2020年11月30日月曜日

コロナ、ここが分からない

  コロナの第3波が予想以上の拡大をみせて国も地方行政も市民も困惑気味で落ち着きがありません。総理が3密を避けて「静かなマスク会食」を要請するなど見当ちがいの発言をして批判を浴びていますが、そんなことは官房長官か専門委員に任せておけばいいことで、重症者の急増に備えて病床と医療体制の確保――エクモやICU(集中治療室)の拡充、医療用マスクと防護服やPCR検査体制の充足などを実行するとともに医療施設への経済的支援、医療従事者への給付金の増大などマクロな施策について国民に安心を与えることが総理の仕事であって、いまだにPCR検査が円滑に実施できないとか医療用マスクと防護服が不足しているとか不安が払拭されていないのにGoToキャンペーンだけが独り歩きするなどチグハグな政権運営は、「国民の生命の安全」が最優先といっていた就任時の演説が空疎に聞こえてきます。

 

 最近気がついたのですが政府や専門家とわれわれ国民、というか素人の間がシックリいっていないのは、専門家なら当たり前すぎて説明するまでもないとされていることと、素人は今さらこんなことを聞くのが恥ずかしいと知らないままにしている、「コロナウィルスの基礎知識」が共有されていないことが原因となって、政府や行政の打ち出す施策が国民の心底からの納得を得られないままに「上滑り」しているのではないでしょうか。そこで恥をしのんで「コロナ、ここが分からない」という疑問を整理することにしました。

 

 まずここまでで分かっている「コロナの性質」を整理してみましょう。

 (1)感染は「飛沫」と「接触」が原因とされている。飛沫はしゃべっても食事をしても飛ぶ。

 (2)ウィルスの生存時間は大体2~3時間。ただし鏡面仕上げのステンレスやツルツルした合板などは7時間近く生きていることもある(最大3日間生存するというデータもある)。

 (3)同じ状況がつづけばウィルスの飛沫量は増加する(→付着したウィルス量が多いほど感染率が上がる

 (4)PCR検査の陽性率は5~7%とされている。

 (5)コロナの実効再生産数は2.0近くになっている

 残念なことに今分かっていることはこの程度です(一般市民に伝えられている範囲では)。そして何が分からないかというとコロナウィルスの「感染メカニズム」と「発症メカニズム」です。

 

  陽性率がここまで高まればちょっとした人の集まりがあれば(少なくとも10人を超えれば)その中にウィルスを持っている人(感染者だろうと発症者だろうと)が必ずいると考えるべきでしょう。それを前提とすれば公共交通機関を利用して人混みのなかを歩いてきた人のほとんどにはウィルスが付着していると考えるべきです。

 そのうえでまず「感染のメカニズム」について。飛沫が口や目、鼻の粘膜に付着します(接触した手で口や鼻を触った場合にも粘膜に付着する)。この状態ですでに「感染」しているのでしょうか。それとも粘膜を浸透して体内に取り込まれたら感染なのでしょうか。粘膜を浸透すればすぐにウィルスは再生産を開始するのでしょうか。再生産をしてはじめて「感染」というのでしょうか。粘膜に浸透したウィルスはすべて再生産するのでしょうか。このへんのことすら素人はまったく理解していません。さらに床に落ちたウィルスも靴に付着して生存するのか、土足で家に上がればそのウィルスが屋内で生存するのか、ぺットにも付着して人に移ることも考えられるのか。あれやこれや疑問があるのですが誰も教えてくれません。ですから「発症」になるとそのメカニズムは「無知」というレベルです。無症状や軽症と中高等症はどうして異なってくるかなどチンプンカンプンです。

 

 マスクの有効性は飛沫の口や鼻の粘膜への直接の付着を防護するから当然のことと思うのですがどうして海外の人たちはそれを理解できないのか不思議です。もちろん飛沫の飛散も防ぎますから二方向で有効になります。人数が増えるのに比例して飛沫量は増えますから多人数の「密集」が悪影響なのも理解できます。距離の近い「密着」も避けるべきです。換気の悪い環境ではウィルスが堆積しますから「密封」は付着、吸引を増大させる結果に繋がりますから「3密」は絶対に避けるべきだということに納得がいきます。

 多人数の会食、とりわけ飲酒を伴う夜の接待が感染に重大な影響があるだろうということも想像できます。話すだけでもウィルスは飛散しますがそれに食事が重なれば飛散量はその分増大します。飲酒して酔いが回れば声も大きくなりますし笑ったり肩を抱くことにもなります。アクリル防御板の有効性が明らかになると同時に「マスクと静かな会食」も感染だけを考えれば役立つことは分かりますが面白みがありません。換気が十分でないと長時間の飲酒を伴う会食はウィルスの堆積量が増加する意味で吸引、付着につながりますから避ける方が賢明でしょう。

 3密を避けマスクを常用し、少人数で静かな会食を2時間程度で楽しむくらいがコロナ禍の会食の原則になるのは止むを得ないと納得できます。しかし個室で換気が良好で座席の配置に工夫を凝らした、そんな投資を行っている事業者まで「時短」や「営業自粛」を求めるのは過酷過ぎるのではないでしょうか。コロナ禍の生き残りを懸命に考えて工夫し投資している努力を個別に「選別」する、そんなキメの細かい行政の対応が望まれます。

 一方で二人暮らしの老夫婦に「換気」は必要でしょうか。夫は毎早朝散歩などのトレーニングで家の外に出ますが他人との接触はほとんどなく、たまにすれ違うことがあっても黙礼するだけで言葉を交わすこともありません。妻は二日に一回近くのスーパーに買い物に出かけますが短時間で済ませてうがい、手洗いを励行しています。こんな夫婦が三時間も経過した後に換気する必要はあるのでしょうか、勿論空気の汚れを浄化するための通常の換気は必要ですが。これから寒くなってくるのにうるさく「換気」を奨励されていますが疑問に感じます。

 

 外出して人混みから帰ってくれば一応ウィルスが付着していると考えるのが正しい判断でしょう。ですからマスクを常用して手洗いとうがいを励行するのは当然の「習慣」になります。そのウィルスが粘膜を浸透して体内にどのようにして浸潤するのでしょうか。そうした人たちがどのようにして感染して発症するのか、そのメカニズムが分かりません。家庭内感染が増加しているのはそのへんが分かっていないからだと思います。そうしたメカニズムをぜひ分かり易く教えてほしいのです。そうすれば市民が納得して感染防止に積極的に取り組むでしょうし感染を押さえられると思うのです。

 

 それにしても僅か500人足らずの重症患者で医療崩壊の恐れがあるというわが国の感染症体制、これで先進国といえるのでしょうか?何とも頼りない、情けない国に成り下がったものです。

 

 

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