2020年12月7日月曜日

コロナで誰が儲けているのか

  ダイヤモンド・プリンセス号で新型コロナウィルス感染症が発症して横浜港に寄港したのが2月初旬でしたからあれからもう10ケ月が過ぎたことになります。この間緊急事態宣言は出されましたが基本が「要請」ベースでしたから『同調圧力』は生半可なものではありませんでした。「マスク警察」という不愉快なことばができるほど、マスク、3密、大人数の飲み会禁止など、「息苦しい」毎日を過ごしてきました。

 こうした時期には不安定な「変化」より「現状維持」が「同調圧力」となって強力に支配します。そのひとつの表れが突然の安倍首相辞任に伴う自民党総裁選挙でした。事前の予想をはるかに超えた「菅総裁」へのなだれを打った決着は、「安倍政治の継承」という「安定」の訴えが自民党議員や党員だけでなく国民にも広く受け入れられ7割を超える高支持率を得る結果となりました。しかしその過程は紛れもない「不正選挙」で岸田、石破、菅の三者鼎立のはずが派閥領袖のあからさまな「談合」によって菅一強の「大政翼賛」が行われたのです。こうした「騒擾」時のわが国民の行動パターンは、もし戦前のような国際緊張が現出されるようなことがあれば、また同じ「愚挙」を繰り返すのではないかという「危惧」を強く抱かせます。

 「半沢直樹」「鬼滅の刃」ブームは文化面に表れた「同調圧力」からの『解放』欲求だったのではないでしょうか。「半沢」に関していえば前回放映時には「銀行の横暴」に現実味がありました。晴れているときには不要な傘をすすめるくせに、実際に傘が必要な雨降りには傘を奪い去る、そんな「あこぎ」な稼ぎで稼ぎまくっていた、そんな時代は「ゼロ金利政策」によってもろくも消え去り、利益の源泉であった「利子収入」は消滅して手数料収入や金融商品の販売でかろうじて企業維持するしか道のない銀行に成り果てた今、「半沢直樹」の「正当銀行マン」としての「勧善懲悪」はリアリティのない「電子紙芝居」でしかなかったはずなのです。にもかかわらず前回同様、いやそれ以上の視聴率を上げたのはコロナの閉塞感からの解放願望に結びついたからに他なりません。

 「鬼滅の刃」はコロナの呪縛と世間に横溢する「不寛容」からの解放という希求に合致したことによる異常人気だったのではないでしょうか。マンガ第一世代の私は六十代にマンガ離れしましたから「鬼滅の刃」を論じる立場にありません。白土三平(「カムイ伝」)、あしたのジョー、島耕作、じゃりン子チエ、まんだら屋の良太、ゴルゴ13などを「おとな」の白い眼を向こうに「日本のサブカルチャー」の位置にマンガを定着させた、おとなのコミック誌「ビッグコミック」創刊に立ち会った世代としては「鬼滅の刃」のこれほどの異常人気には少なからず「おそれ」を抱くのですが、それだけコロナの「同調圧力」が強力なのでしょう。

 

 コロナ禍で最も異常なのは「株価」です。新型コロナ感染症が世界的な脅威となって経済活動に打撃を与えだして以後、わずか1ケ月半で2万3千円台(1月31日23205円)から1万6千552円にまで急落しました(3月19日)。しかし何の好材料もないのに株価はじりじりと反転し1ケ月半で2万円台を回復(4月30日20193円)、8月末には2万3千円(231.9円)、11月初旬には2万4千円台へ(11月5日24105円)、ワクチン開発が実現性を帯びると一挙に高騰、12月1日には遂に2万6千787円というバブル後最高値をつけるに至りました。

 この高値の原因については世界的な金融緩和による「お金のだぶつき」をあげる人が多いようです。もし株価が市場の状態を映す「鏡」の存在だとしたらコロナ不況でGDPが壊滅的な状態にある現在、株価は上がるはずがありません。それがアメリカも日本も同時株高になっているのですから何らかの「株価操作」が疑われても仕方ありません。アメリカについて言えばトランプ大統領の人気維持のためにFRBに圧力をかけて恣意的操作を行っているのではないかという考えが有力です。日本でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による大量の株式購入は以前から指摘されていますがここにきて日銀がその存在感を増しているようです。コロナ感染拡大に伴う追加の金融緩和で国債やETF(上場投資信託)の買い入れを増やした結果、日銀の9月末総資産は690兆円と過去最高を更新しました。この結果45兆円の株式を保有する日本最大の株主となり、アドバンテスト、ファーストリテイリング、TDK、日産化学、ファミリーマートなどの筆頭株主(又は大株主)になっています。日銀は私企業の経営には口出しできませんから「物言わぬ安定株主」になり経営者にとって都合のいい存在になって企業経営に悪影響が出ることも予想されます。

 こうした「株高」と「株式保有率向上」はこんな見方もできます。長らくマイナス金利がつづいてきた長期国債先物の金利がここにきて0.02%近辺にアップしています。これだけで借金漬けのわが国財政にとっては影響大ですがコロナ不況で税収の落ち込みも大きいようで20年度見込みが63兆円から50兆円前半まで減少する可能性も出ています。こうした状況下では株高を演出することでこのマイナスを帳消しにしたいという誘惑が起こっても当然です。政府・日銀にはひょっとしたらそういう思惑があるのではないかと疑う市場関係者も少なくないのです。

 

 ただここで考えてみる必要があるのは、そもそも金融緩和は安倍政権肝いりの中心政策で、デフレ脱却、成長喚起による国民の所得アップ、東北大震災など震災からの復興のためだったはずです。しかし7年9ケ月に及ぶ最長在任期間を経たにもかかわらずデフレ脱却も経済成長も実現できず国民の給料もほとんど上がっていません。逆に非正規雇用が4割近くになって生活の不安定度が増しています。中小企業の存立基盤は危うさを増しており、震災復興も道半ばです。ということは金融緩和のお金は、必要とされているところへは届かず、大企業(内部留保の拡大)、政府(年度当初予算100兆円超えが2019年から3年もつづいている)、株式市場に流れているのです。結局大企業と富裕層が潤っているのが金融緩和の実態なのです。

 

 さらに問題なのは12月1日、菅総理が国土強靭化5ケ年計画を「5年で30兆円」という指示を出したことです。どさくさ紛れ、という感が避けられない突然の政策提示ですが、ここから透けてくるのは菅政治の本質が「ソフト志向」ではなく相変わらずの「土建屋政治」だということです。携帯料金値下げ政策も家計に占める携帯料金が大きいために従来型商品への消費が低迷していることを救済しようという思惑からのものであることは明らかです。軍事予算が2021年も5兆円を超えますから6年連続になります。

 

 コロナ禍の今、求められるのは「感染症対策の充実」「立ち遅れているデジタル社会の実現」「脱炭素社会とクリーンエネルギー社会の世界標準達成」など、古い既得権社会からの脱却と社会経済のソフト化です。菅政治はまったく正反対の方向を向いています。

 わが国の政治状況は今、きわめて危ういということを強く認識する必要があります。

 

 

 

 

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