるところからアイデアが上げられてきたのではないでしょうか。
 若い人たちの活躍を見ていてそんな感懐を抱きました。
 
 コロナ禍はまだまだ終息しないでしょう。そのあとにも、景気浮揚、デフレ脱却、高齢化・人口減・成長力の鈍化、難問山積の外交問題とこれまでの延長線上にはない問題の解決が待っています。若い力がどうしても必要です。劣化したわが国の官僚組織、政治組織、企業組織を若い力で「革新」しなければこの難局は乗り切れません。
 
 その第一歩が政権党・自由民主党の総裁選挙なのだという認識が自民党員の皆さんにはあるのでしょうか。かといって、地方で人気の石破さんをヒイキにしているわけではありません。自民党員の皆さんもそうでないみなさんも、石破さんが「核兵器容認論者」だということを知って応援していますか?
 
 後生(こうせい)(おそ)るべし、ということわざがあります。年寄りは若い人を馬鹿にしがちですが、若いということはそれだけ可能性を秘めているのだから努力次第で将来どれほどの人物に成長するかわからない、若いからといって見くびってはいけませんよ、という戒めです。
 この国はこのあたりで若い人と女性の能力をしっかりと活かす体制に変革する必要があるのではないでしょうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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